基本的にお祭り好きの大川学園1年は組の面々にとって、

	「終業式の後、クリスマスパーティしようぜ」

	という提案は、誰が言い出しても不自然ではないことで、誰1人として異論のあるものは居なかった。



	「えっと、じゃあ、場所は寮の誰かの部屋じゃ狭いから、駅前のカラオケのパーティールーム借りる?」
	「えー。別に、教室使わせてもらえば良くない? 学園長に言えば、絶対OKでるよ」
	「そうだね。僕は談話室借りれば良いかと思ったけど、教室の方が広いよねぇ」
	「けど、カラオケは捨てがたいよなぁ」

	パーティーを決行することは決定したものの、具体的な場所や内容となると、それぞれの意見や主張が
	ぶつかりあったが

	「俺Wii持ってるから、ソフト買えば教室でも談話室でもカラオケも他のゲームも出来るぞ」

	との声が、売れっ子の子役で、出演した番組やその打ち上げなどで獲得したゲーム本体を各種所持している
	きり丸から上がった為、ひとまず場所は教室に決定した。
	そして、その他の料理やケーキについては

	「あのねぇ、食満先輩が、土台のスポンジケーキとクリームやトッピング用意して、自分達で好きな感じに
	 デコレーションしたらどうかっていって、作るならお手伝いしてくれるってぇ」
	「2年生も寮でパーティするから、何人か手伝い出せば一緒に料理作るのもアリだって、川西先輩が言ってた
	 って、池田先輩から聞いたけどどうする?」

	ということで、教室の飾りをしている間に自作することになった。

	そんな訳で、ケーキは家庭科部の6年生―留三郎&長次―の指導の元がしんべヱと喜三太が。料理は伊助、
	きり丸、三治郎が左近と一緒に作り、教室の飾り付けは庄左ヱ門、乱太郎、兵太夫が担当し、団蔵、虎若、
	金吾は、駅の周辺まで飲み物やお菓子などの買い出しに行くことになったのだが、当日の各自の作業中

	件名:ゴメン
	本文:俺らには止められなかった

	という謎のメールが団蔵から届き、続いて金吾から
	”追加のパーティーグッズを買いに寄った先で、サンタのコスチュームを虎若が発見した”
	という内容の補足メールが来たが、それでも数人には、それで何で謝るのかが解らなかった。



	「……ただいま」
	「お帰り。お疲れ様団蔵、金吾。さっきのメールは何だったの?」
	「僕は何となーく予想は着くけど、当の虎若は?」

	大川学園から最寄りの駅までは少々遠いので、駅前まで買い出しに行って帰って来るのは時間が掛かる。
	その為、買い出し組が戻ってくるまでに他の準備は終了し、全員が教室に揃い始めていた。

	「職員室寄って、先生達呼んでくるって……」
	「買って来たものは、全部俺らが受け取ってきたけど……」

	買ってきた物を取り出しながら、疲れ切った様子の2人が答えている途中で、数人の携帯の着メロが響いた。


	「滝夜叉丸先輩だ。……『あのなまはげ共をさっさと回収しろ』はい、すいません。今すぐどうにかします!」
	「もしもし左吉? え。何? 『歩く公害だから何とかしろ』?」
	「僕には伝七からメールか。……『アレを野放しにするな!』だってさ」
	「……うん。確かにコレは、なまはげ級で歩く公害で、野放しにしちゃダメかも。伏木蔵から、写メが添付
	 されて来たんだけど、件名が『すごいスリル〜』って、それで済むのかなぁ」
	「済まないと思うよ。一平と孫次郎から、苦情と泣きのメール来てるし」
	「えーと。僕に来たメールは、鉢屋先輩が『相変わらず強烈だな』、尾浜先輩が『おれらは楽しいけど、周り
	 すごいことになってるよ〜』で、彦四郎からは『早くどうにかしてくれ』だって」

	各自に一斉に掛かって来た電話及び届いたメールの内容は、全て同じで

	「僕らは、止めたんだ! なのに、虎若がミニスカサンタセットを見つけて、結構な額だったのに自腹を
	 切って買って……」
	「それだけじゃなくて、着て帰って来たんだ、アイツ。だから俺らも距離置きたくて、結果こんなことに
	 なって、本当にゴメン! 直接こっちつれて来てたら、まだマシだったよな」
	「経緯も謝罪もどうでも良いから、さっさと責任持ってうちの化け物達を連行して来てくんない?」

	「あらぁ。化け物だなんて、ひどいわぁ」
	「そうよぉ。こ〜んなにセクシーで素敵じゃないの」

	金吾と団蔵が言い訳をし、他が友人や先輩などの目撃者への謝罪をしている中。教室にやって来たのは、
	噂の張本人である、ミニスカサンタ虎子と、虎子以上に短いスカートのサンタコスに、網タイツまで
	まとった、伝子こと副担任の山田伝蔵(46)だった。

	「うわー。写メで見るよりも、実物ケバっ」
	「虎は、俺らと居た時は化粧して無かったよな?」
	「……山田先生が、ご自分の道具を貸して、一緒にメイクしていた」
	「んー、でもぉ、ちょっと濃過ぎるけど、色使いは今年の流行りだねぇ」
	「へぇ〜、そうなんだぁ」

	学内に残っていた生徒を震撼させた、ミニスカサンタ虎子&伝子に、1年は組の面々も大いにドン引き
	したが、天然というかどこかズレまくりの用具ペア―しんべヱ、喜三太―だけは、のほほんとしていた。

	「確かに、流行色取り入れていて、どこの会社のどれ使ったか大体解る自分が嫌なんすけど、何で
	 虎子のグレードアップも、伝子さんも止めなかったんすか、土井先生?」
	「私に、止められると思うか? 巻き込まれて自分まで女装させられないようにするだけで精一杯だったんだ」

	戸を開けてセクシーポーズをかます化け物達の後ろで、今にも消えたそうな顔をしていた、担任の土井半助は、
	教室に至るまでの間にも、散々苦情を言われ続けていて疲れ切っていた。

	「まぁ確かに。でも、中和剤として半子さんが居た方がマシだったかも」
	「だねぇ。何しろ、伝説のミスコン王者だし(笑)」
	「あと、メイク道具はともかく、あのサンタコスも山田先生の私物なんですか?」
	「ああ。それなら、何年か前の教職員の忘年会の出し物用に買ったもので、その時は半子さんもセット
	 だったらしいよ」
	「何でそんなこと知ってるの、庄ちゃん?」

	切り替えが早い上に好奇心旺盛な教え子達に、土井は胃が痛くなり始めていたが、決定打は

	「鉢屋先輩情報。先輩は学園長から聞いたそうで、写真もあるって」

	という庄左ヱ門の証言だった。


	「……みんな。ひとまずそこまでにしておかない? 土井先生の胃に穴が開きそうだよ」
	「あと、料理が冷める前に食べて欲しいから、いい加減パーティー始めようよ」

	
	そんな、保健委員乱太郎と伊助母ちゃんの言葉をきっかけに、ようやく始まったクリスマス会は、
	切り替えの早さ故に楽しく行われたが、流石にカラオケで虎子&伝子がキューティーハニーを
	歌った時には、
	「吐きそう」
	「悪夢の再来だ」
	等の呟きが聞こえたという。



2010年クリスマス企画第4弾 おりづる様リク2個目 『恐怖・ミニスカサンタルックの伝子&虎子』 で、ご本人からも「没をお勧めします」とか「ホントに書きますか?」と念押しされましたが、 読む人の想像力にお任せする。ということで決行しちゃいました(笑) 2010.12.17