基本的に、雷蔵は感情が表情に出易い性質のようだが、私がうんと幼い頃から、時折”パッと目を輝かせた
	次の瞬間に、痛みをこらえるような表情を一瞬だけ覗かせてから呆れる”という実に複雑な顔をすることが
	ある。それは、私が父親と同じような言動や行動を取った時に見せる表情で、理由は解っている。

	私を通して亡き父の幻が見えたことが嬉しくて、けれど私は父では無く、それなのに瓜二つなことに、最早
	呆れるしかない。おそらくそう思っているのだろう。

	現に、私の耳には入らないようにしつつも
	「こんな思いをする位なら、せめて同じ名前をつけなければ良かった」
	などと言っていたのを、偶然聞いてしまったこともある。
	しかも、当時まだ小学校にあがる前後だったので、純粋にショックが大きくて、雷蔵が嘆きをこぼしていた
	相手でもある勘右衛門に相談した所
	「雷蔵は、お前のこともお前のお父さんの事も大好きだから、辛いんだよ」
	そう返されたが、その時は意味が良く解らなかった。
	けれど、未だに時々同じような後悔をしているようだ。とこっそり教えられた時には、理解出来るように
	なっており、かといって今更変われないし、せめて周りに言われているように、生まれ変わりで、前世の
	記憶があるからこうなんだったら良かったが―実際は生まれ変わりかどうかは判らないが―、単に偶然
	生前の父親の言動をなぞるようなことばかりしているだけなんだ。そう思う度に、泣きたくすらなってくる。

	一番辛いのは雷蔵で、無念なのは父。それは解っている。
	事実はどうやったって変わらず、過ぎた時も、失われた命も戻らない。
	それでも、父さえ生きていたら、雷蔵も私も、こんなに苦しまないで済んだのに。
	そうやって、無責任に逝った父を責めたくなることが、たまにある。





オマケ
	三郎が雷蔵を名前で呼ぶから、鉢屋との混同が高くなってるんだと思うけど、1回も注意したこと無い
	どころか、一番最初にそう仕込んだの、実は雷蔵なんだよな。
	曰く
	「三郎に『母さん』とか呼ばれたくないかも」
	だそうだけど、その後も鉢屋路線に誘導しながら育ててたような覚えがあるから、今の三郎があんななのは、
	半分以上雷蔵の自業自得なんじゃないかなぁ。なんて、俺は思うんだけど。

	@尾浜氏



いきなり浮かんで、勢いで日記もどきに書いた小ネタです。 ……何で、たまに雷蔵がヤンデレ化するんだろう 2010.10.20