3月末のある日のこと。セブンとマンが帰宅すると、居間で預かりっ子のレイが、見たことのないオモチャで
遊んでいました。
「……。ゼロ、アレは?」
「昼間にレイ宛で届いた」
春休みなので家に居て、レイの子守を任されていたゼロ曰く、昼食の後レイが昼寝をする直前に、レイの
もう片方の養家である、運送屋ペンドラゴンの次男坊のオキが届けに来たので、怪しいものではないと
判断してそのまま与えたのだそうです。
「そうか。しかし、誰があんな物を……」
珍しく、目をキラキラ輝かせ楽しそうに遊んでいるレイは、とても貴重映像でものすごーく可愛かったのですが、
問題はそのオモチャが、マンのトラウマでもある某黒い怪獣の、一番新しいバージョンの幼体と成体のセットで、
「背中の割けた幼体からクリアタイプの成体が出てくるアノシーンを再現☆」な代物なことでした。
そのため、冷や汗ダラダラで、目は泳ぎ、今にも逃げ出したいけど、オモチャに夢中で心底嬉しそうなレイに
不審に思われたり傷付けるわけにはいかないし……。と葛藤しまくりのマンに、
「……とりあえず、夕飯の買い物に行ってきたらどうだ?」
と助け船を出してその場から遠ざけたセブンは、ゼロにレイを居間以外の所で遊ばせるように命じると、
オモチャの贈り主探しを始めることにしました。
しかし、弟達─と長兄とついでにその友人達も─は口々に
「マン兄さんのトラウマはよーっく解ってるんですから、レイが喜びそうだと思っても、メビウスですらそんな
チョイスしませんって」
「コイツにはそんな金は無いしな」
「うん。人形1体位なら買えると思いますけど、そんなに立派なやつは無理です」
「あと、中身何にしろ、郵送じゃなくて手渡しするし」
「そもそも、兄さん達に何の相談も無しに物を買い与えるのなんて、父かゾフィー兄さん位しかいませんよね」
「ねぇ、だから何でいちいち私に嫌味言うの? 私にとっても、ゼットンは結構なトラウマなんだけど」
「事実だからじゃねぇのか」
等々、あり得ないと言い切られ、その言い分全てが納得のいくものでした。
てことは誰だ? と次の候補を思い浮かべようとした所で、一応郵送だったいうことは伝票がついていた筈だと
気付いたセブンが、ゼロが破いて棄てた包み紙を探して確認すると、宛名は
”ウルトラセブン方 レイモン 様”
で、そこから連想される通りに送り主の欄には
”怪獣墓場 ケイト”
と書かれていました。が、この話は一応家族モノ設定の方なので、怪獣墓場はありませんし、レイの姉のケイトは
ヤクザのお嬢なので迫力はありますが、幽霊として弟の側にいる小学生の女の子でしかないので、誰か生身の
協力者がいないと不可能です。
ということで、ひとまず配達しに来たオキに電話で訊いてみると
「ああ、それはですね。僕が、夢枕に立ったケイトちゃんに頼まれて買ったんです」
それはもうあっさりと、予想の範疇と言えなくもない答えが返って来ました。しかも、電話の向こうなので
見えませんが、声の調子からするとだいぶドヤ顔で。
「……ところで、何でいきなりレイにプレゼント買ってくれたのか訊いても構わないか?」
あまりにも当然のように返され、脱力しきったセブンが更に訊ねると、オキはまたもあっさり
「何でって、明日がレイの誕生日だから、そのプレゼントです。……あ。そうだ。ケーキまだ用意して無かったら、
焼こうかなってお姉ちゃんが言ってるんですけど」
との答えが返って来ましたが、綺麗さっぱり忘れていたというか、聞いた覚えが無い気がしたセブンは、
ありがたくハルナの申し出を受け、電話を切った後、大急ぎでマンを始めとする兄弟やゼロ他数人に
経緯を伝え、翌日どうにか無事にレイの5歳のお誕生日会を開くことが出来ましたとさ。
先日存在を知ったフィギュアに
「コレ絶対ケイト姉さん喜ぶよね」
「てか、ケイト姉さんからレイちゃんへ。とかどうすかね」
的な会話が柳佳姉さんと交わされ、お題と合うし、レイちゃんな人の誕生日が3/27なのでまだ間に合う!
といった所から出来ました。
家族モノ仕様なのは、特に意味は無いけど、その方が嬉々と遊ぶレイちゃんが可愛いかな、と
2012.4.21
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