生まれて初めて
	「誕生日って祝ってもらえるものなんだ」
	と知ったのは、4歳の時。保育園のお誕生日会で、他の同じ月生まれの子と一緒くたにだけど
	祝ってもらった時だった。
	というか、自分の誕生日がいつなのか知ったのも、保育園の時だったと思う。

	いきなり母さんにおじさんの所に置き去りにされて、何故かそのまま育ててもらえることにはなったけど、
	おじさんは俺のことに特に興味が無かったようで、誕生日や血液型その他の俺に関する情報のほとんどは、
	保育園の伊作先生に訊かれて、初めて調べたらしい。

	俺が伊作先生の働いている保育園に居たのは3年前までで、伊作先生には俺よりも年上の子供も居るのに、
	おじさんはしぶとく狙っている。だからこそ、俺にはおじさんにはずっと内緒にしていることがある。




	「おはよう、尊ちゃん」
	「しろ。おはよ」

	しろは同じクラスの友達で、中在家四郎兵衛という。

	「尊ちゃん明後日が誕生日ってホント?」
	「そうだけど……」

	小学生になってからは、おじさんに祝ってもらったことが無いんで忘れかけていたけど、確かに明後日は
	俺の誕生日だ。だけど何でしろが知ってるんだ?

	「昨日うちに伊作おばさん来てて、聞いたんだ。何か欲しいものある?」
	「別に。毎年祝ってもらってすらいないし」
	「そっかぁ。じゃあ、僕自分で考えるから、楽しみにしててね」
	「うん。ありがとう」

	おじさんに絶対に言えないこと。それは、一番仲が良くて、時々泊まりで遊びに行ったりもしてる友達の
	しろんちのお父さんが、伊作先生の弟だってこと。しかもたまにしろんちで伊作先生に会うこともあるし、
	伊作先生としろのお母さんとか従姉妹達とで作ったお菓子を貰ったこともあるし、実は何度か伊作先生の
	うちでお泊り会をしたこともあったりする。あと、「友達んちのおばさんに、おすそわけで貰った」って
	言ったおかずのことも、嘘じゃないけどそのおばさんってのが伊作先生だってのは言っていない。
	



	今の所まだ、おじさんには「友達」の名前や家の場所なんかは訊かれて無いんで言ってないけど、その内
	訊かれたらバレると思う。でも、俺と伊作先生んちの子達が一緒にいるのを見掛けでもしない限り、俺の
	友達のことになんか興味を持ちそうもないから、当分バレないような気もする。


	バレたら色々面倒臭そうだし、伊作先生にも絶対迷惑がかかるから、俺が家を出る位まで、バレないで
	いてくれるといいんだけど。……というか、その前におじさんが伊作先生のことを諦めて欲しい。
	育ての親が、家事もしなくて、ちゃらんぽらんでストーカーなのに、俺は随分まともに育っているよな。
	そうやって自分で思ったら、何だか哀しくなってきた……
	



ふと尊ちゃんも天秤座な事を思い出したので 2009.9.26