「まぁ、次は女性の方が出場されますの?」
	「うん、S・P5星雲支部の隊長さんだって。歳はマックス君と大体おんなじくらいで、隊長さんってすごいこと
	 なんだって」
	「ねー。とっても強いって、パパ言ってたよ。ウルトラ兄弟もおっかながってるって」
	「ミライもそんなこと言ってたかも。あ、お菓子食べる?」
	「頂いてもいいんですか?」
	「うん、こっちがチョコでスターベリーでホワイトミルクね」
	もらった菓子をしばらく手のひらの上でしげしげと眺めて、初めて口にした味に、とてもエメラナは喜んだ。
	彼女を挟んでタイニー、その膝上にシルビィ、そしてカコは、すっかり仲良くなっていた。そもそもここは
	エメラナと共に呼ばれた少年二人の席だったが、彼らは前のほうに行くからと席を譲り、愛らしい少女たちの
	会話に花が咲かせている。周りの星人がナンパな目的で近づこうとしては、一定距離まで来て、そそそと退却
	していく。
	よくよく目を凝らすと、バルタン星人の男どもが科学忍法『小型分身』で彼女らの肩にちょこんと座っていたり、
	空中でとび回っているのだ。
	もちろん、大事な娘&義妹(彼女)に悪い虫がつかないように、という目的でだ。さっきはレイオニクスの
	不埒な奴が来たからハサミで切り裂いたし、今も、灰色のひらひらした自称「カミサマ」がちょっかいだして
	くるのを牽制するので忙しい。彼らの本体はあちらでピリピリと気を張っている。
	「あ、来賓の挨拶してた人」
	「やほー覚えてくれたんだ、嬉しいねぇ。バルタンちゃんたちにサイコキノちゃん、それとエスメラルダの
	 お姫ちゃん」
	振り向いた少女たちは、なんかその呼び方やだ、とそれぞれ名を名乗る。カミサマはテキトーに了承して、
	椅子の背にもたれかかり、
	「もっといい席で試合見たくない? よかったら私の席においで」
	「…ここでいいかな、僕たち」
	「うん、パパが駄目って。シルビィ、ここでいい」
	「わたくしも、あまり遠くにいってはいけないと言われてます」
	「ていうかこれってナンパじゃない?」
	カコが嫌そうな顔をした。ミライが見たら少しはヤキモチ妬いてくれるかな、と思いながら半目で男を見上げる。
	おやおや、とカミサマは肩をすくめ、怪獣墓場ご一同の方角を見た。
	「あっちの美女たちにも断られた上、美少女たちにも、かぁ。残念」
	たまたまリポーター達が通りがかった。
	「あ! ノアが少女たちをナンパして玉砕した模様!」
	「事件ですロリコンがここにいまーす!! おまわりさーん!!」
	イキイキと騒ぎ出すマグマ達へ、ノアの主張は、
	「ロリコンじゃありません、ただ若い子が好きなだけ! もちろん年上も守備範囲だけど、銀河系にいないじゃん?
	 独身も人妻も来るものは拒まないよ! ウェルカム! あ、ザギは拒むよ。まず男だしね」
	マイクまで使って主張すんな、と総ツッコミが入る。
	「そういえば、先ほど入った報告なんですが」
	と、ネオスが読み上げた内容に、会場のあちこちからまたツッコミが入った。それは、先ほどのこと。救護所に
	運ばれたネクサスを介抱しようとしたところ、
	「あのー、私が手当しちゃいけませんか?」
	「あら、さっきの…。いいわよ、お願いできる?」
	「はーい」
	放送を見ていた職員は、(きっと彼女さんなのね)と合点し任せた。気絶したままのアンフェスに甲斐甲斐しく
	包帯をまき、ちょこんと横の椅子に腰掛ける。
	寝顔を見つめ、幸せそうな彼女の後ろ姿に、周りは微笑ましい気持で見守っていたのだが、
	「…ん…」
	「ネクサス、気づいた?」
	「………」
	アンフェスは意識を遮断する。先ほどの試合について語っていたジュネブル&ジュネッスはどちらが表にでるか
	躊躇した隙に、最上位意識がでしゃばりやがり、ファウストに抱きついた。
	「どうしてー?! ネクサスは!?」
	「んー疲れてるんだって。それより私とイイコトしよう? せっかくベッドがあるんだし」
	「遠慮しますー! きゃどこ触って、離れてくださーい!」
	じったばったの抵抗。ご機嫌なノアから逃れる方法は一つだ。
	「ザギさまー!! ノアがいますよー! 捕まえてますから今です!」
	「ちょファウストちゃん?! 抱きしめ返してくれるのはいいけど何口走ってるの? あ、でもこのまま、
	 もちょっとこう、そうそう。そのワンピ、ボタンないなら上にあげないとダメかねぇ」
	真昼間からなにをしようとしているんだこの男は?! と周りの職員がでもかかわり合いになりたくないから
	遠巻きにしていると、誰かが悲鳴をあげてベッドの下を指さした。闇の中から手が、ずるり…とうごめいた。
	地球の都市伝説! その手はそのまま、ファウストに気をとられていたノアの腕を掴んで、這い寄る。むしろ
	擦り寄って名前を呼んでいる。
	「どうしてベッドの下から出てくるんだ?! 来るな来るなぁ! くっつくなー!!」
	「ザギさまあとはお任せしまーす」
	「ノア…我とイイコトしてほしい…。磔や触手プレイや縛りでも、ファウストとがいいなら三人で…でも
	 構わない」
	「本編で間に合ってる! こら、私の服に手をかけない! あ!」
	以上、銀十字職員の証言を元にお送りしました、と21が終えた。
	「子どももいんのになんちゅうもの放送してるんだ!」
	「あんな神の力で強くなっているのか、俺…」
	「俺はあんな神の力を借りたウなんとかゼなんとかに負けたのか…」
	「俺の息子、この先大丈夫かな? 悪影響でない?」
	「さぁ」
	「き、気を取り直しまして、次の試合にいってみましょー!」
	「ナイスさん、いつまで僕の目かくしてるんですか? なにが映ってたんです?」
	「子どもは見ちゃいけません!」


