それは、ベリアルの襲撃を退け、ゼロがセブンの息子だと知らされた少し後のこと。
宇宙警備隊の代表番号に、ゼロ宛ての電話が掛かって来た。

内線でセブンの執務室に回された、その電話の相手は……


「久しぶり、ゼロ。ボイスだよ」
「ボイス? どうしたんだ。わざわざ、警備隊本部まで掛けて来るなんて」

電話越しの柔らかな声は、ゼロと同じ施設で育った、幼馴染のボイスのものだった。

「いや、大した用件じゃないんだけど、警備隊以外で、どこに掛けたら君に通じるか解らなかったから」
「ああ。そうか。で、何の用なんだ?」
「本当に、大した用じゃないんだけどね。……おめでとう。お父さん解って良かったね。しかも、
 憧れのウルトラセブンさんで、一緒に暮らせることにもなった。って聞いたよ」
「お、おう。あんがとなボイス。お前も先生になれたらしいな。おめでとう」
「うん。ありがとう、ゼロ」

成長し、ゼロは警備隊を目指して訓練校に入り、ボイスは音楽教師を目指して進学したことで、
お互い疎遠になってはいたが、他の知人友人伝手に近況はそれとなく聞いており、ゼロの朗報を
聞きつけて連絡をくれた元施設仲間も数人居た。

「それでね。直接お祝いを言いたかった。っていうのもあるんだけど、僕の所に、小さい頃の君の写真が
 残っているから、焼き増しして送ろうかと思ったんだけど、宛先は警備隊気付で平気かな?」
「ああ……いや、良い。送んなくて」
「え」

ボイスの申し出に、一瞬頷きかけてからすぐさまそれを断ったゼロは、電話越しに息を呑んでショックを
受けたボイスが「うん。そう、解った……」と返すよりも早く

「俺が、直接お前の所に取りに行くから、送らなくて良い」

と、幼馴染の悪い想像を否定した。

「え。君が、僕の所に?」
「ああ。別に、お前が俺んとこに届けに来てくれんでも良いけど」
「警備隊に? いや、それは気後れするし、君が現れたら生徒達も喜ぶだろうから、
 教室の方に取りに来てもらっても構わないかな」
「解った。いつが良いとかあるか?」
「事前に連絡さえくれれば、君の都合に合わせてくれて平気だよ。君の方が忙しいだろ?」
「そうでもねぇよ。……まぁ、新人として、親父、とかにしごかれてっけど」
「そっか。じゃあ、楽しみにしてるね」

幼馴染だけあって、ゼロの素直でない所をよく解っているボイスは、クスクスと笑いながら、
再度「良かったね」と付け加え、会話を終わらせた。そして、セブンを「親父」と呼ぶことを
まだ少し躊躇っていることや、そう呼べる事実が嬉しくてたまらないが、表向きは何てことの
無いように振舞っていることを見抜かれていることを察し、少しバツが悪そうに電話を切った
ゼロは、実は一部始終を聞いていた―執務室で話していたのだから当たり前である―セブンに
「今の電話の相手は誰だったんだ?」
と聞かれると、先程までとは少し違う意味の照れ笑いを浮かべ「ガキの頃からのダチ」と返し、
少し目を泳がせながら考え、

「今度、親父達にも会わすから」

と、付け加えた。
そんな、デレ全開の照れた様子が、それはもう可愛かったんだ! と直後にマンに語ったセブンは、
まるで兄馬鹿もしくはサコミズについて語っている時のゾフィーを見るかのような、残念なものを
見る目を向けられたが、マン自身も「年相応に可愛いゼロは見てみたかったかもな」と、ひっそりと
思わなくもなかったという。




元ネタは4月のファミリーコンサート(だよね?)のオリキャラ・ボイスくんがあまりに素敵でネタに 使えるキャラだと思った所から。 間が空いてしまったので鮮度が落ちたのが少し残念だけど、再登場しないかなぁ、ボイスくん 2012.5.20