1.
僕の上司は姉の義兄なので、特に知りたくもない私生活の話は頻繁に耳に入るし、逆に会社絡みのことに
関して探りを入れられることもある。
だから、奥さんが春に子供達の半分─意外なことに、中学生を筆頭に7人も居る─を連れて家出して、
学生は夏休みに入った今現在も帰って来ていないことも知っている。
というか、家に帰る気は無いのに、生活態度や様子は気になるようで、父親側に置いてきた子供達とは
会っている上、僕にも度々会社での様子を訊いてくるので、嫌でも詳しくならざるを得ない。といった
感じで、そのこと自体は今更なんで別に構わないけれど……
「あのね、三木くんに頼みがあるんだ。誕生日に贈ったネクタイを、最低でも丸1日は着けて会社に
行くようにメモ残して来たから、着けて出社したら、証拠の写メ撮って報告してもらえるかな?」
いつも通りニコニコ笑っているようで、有無を言わせない笑顔でそう頼まれ、仕方なしに引き受けた時に
一体どんなネクタイなのか訊いたら、
「見れば絶対わかるよ」
と、上のお義姉さんを彷彿とさせるような企み顔で返された訳だけど、まさかアレがそうですか!?
あからさまじゃなく、小さめのシルエットを迷彩風に散らしているデザインとはいえ、よく見れば明らかに
某猫型ロボット柄ですよね。
……何の嫌がらせですかお義姉さん。って、痴話喧嘩に首を突っ込んでも良いことなんて一つも
ありませんし、結構愉快犯気質な所があるのも、知ってはいますけどね。
2.
「三郎次、朝顔の種余ってたらもらえるか?」
「……。蒔くの忘れてる内に、なくしたのか?」
「違う! ちゃんと蒔いたけど、最初に蒔いた自分の分は10日経っても芽が出なくて、久作に
もらった分は、芽は出たけど団蔵に蹴倒されたんだよ」
「……そうか。災難だったな左近」
「懐かしいな。数馬も、同じように藤内や僕に泣きついてきていた」
「流石兄妹……って、さも兄の時は?」
「三兄(三之助)の共々、鉢に収まらない位、目一杯育ちまくってたというか、何か変な方向に伸びまくってた」
3.
「作ちゃんは、自由工作の作品作ってる時に弟くん達寄ってきても、怒んないんだね」
「まぁ、最近はチビ共が触っても壊れないというか、チビ共が遊べそうなもの作ってみてますし」
「そっか。……昔─まだ僕も留兄達も小学生だった頃─、留兄が今の作ちゃんみたいに自由工作してるのを
近くで見てたら、『触るな! 壊すな! 近寄るな!』って叫ばれて、こへに言ってるのかと思ったら、
僕に言ってたんだよ。酷くない?」
「えーと、俺も、散々チビ共や左門達だけでなく、数兄や左近にもうっかり壊されたりしてきたから、
路線変えたんで……」
4.
「何作ってるの、三郎兄ちゃん?」
「ん。新野さんの所の園でやる肝試しの、お化けを頼まれたんだ」
「それは、作り物と役のどっちをですか?」
「両方だ」
「三郎兄ちゃんのお化け、リアルだったり仕掛け沢山ありそうでヤだなぁ」
「大丈夫。園児相手ではなく、町内会の肝試しに場所を提供しただけらしいから、中高生以上しか狙わない」
「そういう問題じゃないと思うけど……」
「言っておくが、私が小さい頃に見た、留三郎さん作のお化けは、無駄にクォリティが高過ぎて私ですら
ビビった位だったぞ」
「……そうですか」
元拍手御礼
突貫で書いたので、断片ばかりですみませんでした
2011.9.3
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