母伊作と共に家出中のある日。長男数馬(中2)は、ふと

	「母さんって、3年位連続で結婚記念日や誕生日忘れられたことにキレたんだよね。だとしたら、
	 ちゃんと何かしてたことあるのかな? 僕の覚えてる限りでは、精々プレゼントっぽいもの
	 買って来てたかなぁ。程度なんだけど」

	と、妹の左近(小4)に話してみた。

	「さぁ? 母さん本人にだと何か惚気が返ってきそうだから、洋じいか伯父さん達にでも訊いてみる?」


	そんな訳で、一番詳しそうかつ、父文次郎を敵視していない、伊作の伯父である新野洋一に訊ねてみると、
	彼は苦笑交じりに、ある意味妙に切なくなるような事実を教えてくれた。


						×××


	「最初の結婚記念日は、私に君(数馬)を預けて食事に行く予定で、予約まで入れていたのですが、
	 当日の夕方過ぎに君が高熱を出したのでキャンセルし、それからしばらく具合が悪かったので、
	 翌年に持ち越すことにして、ひとまず1歳の誕生日のお祝いとまとめて。ということで3人で
	 食事に行きましたが、次の年は伊作本人が前日から風邪で寝込んでいた為結局行けず、3年目と
	 4年目は、ちょうどつわりが一番ひどい時期だったので食事も外出も無理で、それ以降は人数も
	 多くなったため、家で祝うようにしたようです」

	つまり、結婚して以降一度も2人きりで出掛けたことが無いという事実に、流石の数馬も伊作が憐れに
	感じると同時に、
	(その不運遺伝子を受け継いでるんだよなぁ、僕ら)
	と、何だか哀しくなった。
	ただし、後になって伊作当人にも試しに話を聞いてみた所。

	「うん。2人っきりは、家出から帰った後のホワイトデーが初めて。だけど数くん連れてご飯食べに
	 行った後で買ってもらった服は未だに着れるし、さもくんやさっちゃんがお腹に居た年は、つわりで
	 食欲無くても食べられそうな食事作ってくれたし、他にも――」

	等々、延々のろけを聞かされたため、「結局は考え方と受け取り方次第か」と、自分達を納得させてみた。


	「まぁ、確かにこへみたいに、記念日の度に僕か洋おじさんに子供達預けて出掛ける。っていうのも
	 羨ましいけど、留兄も1年目から作ちゃんを連れて行けるっていうか、作ちゃんが喜びそうなお店を
	 選んで3人で行って、お義姉さんに『作兵衛を可愛がってくれるのは嬉しいけど、せめて最初の結婚
	 記念日位は、2人きりが良かったのに』ってグチられたから、文次の性格考えると、計画してくれた
	 だけでも良い方かなぁ。って」
	 
	そんな補足に、数馬も左近も同意は出来たが、それでもやっぱり、
	(頓挫しかしない計画じゃなぁ……)
	などと思わなくも無かったのだった。




3周年記念品ラスト! 「中在家兄妹が1年目の結婚記念日に何をしたか」なリクでしたが、潮江家メインで兄と弟は オマケっぽくなってしまいスイマセンおりづる様 (て、全リクに対して謝りっぱなしだな自分) しかしまぁ、こんなんでよろしければお納め下さいまし 2011.8.14