	空気を一掃するように、BGM『戦士グレンファイヤー登場!』、勇壮に本人が試合場に上がった。気合十分、炎の
	リーゼントをかきあげて、対戦者は誰だと腕に力を込めた。そんな彼とは対照的に、彼女は静かに現れた。
	赤のラインの入った白い警備隊服はシワ一つなく、ブーツも真っ白、両手の手袋の具合が気になるのか、
	きゅっと付け直す。そんな彼女の保護者&義兄がすこぶる騒がしかった。
	「ア・ウ・ラーー!! 頑張れよぉー!」
	「お弁当作ってきたから、あとで食べようねー!!」
	おっさんうるさい、と隣に座らされたヒカリが舌打ちした。アウラの応援をすることに異議はないが、何故に
	「昨日の夜中までかかって作ったンだぜ」なボンボンやうちわを持たされにゃならんのだ。いい年してゾフィーも
	こいつも、俺の周りにまともな奴はいないんか。
	そんな彼の隣の集団は、輪をかけて応援団! な女子の集まりだった。彼女らは黄色い声を聞くと、「お姉さま」や
	「素敵ですわ」「お綺麗です」など、どうやらファンクラブらしく、両脇こんなので、青い博士はほんとゲンナリに
	なった。キングの接待を他の職員に代わってもらえたのはいいが、できればシード組の控え室でマネージャーでも
	やっていたかった、まだその方がマシだ。でもまあ。小さい頃から知っている彼女が、メロス達、それと自分に
	向かって小さく会釈した。凛とした横顔に、
	「俺達が年取るわけだ」
	彼は小さく呟いて、団扇を控えめに掲げた。シード組も同様で、
	「ゾフィー兄さん…? その、お手製感満載な、応援グッズ、なに? 自作? キモいです」
	「ひどっ! これはメロスが『アウラの応援に使え』って押し付けてきたんだよ、ほら、兄弟全員分あるから」
	「えー」
	「これ、アウラちゃんが恥ずかしくないですか?」
	「私もそう言ったんだけどねぇ、『内緒で作った』って自慢そうに言われて。アウラちゃん今は平気そうには
	 してるけど心の中で真っ赤になってるね」
	「…俺もゼロの作ればよかったかな」
	「なんか言ったセブン?」
	「んにゃなにも」
	というわけで、あちこちでフレーフレーな状況に、うら若き乙女は涙が出そうなくらい恥ずかしくなっていたが、
	おくびにも出さずに試合場に進んだ。
	「さっさと勝負をつけるわよ(すぐにメロス隊長を止めに行かなきゃ)」
	なのにグレンは浮かない顔だ。対戦相手をここに上がってから知った彼は、女と戦うのなぁ…と歯切れが悪く
	なった。
	「俺、海の荒くれ者集団の用心棒やってたわけで、つまり心得とかポリシーとかがな」
	「戦うの、戦わないの? どっちなの!」
	苛立つ彼女をなだめながら、ゼノンが試合開始を告げた。
	「え、俺の意見は無視!? うそん!」
	「だって辞退しないなら戦うってことじゃないですか、盛大に瞬殺されてください」
	「ひっでぇ! メビウスとおんなじ顔してさらっと激辛!」
	文句を言いつづけるグレンは気づいていなかったが、審判は素早く距離をとってバリアの外にでた。ここまで
	逃げないと攻撃が当たってしまう、と彼は知ってるからだ。アウラが、必殺技の名を叫ぶのと同時に、場内が
	眩しすぎる光に包まれた。
	「というわけで、勝者、アウラ」
	ゼノンの言葉どおり、瞬殺されたグレンを救護班が運んで行く中、勝者インタビューにアウラが映った。帽子を
	とり、艶のある髪をさらりとかきあげ、
	「当然よ。私があんな男に負けるわけないわ」
	ファンクラブの女子は歓声をあげるが、男性陣はその容赦ない戦いぶりに恐怖を覚え、拍手すら忘れていた。
	凛々しい姿に憧れの眼差しを向ける女子の中には、
	「わたくしも、訓練を積んだらああなれますでしょうか…? ジャンやナイトにお願いしてみようかしら」
	とエメラナの呟きを受信したジャンが慌てて、自分が守るからそのままでいてほしいと懇願し、ナイトも
	彼にしては珍しい勢いでジャンに同調していた。




	一回戦 第7試合
	グレンファイヤーvsアウラ 勝者アウラ

	NEXT vsジャック

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姉さんパートその4 コレも勝敗と瞬殺が決まっていました。 にしても、カミサマ自重! あと、姫様はそのままの姫様で居て下さい (女子ずナンパネタ振ったんは私だけど、ここまでセクハラするとは……)