警備隊でのクリスマス会の後。五男エースは恋人の夕子と泊まり掛けでデートに出掛け、妻子持ちの
四男ジャックや、息子が2人出来て―というか引き取って―から初めてのクリスマスな三男セブンと、
その同居人な次男マンも、「夜は家族でのクリスマスをしよう」ということで帰宅し、その他の面々も
帰宅したりデートに行ったりと、それぞれ楽しく過ごし、夜になってからの事です。折角今年は孫が
2人増えたので、嬉々としてサンタの格好をした父(ケン)が、一応ジャックの息子にもプレゼントを
届けてからセブンの家を訪れ、子供達が寝ているか確認すると、何と3歳のレイだけでなく、中坊の
ゼロまで大人しく寝たとの事でした。
「サンタの正体は知っているけど、そうやって喜ばせようとしてくれていることが嬉しかったから、
騙されている振りをした。という所だと思いますよ」
そう、ゼロが大人しく寝た理由を解釈したのはマンでしたが、それで合っていて、実はこっそり起きて
いて様子を窺おうと思っている内に、本当に寝てしまったようでした。
そんなゼロの部屋では
「ご無沙汰しております、大隊長」
「レオに、アストラ。こんな所で何を……」
「一時期とはいえ、我らの元で預かっていた教え子に、クリスマスプレゼントを届けに。……師匠の許可は
いただいています」
「僕は、ただの兄さんの付き添いです」
ということで、ゼロの更生を押し付けられていたことのある、獅子兄弟と遭遇しました。ちなみに彼らからの
プレゼントは道着で、それを見たゼロの顔はとても微妙そうな感じでした。
続いてレイの部屋にプレゼントを置きに行った父は、首を傾げながら居間にいるマンとセブンに
「レイの所にも、他のサンタ役が来とったのか?」
と訊ねてきたので理由を訊いてみた所。自分からのプレゼントを置く前に、ゼロの元には2個のプレゼントが
あり、それはセブン達からと、獅子兄弟からだと解釈出来たのですが、レイの元には既に3個のプレゼントが
あったのだそうです。
「3つですか? 私達からとペンドラゴンの皆さんからの、計2つの筈ですが?」
「いや、しかし、わしからの物以外に、3個プレゼントがあったように見えたんだが……」
ということで、マンと一緒に再度レイの部屋を覗きに行くと、枕元に座りこみ愛おしげにレイを撫でている
ミニスカサンタな美少女と、マンにとって最も遇いたく無い、因縁の相手が居るように見えました。
「……どこから入り込んだ、ゼットン! うちの子に何の用だ!?」
一応レイを起こさないように、音量を落としながらも、マンが殺気を漂わせて睨みつけ問い質そうとすると、
相手の男―ゼットン―と少女は、マン達の方を一瞥すると、ふっと姿を消しました。
その消える瞬間、少女が「弟に、逢いに来ただけだ」と呟いたように聞こえたマンが、念の為父にも確認した所、
少女とゼットンが居たのも、消えたのも見間違いでは無く、少女の声も聞こえたそうです。
そして「もしや」と思い調べてみた結果。少女はレイの実姉ケイトで、ゼットンは彼女の護衛をしていたことが
判明しました。しかし、2人共レイの生家レイブラッド組の事件で亡くなっていて、その事件に関する記事の
写真で、ケイトの顔を確認したので
「え。アレ、まさか幽霊?」
という結論に達しましたが、プレゼント―小さなジャミラのぬいぐるみでした―はしっかり残っており、後日
レイのもう片方の養家であるペンドラゴン一家にもこのことを話してみた所
「ああ。レイが言うには、姉のケイトは幽霊として常に傍にいるみたいで……」
との返事が返って来ましたが、真相は不明です。
☆
セブン達の家を後にすると、今度は警備隊に併設する自宅に帰り、年齢的にはかなり大きいけれど、ゼロより
よっぽど素直で可愛らしい末っ子メビウスの部屋を訪れると、ドアの前で先客2人が小声で口論を繰り広げて
いました。
「何しに来たんですか。勝手に人んちに侵入しないでくれます? ていうか、ウチの可愛い弟に何かしたら、
兄さん達も呼びますよ」
「単に、渡し損ねた物を置きに来ただけだ。……言っとくが、俺を通したのはお前の一番上の兄貴だからな」
