(16年前/雷蔵目線)
妊娠がバレて、実家に軟禁されていた時のこと。
部屋の窓を叩く音が聞こえた気がした。でも、そんな所から訪ねて来るのは、三郎だけだけど、三郎は
もう居ないのに。そんな風に困惑していたら
「雷蔵〜。俺だよ、俺。尾浜勘右衛門。ここ安定悪いから、窓開けてくれると嬉しいな」
なんて、呑気な声が聞こえた。
「勘ちゃん? どうやって……」
「鉢屋直伝『ロミジュリごっこ』で(笑)」
それはつまり、家族に見つかり難い侵入方法とか、忍び込み又は抜け出し用のロープをこっそり隠して
あった木のことを、三郎から聞いていた。ってことで、三郎が勘ちゃんにそこまで話していたことにも、
少し驚いた。
「今日の目的は、『何があっても俺は雷蔵達の味方だよ』って言いに来ただけだから」
とりあえず、窓を開けて部屋に入れたら、勘ちゃんはそれだけ言って、その他は他愛の無い雑談だけで、
この日は帰って行った。
だけどその後も、ことあるごとに僕には内緒にされている筈の情報を教えてくれたり、元気付ける為か
特に用が無くても遊びに来てくれた。
そして、結局実家を出て大川のおじいちゃんちに身を寄せるようになった頃に、おじいちゃんと三郎両方から
頼まれて、そういう役目を引き受けてくれていたことを知った。
だけど、多分頼まれ無くても、勘ちゃんは自主的にそういうことをしてくれそうな人だって、ちゃんと
知ってるからね。
勘ちゃんまみれ拍手お礼家族モノ編
お互い、恋愛感情じゃないけど大事な相手
ってことで
2010.10.11
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