共通点は、男女2:2の4人兄妹の一員であることと、母親を物心つく前に亡くしていること。
	けれど、片や1歳足らずで母親は病死したものの、兄・姉・父・伯父・その他に可愛がられ、時に厳しく躾けられ
	ながらも天真爛漫に育った末っ子。片や元来少々身体の弱かったらしき母を生後間もなく亡くし、仕事を優先する
	父には半ば放置され、実母と信じていた継母に必死で愛されようと努力を重ねるも疎まれ、弟とは距離感が掴めず、
	いきなり出来た兄と妹の世話に追われた長女。と、その境遇は丸で違った。

	それでも、周囲に慈しまれのびのびと育った少年―小平太―は、誰かに愛され、認められ、褒められたかった
	少女―滝夜叉丸―を、手放しに評価した結果、考え無しの社会人1年生と、妙にプライドの高い受験生の間に
	子供が出来、兄妹一温厚な姉から、こっぴどくお叱りを受け、普段は昼行灯な兄に危うく殺されかけた。
	それが、中在家家の次男坊小平太と、斉藤家の母代わりな長女滝夜叉丸の、恋の行き着いた先だった。


	小平太の姉達は、同じ時期に2人揃ってシングルマザーになりかけ、下の姉伊作(当時短大卒業間際)だけは、紆余
	曲折と意地の張り合いを経て、どうにか長男数馬が生まれる前に結婚した。

	結果的にいわゆる出来婚をしたとはいえ、それは不運が重なった(普段からお互いに避妊していて、それでも失敗
	した)結果の伊作は、小〜高校の12年間保健委員を務め、更に不運による怪我などで、個人的にも保健室の常連で
	保健医とも親しかった。その為一般的な保健室に置かれている薬品は、名称から効能まで概ね把握しており、保健
	体育の教科書の内容もバッチリ全て理解し覚えている。
	そんな伊作に、小平太は上の姉仙蔵共々、中学生(もしかすると、小学生かもしれない)レベルの性教育な話から、
	堕胎に伴う危険や詳しい堕胎方法、避妊具の使用は性病及びエイズ等の感染防止にも効果的であることなどに到る
	まで、みっちりくどくど数時間に亘って程説教された。尚、2人まとめてだったのは

	「女の子の側からそういうことを言うのは、恥ずかしかったり面倒かもしれないけど、ちゃんと言わなきゃダメ
	 なんだよ。で、男の子側も、言われなくても自分からが相手の為のマナーなんだからね」

	との理由からのようだった。



	一方、滝夜叉丸の異母兄タカ丸は、普段は間延びしたしゃべり方に、赤茶の地毛を脱色して金髪にしており、
	髪型も服装も雰囲気も何となくチャラいハーフの優男だが、その所為で何かと絡まれることが多かったことと、
	滝夜叉丸と末妹喜八郎を守る為に、カポエラを修得し、キックボクシングも少々かじっているため、足技の
	破壊力が恐ろしいことになっていたりする。ちなみに何故足技ばかりを修得したかというと、
	「美容師だから、手を痛められないもん」
	とのことらしい。
	そして、微妙に距離があった異母弟三木ヱ門は、地味にシスコン疑惑があり、そうでなくても割合真面目な性質で
	ありながら、意外と過激な所もあったりするし、生後間もなくから滝夜叉丸に育てられた喜八郎は、滝夜叉丸を
	独占していないと気が済まない幼児だった。
	そんな訳で、妊娠の事実を告げた途端、タカ丸と三木ヱ門は揃ってキレて怒鳴り込みに行きかけ、よく解って
	いなかった喜八郎も
	「姉さんが、僕らのじゃなくなるってことだよ!」
	という三木ヱ門の、シスコン丸出しの一言を受けるなり、盛大に駄々をこねて抗議した。

	それでも、小平太が
	「早すぎたし、順番も違っちゃったけど、滝と家族になりたいから産んで」 
	とプロポーズし、父長次と伯父新野洋一に
	「絶対に返すから、出世払いで金貸して」
	などと頼み込み、兄姉にもアレコレ助力を頼み、斉藤家の面々にも
	「悪いのは全部おれで、おれに出来ることは何でもするし、滝と子供を絶対に守るんで、滝を下さい!……じゃ
	 なかった。滝を、ちょっとだけ分けて下さい!大事な妹で姉ちゃんな滝を、取る気はないから」
	と思い切り頭を下げた結果。長次からは
	「金は貸さないが、極力援助はする」
	新野にも
	「どうしても必要な分を、その都度貸すのは構わないでしょう」
	と返され、借金だけは認められなかったが、それ以外は(結婚まで揉めに揉めた)伊作の夫潮江文次郎に
	「何でそんなあっさり行くんだ」
	と詰め寄られる程に、すんなり認められた。

	そして、運良く妊娠が発覚したのが滝夜叉丸の本命の大学の受験前で、体育も卒業に必要な条件は既に満たして
	いて、予定日が夏だったので、卒業式の時点では体型の変化も僅かにしか現れていなかった為、高校の方へは
	親が出向いてキチンと話をつけ、無事卒業も叶った。


	そんなこんなで生まれた長男三之助を筆頭に、四郎兵衛、金吾の3人の息子を1年置きに産んだ後。滝夜叉丸は
	改めて大学を受験し、きっちり卒業までしたが、現在は自宅で「趣味の教室」的なものをいくつか開いている
	だけの、限りなく専業主婦のような暮らしをしている。
	けれど本人曰く

	「いざという時の為に、大学卒業資格が欲しかっただけです」

	とのことで、現役高校生時代には「とりあえず進学して、それから考える」程度のビジョンしか無かった為、
	結果として妊娠結婚によって一旦断念したことは、プラスに働いていなくもないのだという。




これまた、妊娠発覚風景とはちょっと違うような気はしますが、中在家さんちの次男夫婦はこんな経緯で。 ということで 2010.9.9