口論を繰り広げていたのは、もちろん末弟を溺愛するタロウと、メビウスの恋人―の筈―のヒカリでした。
そんな訳で、2人の脇をすり抜けてとりあえずプレゼントを枕元に置くと、本当は元末っ子で唯一の実子な
タロウの元にも行く予定でしたが、行っても居ないのが解りきっているので少し悩み、それでもプレゼント
だけ置きに行きました。
☆
「……何をしに、いらしたんでしょうか?」
息子や孫達にプレゼントを届けた後。一時居候していたことがあり、五男六男とも意気投合していた、
もう1人の息子っぽいダイナの元を訊ねてみると、戸を開けて思い切り眉をしかめたのは、ダイナの
同居人―正確には家主です―のティガでしたが、彼らの部屋では昼間のクリスマス会に参加していた
若手メンツ(コスとジャス除く)に、バイトで参加できなかったゼアスや、ティガの弟のイーヴィルを
交えた飲み会が開かれており、そこにいた殆どからも怪訝そうな顔をされました。
「あー、えー、メリークリスマス。コレは、わしからのクリスマスプレゼントだ。皆で分けると良い」
「あざーっす!」
用意してきたプレゼントが、お菓子の詰め合わせならぬおつまみの詰め合わせな長靴だった為、どうにか
飲み会メンツ向きではありましたが、やっぱり数人には「そもそも何で来たんだろう」という顔をされた
ままでした。
そんな感じに父が訊ねて来る前も来た後も、家主である筈のティガは―数人に手伝わせつつとはいえ―、
ずっとおさんどんをしたり、散らかされる端から片付けたり、
「寝る人は、ダイナの部屋に行ってね」
等の指示を出したりと忙しそうに立ち回っていました。
「お嬢ー。この人数だとダイナの部屋だけじゃ狭いんで、お嬢の部屋は使っちゃダメなんですか」
「その呼び方は止めろって、再三言ってるよね。……ダイナの部屋に入らない人は、帰るかその辺の端の
方で寝て。毛布位は貸してあげるから」
彼らの住むアパートは、2〜3人暮らしでちょうど良い位の2LDKで、散らかり気味のダイナの部屋は、
雑魚寝で5〜6人位が限界でした。
「ティガの部屋って、ダイナも立ち入り禁止らしいよ」
「へぇ、そうなんですか」
「……居候に、コレ以上テリトリー侵害されてたまるか」
「ティガー。ダーク様オーラ漏れてるよー」
茶化すようにガイアに指摘されたティガは、元「優等生面した裏番」で、近隣のヤンキーをまとめていた
どころか、ヤクザとも付き合いがあったとの噂があり、その当時の異名は「ダーク」といいます。
「ともかく、『お嬢』はやめて。で、イーヴィルとネクサスは、僕の部屋使ってもいいけど、他は
寝たいならダイナの部屋か、居間の隅に行って」
「えー。何でその2人はアリなんすか」
「イーヴィルは弟だし、ネクサスは雑魚寝させたことで体調崩されても困るからだよ」
珍しく昼間から参加しているネクサスは、近所でも有名な虚弱体質で、散らかり気味の部屋や床で
寝かせたことにより、ほこりなどで具合が悪くなったり、風邪をひかれてはたまらない。という
ティガの主張は尤もで、その他のメンツはダメでも弟のイーヴィルはアリなのも、何となく解ります。
「え、あの、でも、出来れば僕も、ばっちい所では寝たくないです」
「じゃあずっと起きてるか、いっそガイア達の部屋は? どうせ隣なんだから良いでしょ」
「えー。うん。まぁ、どうしてもって言うなら仕方ないけど、出来れば起きてて」
実は、ずっと居心地悪そうにお茶やジュースを飲んでいたのは、潔癖症で気弱なゼアスで、彼にとっては
その辺の問題は結構重要なのですが、他の連中にとっては「ああ、そういやそうだった」程度の扱いです。
結局。ダイナの部屋まで行ったのはゼノンとネオスだけで、ありがたくティガの部屋を使わせてもらった
ネクサスと、自室に帰ったアグル以外の面々は、夜通し飲みながら騒いだり、気付いたら床で寝落ちして
おり、起きている奴らのおもちゃになったりしていました。
警備隊クリスマス3個目ー!
書きたかったのはミニスカサンタな幽霊のお姉ちゃんです
2010.12.21
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