「もしも尊奈門が19歳だったら」
(年長時)
「保育園に、新しい先生がきたんだ」
「ふぅん。男? 女?」
「女の先生。園長先生のこと、『おじさん』ていってた」
「へぇ。てことは、姪御さんか何かかな。若い人?」
「うん。先生になったばっかりって言ってた」
(年長時その後)
「尊ー。お前、伊作先生結婚してて、子供居るの聞いてた?」
「えっと、赤ちゃん組に赤ちゃん居るって言ってた」
「そうか。けど、あの若さで子持ちってことは、姉さん(尊母)みたいに、すぐに
うまくいかなくなる可能性も、ない訳じゃないしねぇ」
「?」
(小6頃)
「叔父さん。伊作先生のことは、もう諦めたら? 今度また赤ちゃん生まれるって聞いたよ」
「知ってるよ。こないだの子が双児だったから、6人目だっけ? でも、いつ何のきっかけでダメに
なるか判らないじゃないか」
「……。それ、左門の時も左近の時も団蔵と左吉の時も、同じこと言ってたよね」
「だって、判らないものは判らないし、人と人との関係なんて、案外もろいものだからねぇ」
「そうだけどさぁ……」
(中3時)
「諸泉尊奈門先輩?」
「そうだけど、誰だお前」
「1年の大川(三郎)といいます。……おたくの叔父さんに、うちの姉に付きまとうの
やめるよう言ってもらえます?」
「は?」
「私の母の結婚相手の娘が、先輩の叔父さんがご執心の『伊作先生』なんですよ」
「そうか。けど、無理。俺がどうにか出来るんなら、とっくの昔にどうにかしている」
「確かにまぁ、そりゃそうでしょうけど、頑張ってみて下さい」
「……無茶言うなよ。ところで、何でお前が俺にそんなこと言いに来るんだよ」
「ああ。それは、『一番年が近いから』です」
(現在)
「いやぁ、感心する程しつこいですねぇ、先輩の叔父さん」
「……そうだな」
「先輩も18超えたんで保護者要らないだろうから、そろそろ訴えようかって、
義兄達が言ってましたけど?」
「ああそうかよ。好きにすれば良いだろ。俺に発言権なんか無いんだし。……って、
再三言ってのに、何でお前は毎度俺に言いに来るんだよ」
「まぁ良いじゃないですか。数馬や左吉に恨み言っぽく言われるより、私におちょくられた
方が、先輩も気楽でしょう?」
「……。やっぱりお前は俺をおちょくりに来てたか、大川」
「もしも土井兄弟が三郎次以外女だったら」
「…………」
「伊助、三郎次。姉さんが何か沈んでるみたいだけど、理由知ってるか?」
「えっと、さっき3人で買い物に行った時に、また母さんに間違われて……」
「……。25歳で小学生の母親は、確かに有り得ない話ではないよな。実際隣の斉藤さんの所の
妹さんは、今の私の年の時には3人の母親で、一番上の子は小学校に上がっていたらしいし。
けど、伊助はともかく、三郎次位の子が居るように見えたってことは……」
「まぁまぁ、姉さん。俺も、ハチと一緒に孫次郎連れて出掛けた時に、親子に間違われたことあるし」
「兵助姉さん。それは何か違……」
「……どうせ私は、お前と違って恋人は居ないし、出来ても忙しくて長続きしないよ」
「いや。俺も別にハチとは付き合ってないし」
「この場合、そういう問題じゃないよね? 兄ちゃん」
「ああ。本人達に自覚がないだけで、傍から見ると……。って感じだし、半助姉さんが
気にしてるのは、そういうことじゃないからなぁ」
「じゃあ、結局何を気にしてるの?」
「僕もまだよくは解らないけど、半助姉さん位の年になると、結婚とか年の話には敏感になるらしい」
「もしも仙蔵の所の双児の片方が男だったら」(成長版)
伝七の場合
「伝七ってさぁ、兵太夫と双児なんだから女子の実態はよく知ってる筈なのに、
何か女の子に夢見てる所あるよね」
「ああ、そりゃ、藤内姉ちゃんも見てるからだろ」
「でもさぁ、兵太夫とお母さんの仙蔵さんとかきり丸も似たようなタイプだから、
お姉さんはどっちかっていうと例外じゃない?」
「それでも、兵太夫タイプ以外も居るって信じてるんじゃないかな」
「というか、『アレが女子の実態だなんて信じない!』みたいな現実逃避してる気が……」
「あー」
「確かにありそう……」
兵太夫の場合
「伝七、また告白されたけど断った。って噂聞いたけど、ホント?」
「うん」
「……前から聞いてみたかったんだけど、どんな相手でも毎回断るのって、好きな人でも居るの?」
「ううん。そうじゃなくて、兵に勝てる人じゃないと無理なだけ」
「兵太夫に。って、どういう意味で? 顔? 成績? それとも……」
「物理的にというか、『罠にかからない』って意味で。……確かに、見た目も出来れば兵以上が良いけど」
「兵ちゃんの好みって、どんな女の子?」
「そうだなぁ。見た目は伝七並かそれ以上で、左近姉程度には家事が出来る子。かな」
「うわぁ。かなりそれはレベル高いね」
「そう? きり丸レベルの顔で、藤内姉さん並に家庭的。ってのは、高望み過ぎるかと
思って言わなかったんだけど」
「……兵ちゃんの周り、みんなレベル高いもんねぇ」
「もしも斉藤兄妹の2番目と3番目が逆だったら」(過去)
「三木ヱ門」
「……何でお前は、タカ丸兄さんのことは『兄さん』と呼ぶのに、僕は呼び捨てなんだ」
「何を今更。別に良いだろう。今までずっとそう呼んで来たのだから、変える必要などあるまい」
「けど……」
「どうしたのー、三木くん、滝ちゃん?」
「ああ、兄さん。……三木ヱ門が、私に呼び捨てにされるのは不満だというんです」
「べ、別に、不満とは言ってない! ただ、何で呼び捨てなのか訊いただけです」
「そういえば、何でなの?」
「……うんと幼い頃は、『お兄ちゃん』と呼んでいた時期もあるのですが、母の影響もあって、
次第に呼ばなくなったような気がします」
「そっかぁ。三木くんとしては、また『お兄ちゃん』って呼ばれたい?」
「え。あ。いや、今更コイツにそんな風に呼ばれても気味悪いんで、良いです」
「ならば、いちいち突っかかってくるな。面倒臭い」
「何だと!? お前が妹のくせに生意気な口の利き方なのが悪いんだろ」
「まぁまぁ、2人共。ケンカしちゃだめだよ〜。ほら、きぃちゃんもぐずりだしちゃったよ」
「いえ。この泣き方は、お腹が空いている時のものですね」
元拍手御礼
「尊ちゃんを原作年齢にしたら……」という発想から、他に浮かんだのを書いてみた結果でした
2011.8.6
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