ある日、セブンから資料を取ってくるように頼まれたゼロが、本と書類らしきものや研究の資料や
結果っぽい紙類と実験器具と私物その他諸々でぐっちゃぐちゃなセブンの私室を「どこってぇか
どれってぇかやっぱどこだよ」などとぼやきながら漁っていると、私物と資料が入り交じっている
棚の奥の方に、大切そうに仕舞い込まれているファイルを見付けた。そのファイルを、好奇心から
開いてみると、中にはレイのお絵描きや工作が綺麗にファイリングされていたが、後ろの方に妙に
古い紙が入っていたので、タロウ達が小さい頃のものも一緒に仕舞ってあるのかと見てみると……

「なっ」

今のレイと同じ位か少し幼い子供が描いたと思われるセブンの似顔絵と、添えられていた手紙に、
ゼロは言葉を失った。

「おい、ゼロ。あったか?」
「親父! 何でコレが親父のとこにあんだよ!?」

元々ゼロは資料を取ってるように言われていたわけで、見つかったかと様子を見に来たセブンに、
ゼロは真っ赤になりながら絵と手紙を突き付け問い詰めた。

「コレ、俺が今のレイ位の時に描いたやつだろ。何で親父が持ってんだよ!?」

幼い頃に描いた、憧れのヒーローの似顔絵と、四つ折りにされた紙一杯に拙い字で
「おおきくなったら、うるとらせぶんみたいになりたいです ぜろ」
と書かれた手紙。
それらを書いた当時は、もちろんセブンが父親な事など知る由もなく、ただ純粋に憧れていた。
そのこと自体は、幼児期のことだし、今でも一応尊敬はしているのでまぁ良い。問題は、当時の
自分は、親の顔どころか親がいて当然という感覚すら知らない施設育ちの子供だったのだから、
描いた絵も工作も、全て施設に残っている筈じゃないのか。そう問うと、セブンは当然のように

「お前からの物に限らず、俺ら宛ての似顔絵や手紙や贈り物なんかは、全て施設や小学校から
 送ってもらって保管してあるからだ」

との返事が返って来て、更に

「個人宛ては本人が持っているが、『ウルトラ兄弟のみなさんへ』だとか集合絵は、大抵マンか
 ゾフィーか、年代によっては父が持っているのもあるな」

と付け加えられた。曰く、兄弟もしくは警備隊宛ての物は、集合絵は一番大きく書かれている兄弟が。
それ以外は隊長のゾフィー(もしくは父)が代表して貰い受け、保管しているのだという。
それ故、ゼロが幼少期に描いた絵や手紙の中には、マンやゾフィーの手元に渡ったものもいくつかあるが、
自分の息子であることを明かして居なかった為、譲り受けることは出来なかったらしい。

その証拠として、数日後マンに試しに訊いてみると、「ああ、あるよ」と言って古いファイルを引っ張り
出して見せてくれた。
その全てが、まるでレイやボーイが描くような、楽しげで憧れや尊敬に満ちていたものなのが、少し
気恥ずかしいながらも、「ガキの頃はこんな素直で可愛げがあったんだよな、俺」と懐かしく感じは
したが、タロウやエースや、ましてやガイアやグレンなんかにからかわれるのは真っ平御免なので、
絶対に見られないように仕舞いこんで、話題にもあげんなよ。と釘を刺したゼロに、若手はともかく
弟達は知っているし持ってるんだけどな。と思いつつも「解った」と約束してやったセブンやマンの
目には、そんな態度も含め、まだまだ当時と変わらない可愛い子供部分が残っているように見えて
いたとかいないとか……。




いっそこんなのも可愛いかと思いまして 2012.5.6