2月上旬のある日。
	最近、女友達というか何というかができたゼロが、その子に、どう考えても友チョコだろうが、それでも
	「みなさんの分作りますから、楽しみにしていてくださいね」
	と言われたことを、どうでもよさそうな振りを装いつつ話すと、父であるセブンおよびその兄弟達―次男と
	末っ子不在―は、ゼロに「良かったな」などと生温かい目を向けてから、微妙な表情で顔を見合わせた。

	「そっか、もうそういう季節かぁ。……今年は誰に回って来ると思う?」
	「俺らは概ね1周しているから、何も知らないティガ達辺りに、『お裾分け』とか称して渡っても
	 おかしくは無いな」
	「……確かに。それなら、ゼロたちの可能性もありそうですが」
	「だなぁ。でなきゃ、クッキーとか小さいので、隊の食堂に『ご自由にどうぞ』みたいに置いとく。
	 なんてのが、そろそろ有り得そうな気がする」
	「あー、うん。ありそう。あとは、ゼロやレイのおやつにしちゃうとかね」
	「……何の話だよ」


	いきなり若干深刻そうに相談されだし、蚊帳の外なゼロが怪訝そうに問い掛けると、まずゾフィーから

	「毎年毎年、マンは『着てはもらえぬセーターを、寒さ堪えて編んでます』みたいなノリで、渡すことの
	 出来ないチョコを作るんだ」

	との、よく解らない例え付きの答えが返って来た。次いで、

	「相手の住所も、今どんな風に暮らしているかも、全部知っているくせに、渡しに行くことはおろか、
	 送ることも躊躇って、結局そのチョコは、俺らの誰かにくれるんだ」

	そう付け加えたのはセブンで、

	「最初の頃は、自分1人で処理していたんだけど、流石にそれは見ていられなくなって、『要らないなら
	 ちょうだい!』と、タロウかエースがねだったのがきっかけだっけ?」
	「いや。俺らじゃなくてメビウス」
	「そうそう。何にも知らないメビウスが、隠そうとしていたケーキを見つけて、純粋に『美味しそう』って
	 目を輝かせたらくれたのを、僕らもおすそわけで貰って食べたのが、最初の筈だよ」

	ジャック、エース、タロウが補足を加えた。



	そして数日後の深夜。ふと目が覚めて、台所に水を飲みに行こうとしたら、ひっそりとチョコを作っている
	マンを目撃してしまったゼロは、音を立てずにそっと自室に戻り、翌朝マン達の目を盗みこっそり探して
	みた所、食器棚の奥の方に隠すように仕舞われていた箱には、

	”to Hayata”

	とのカードが添えられていたが、バレンタインデー当日に、ジャックの読み通り
	「みんなで食べると良いよ」
	と渡された―同じものだと思われる―箱には、何も添えられていなかったという。




日記もどきの小ネタログ (光の国のVDネタで、まっさきに思い付いたのがコレって、どうなんでしょうね) ちなみに、かなり重い愛だけど、多分恋愛感情では無いです。 けど、色んな意味で、マジでごめんなさいマン兄さん