あれは、僕がまだ小さかった頃の話なんだけど、母さんに
「好き嫌いばかりしていたら、大きくなれませんよ」
って言われて、つい
「じゃあ、どうして、何でも食べるマン兄さんは小さいの?」
みたいに返しちゃったんだ。
……それが、失言だって気付いた瞬間かな。子供心にも、「空気が凍るってこういうことなんだな」って実感したのは
「って、それのどこが『本当にあった怖い話』なんだよ」
「何言ってるの、ゼロ。怖いじゃないか、物凄く!」
「だよなぁ。俺も、あん時すげぇ怖かった」
「何となくなら、オレも解る気が……」
「多分それ、ティガにカミーラとか、ダーク時代の話をするの並に禁句っすよね」
「ああそうかよ。よく解んねぇけど、その手のでいいなら、俺も1個ある。……アストラ師匠が作ったもんは、
ぜってぇつまみ食いしない方が良い」
「それはオレが、こないだガイアの作ったもんつまんで、死にかけたようなもんか?」
「ああ。あの医務室に担ぎ込まれた原因、それだったんだマックス」
「慣れているアグルですら、時々具合悪くなるらしいからなぁ、ガイアの料理って」
「違ぇよ。そういうんじゃなくて、アストラ師匠がレオ師匠の為に作ったもんをつまみ食いすると、ブリザード
並の冷てぇ空気漂わせて、ブチブチと『兄さんの為に作ったのに』から始まって、『一番良い色に焼けたやつ
だったのに』だの『一番大きいやつでしたよね』だの『一番綺麗な形のを……』だのと、延々責めてんのは、
傍から見てるだけでも怖かったんだよ」
「傍からってことは、つまんだのは……」
「キングに決まってんだろ。あのジジイは何度そうやって嫌味言われようと懲りねぇし、レオ師匠はその背筋が
凍るような空気には気付かねぇし……」
「ご愁傷様、ゼロ。ちなみに、つまみ食いはマン兄さんやジャック兄さん相手にもしない方が良いよ」
「だな。からあげ1つでウルトラランスは、割に合わねぇもんな」
「しかも、その後延々お説教続くしねぇ」
「それって、ジャックさんの場合だろ? マンさんはどういう風に怖いんだ?」
「マン兄の場合は、別に怖くは無い。単に、食った分とペナルティ分キッチリ減らされるから、結果的に食える
量が減るだけ」
「つまみ食い程度でマン兄さんが攻撃するのは、ゾフィー兄さんかセブン兄さん位のものだよ」
「ゾフィーはともかく、親父……」
「あ。そうだ。ついでにティガ相手も、やめといた方が良いっていうか、無理だぞ」
「へぇ。そうなんだ」
「つまもうとした時点で気付かれる上に、包丁とか鍋とか持ったまんま振り向くんすよ、アイツ」
「確かに、そりゃ怖えぇし無理だな」
「あとは、やらないと思うけど母さん相手も止めておいた方が良いかな。昔僕や父さんがつまみ食いしたら、
気付かれて手を叩かれたんだけど、軽くペシっとやっただけなのに、ものすごく痛かったから」
おそらく怪談話か怖かった体験の話をしていたのに、何かズレた(一応)若手馬鹿一同。
メンツは、エース・タロウ・ダイナ・マックス・ゼロです
ふとつまみ食いネタが浮かび、姉さんに話したら獅子座兄弟を超期待されたものの、
どう書いたものか悩んで、前に掲示板で書いた小ネタから繋げてみました。
2010.8.23
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