まずはきっかけ的な

	「ハチ、家を出るか悩んでるんだって?」
	「そうなんだよ。もう下の連中もデカイから居場所無いし、俺もとっくに社会人なわけだから、家出た方が
	 良いって前々から解ってんだけど、家賃や生活費払えるか微妙な稼ぎしかねぇからさぁ……」
	「だったら、同居するか?」
	「誰と」
	「俺と。2人なら、家賃折半でそれなりの所に住めて、光熱費も食費も家事も分担できるし」
	「そうだけど、……いいのか?」
	「何が?」
	「え。あ。いや、その……お前は、家出る理由ないだろ?」
	「そうでもない。前々から叔母さん達に『一緒に暮さないか』って言われてるから、俺をきっかけにすれば
	 ちょうどいい機会だし」
	「まぁ確かに。けど、何で今まで同居話受けなかったんだ?」
	「小中学校は学区が変わるから、今までの友達と離れ離れにしたくない。って、兄さんが直訴したらしい。
	 だけど今度の春から伊助も高校生だし、叔母さんちから三郎次と伊助の高校は通える距離で、兄さんの
	 職場は、逆に乗り換えの遠回りが無くなってかなり楽になるから、悪い話じゃないと思うんだ」
	「そうかもしれないけど、今更だったりはしないのか?」
	「むしろここ数年、ことあるごとに誘われてる」
	「何で」
	「従兄の利吉兄さんが就職して家を出て、利吉兄さんも伝蔵叔父さんも仕事人間であまり家に居ないもん
	 だから、淋しいらしい」




その後

	「おっ! 木下。最近引っ越して、うまそうな弁当復活したってことは、ついに嫁さん貰ったのか?」
	「違います。コレ作ったのは、高校の頃作ってくれたのと同じ奴で、同居してるけど、嫁とかじゃないです」
	「それじゃ同棲か。どんな子なんだ? 美人か? 結婚の予定はあるのか?」
	「あー、いや、ガキの頃からの付き合いで、男なんですけど……」
	「そうかぁ。……なぁ、今日、お前さんちにお邪魔しても良いか?」
	「材料費は出すから、夕飯食わせてくれよ。料理うまいんだろ? その同居人の子」
	「いきなりそんなん言われても……一応訊いてはみますけど」

	「……あー、もしもし、兵助? うちの職場のおっちゃん達が、今日ウチに来たいとか言ってんだけど、
	 連れて帰っても平気か? ――えーと、材料はこっちで買うとか言ってる。――人数は……3人だな。
	 ――ん。解った。じゃあ、頼むわ。……了解でました。『鍋にするから、具材適当に買って帰ってこい。
	 野菜は用意しておく』だそうです」

	「たでーまー」
	「お帰りハチ。……いらっしゃいませ、狭いですけど、上がって下さい」
	「ああ、はい。おじゃまします。……木下」
	「はい? 何すか?」
	「確かに男だが、何て言うか、その……」
	「限りなく、嫁さんぽく見えたのは、わしらの気の所為か?」
	「しかも結構な美人さんじゃねぇかよ」
	「否定はしませんけど、ホントに単なる幼馴染で同居人なだけっすから」




ノリと勢いで、ひとまずセリフだけ書いてみました。 伊助ちゃんが高校に挙がる年なので、10年後で2人は25,6歳な筈です 後で気が向いたら、地の文入れて直すかもしれません 2010.2.17