「あ、そうだ。ティガ、コレ土産」
ゼロとコスモスとの共同戦線を終え、珍しくあまり迷うことなく光の国に帰還したダイナが、
平成組の執務室の自席で今回の件に関する報告書を書いている最中。ふと思い出したように、
ポンとティガに手渡したのは、
「は? 何コレ」
「ICレコーダー」
「それは、見れば解るよ。そうじゃなくて、コレが、どう、何のお土産なのかを訊いているんだ」
どこからどう見ても、何ら珍しくない手の平サイズの録音機器を手渡されたティガが、怪訝そうな
顔を見せると、ダイナはニッと笑い
「タイガから、元GUTSの人の話訊いてきたんだ」
と答えた。
「え」
「ほら、アイツ俺の後輩ってことは、ティガっていうかダイゴさんの後輩でもあるじゃんか。
だから、全部終わって帰る前にちょっと話する時間あったんで、スーパーGUTSのみんなが
今どうしてんのか訊くついでに、GUTSの人に関しても、何か知らないか訊いてみたんだ」
「……流れとしては解らなくないけど、何でわざわざ」
「何でって、前にティガ、『ダイゴ達、今はどうしてるのかな』って呟いてただろ?」
「確かに、その手のことを呟いた覚えはあるけど、あんなどうでも良い一言を覚えていたの?」
ティガが―マン程ではないが―、地球での半身及びその仲間達に対する思い入れが強いのも、
会えないのでは無くて会わないと決めているらしいが、実は時々想いを馳せているのも、
仲間内にはよく知られていたし、
「迷子の最中に有益な情報掴むこともありそうだけど、記憶力に期待はできないから、コレで
録ってくれば使えるんじゃない」
そういって、ガイアから面白半分に超大容量のICレコーダーをダイナが持たされていたのも
事実ではあるが、まさかこんな使い方をしてくるとは……と、ティガは喜びよりも呆れが勝った
反応を示しはしたが、悪い気はしないというか、やっぱり嬉しかったのは事実なので、
「まぁいいから聞いてみろって」
と促すダイナに、「期待はしてないけど」と返しながらも、心持ちそわそわと再生を始めた。
そして、冒頭のしばらくはスーパーGUTSの話題だったが、
「そういやさ、お前はスーパーGUTSの前の、GUTSって知ってるか?」
と話題が変換された所で、明らかに目の色が変わった。
「GUTSっすかぁ。何かぁ、学科ん時に聞いた気がしなくもないっすけど、アスカさんも
その当時は中坊位っすよねぇ。何でそんな昔の人のことが気になるんすかぁ」
「……俺らの先輩の半身が、GUTSの人なんだよ。だから、土産話になるかと思ったんだ」
「アスカさんの更に先輩……あー、もしかして『ウルトラマンティガ』っすか」
「そうそう。知ってるか?」
「父さんとか、近所のおっちゃんとかが昔話してるのは聞いたことあるっスけど、名前くらいしか
覚えてないっすね。そのティガって奴にも、人間態いたんすか。俺、それは聞いたことないっすよ」
「まぁ、他のウルトラマンの人達も、身内には多少バレてた人もいるらしいけど、アスカ程大々的に
バレてる人は、そうそういないからな」
間延びしたタイガの口調と受け答えに、流石のアスカも苦笑交じりで、こんな調子で何が聞けるのか。
とティガは早々に期待を捨てたが、根気強く一人一人名前を挙げて訊ねて行くと……
「ヤズミ博士は知ってますよぉ。ネオマキシマ砲の人っしょ」
「ホリイ……あー、確か、ナカジマ主任の尊敬してる人が、そんな名前だって言ってたような」
「シンジョウさんは、婦長のお兄さんで、隊長の憧れの人だって聞いたことあるっすね」
「イルマさんすかぁ。何か聞いたことが……あ! 総本部のちょー偉い人じゃね。やっべ、隊長に
聞かれたら殴られてたかも」
「ムナカタさんは、イルマ最高総議長の副官っすよね」
等々、TPC所属の面々に関しては、未だに活躍していることが、断片的に解った。
しかし、肝心のダイゴについては
「えーっと、マドカ ダイゴさんとレナさんっすか? 多分、聞いたこと無いっすね」
という、あっけらかんとしているのがよりムカつく答えが返ってきたが、
「あ、でも、『マドカ』って苗字は何か聞き覚えが……」
との呟きの後に、しばし記憶を辿る間を置いて、パチリと指を鳴らす音に続き
「科学班の天才少女と、訓練校の期待の星の姉弟!」
と挙げられた声に、
「もしかしてその姉弟って……」
というアスカの問いと、
「ヒカリと、ツバサ?」
というティガの呟きが重なった。
「そうっすそうっす。マドカ ヒカリとマドカ ツバサ。そういや、親が何か元隊員のすごい人とか
いう噂もあったすねぇ」
その答えだけで、ティガは充分胸がいっぱいになりそうだった。けれど、更にその先に
「確か、お姉ちゃんの方は、火星生まれのスターチャイルド第一号で、遺伝子工学の天才児らしくって、
『人は皆光になれる因子を持ってる』みたいな持論を持ってるとかいう話で、自分の名前にかけてるの
かと思ってたんスけど、アレって、つまりお父さんがウルトラマンだった。ってことなんすね」
と続き、オマケに
「へぇ〜。元隊員で、火星の花の研究してる人ってだけじゃなくて、そんなすごい人だったんすねぇ」
とまで呟いたので、またもアスカの声とティガから同時に
「ダイゴは知らなかったんじゃなかったのか」
とのツッコミが入ったが、
「名前は知らなかったっすけど、火星の花は地球でも売ってますしぃ」
という、予想外の朗報が返って来た。
「うそ。マジで!?」
「マジっすよ。ちょーたっかいし、特殊な容器から出すとしおれたり枯れたりするみたいっすけど、
火星原産の花は、地球の花屋でも何年か前から売ってるっすよ」
そんな、タイガ的には当たり前の証言も、ティガにとっては何よりも得たかった情報かもしれなかった。
「そうか。アレから、15年も経っているんだものね。ダイゴ達は、夢を叶えられたんだ」
ダイナ的にも、まさかここまでの話が聞けるとは思っていなかったが、結果的にこの上ない土産になり、
予想通り感激するティガの様子に満足だった。
しかし、再生の途中で科技局の手伝いを終え戻ってきていたガイアが、笑いなどを堪えながらその様子を
撮影していたり、ティガが喜んでくれたことをタイガの中で一緒に証言を聞いていたゼロに報告したら、
得も言われぬ顔をされたり、ガイアから話を聞き録画映像も見たユリアン達や、ゼロからセブンやマンを
経由して話を聞いたゾフィーやタロウから、散々いじられる羽目になり、キレたティガに当たられた為、
プラマイ0な感じだったという。
捏造満載で超俺得なお題6「あんな一言を覚えてたのか」でした☆
DAIGOの口調を書くのが結構楽しかったです(笑)
2012.5.20
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