3歳の時に小平太に拾われた、七松組の拾いっ子四郎兵衛は、割と長い間サンタクロースの存在を信じて
いましたが、流石に高校生ともなった現在では、ちゃんと現実を知っています。
なのでここ数年は、小平太・5代目(小平太の父)・七松組の若手などに、「欲しいものは無いか」と訊かれ、
そのメンツから別々にプレゼントをもらったりしていますが、それが嬉しいと同時にちょっぴり心苦しくも
なってきているのも事実だったりします。
そんな訳で
「今年は、ぼくがみんなのサンタさんになりたいんです」
と、一番気心がしれていて相談し易い、若手のまとめ役の金吾に言ってみると
「ああ。良いんじゃないですか」
と言いながら携帯電話を取り出し、「どっちにするかな」と呟きながら、誰かに電話を掛け始めました。
「あー、もしもし。きり丸? うちのしろ坊が、サンタ希望なんだけど。……解った。それじゃ」
金吾の中学からの友人のきり丸は何でも屋を営んでおり、文字通り何でもやる器用な男ですが、いきなり
謎の依頼電話を掛け、しかも何やらあっさり話が通じたらしい事に、四郎兵衛が首を傾げていると、金吾は
「詳しいことは、直接きり丸達に聞いた方が早いと思いますけど、この町にはサンタが本当に居るんですよ。
しろ坊も、1度はサンタの正体確かめようとしたら、本物だったことあるでしょう?」
と笑いました。その言葉の本当の意味が解ったのは、クリスマス直前にきり丸の元を訪ねた時ですが、確かに
かつてサンタの正体を確かめようと起きていたら、見知らぬ人物から笑顔でプレゼントを手渡された覚えは
あり、そのことにより、だいぶ長い間サンタクロースの存在を信じていたのは事実でした。
「ウチとカトキューが提携して、商店街なんかも協賛してくれてんだ」
クリスマスの数日前に、四郎兵衛がきり丸に呼びだされた場所は、彼の自宅兼事務所ではなく、別の友人
加藤団蔵(警官)の実家である、「カトキュー」こと加藤急便で、そこで受けた説明によると、親や親戚、
購入先である商店街のお店などから、加藤急便が事前にプレゼントを預かり、きり丸や手の空いている
商店街の若手や有志をバイトとして雇って配る「サンタ便」を毎年実施していて、有志サンタの中には
中在家美術館の館長や、「おひさまえん」という保育所の日向園長、診療所の新野医師、大川町長なども
含まれており、更に美大の変人講師鉢屋三郎や、大川町長の知り合いの元特殊メイクのカリスマだった人
などが、元の顔がわからないように特殊メイクを施してくれたり変装させてくれたりしているのだそうです。
「元は町長の思い付きらしいんだけど、飛蔵社長を初めとするカトキューの連中も気に入ったんで、俺らが
ガキの頃に始めてから、ずっと続いてんだと」
そういって嬉しそうに語るきり丸以外にも、かつてカトキューのサンタ便を本物だと信じ、夢をもらった
気持ちを、今の子供達にも届けたい。とサンタバイトに志願してくる若手は、結構いるんだとか。
「お届け先は子供さんだけじゃなくて、お子さんやお孫さんからお祖父さんお祖母さんへや、若旦那達
位のお子さんから、離れている親御さんに。というのもあるんですよ」
そう付け加えながら、七松組への届け物の担当は四郎兵衛にしたことを教えてくれたのは、―現社長の実子の
団蔵が跡を継ぐ気が無いので―次期社長な入り婿の清八でした。
そんな訳で、小平太+七松組一同から滝夜叉丸へのドラム式洗濯乾燥機だけは、1人で運ぶのは無理でしたが、
それ以外の七松組の面々への贈り物に、前払いのバイト代や金吾達からのカンパで買ったプレゼントを混ぜて
運んだ以外にも、行く先々でサンタとして歓迎されて喜ばれた四郎兵衛は、
「また来年も、このバイトしようかな」
と思える程の充実感を味わえたのが、今年の一番のクリスマスプレゼントだったかも。と、25日に話した所
小平太や三之助などから「金吾ずりぃ」という、訳の解らないブーイングが起こり、しばらく仲間内でそれが
良い酒の席のネタになっていましたとさ。
2010年クリスマス企画第2弾 おりづる様リク
しろちゃん(七松組)で「今年はぼくがみんなのサンタさんになりたい」
とのことでしたが、こんな感じでよろしいですかね?
2010.12.9
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