兵助その1 「へーすけにぃちゃん。コレあげる」 「いつもお迎えご苦労様、兵助くん。それ、工作の時間に作ったカーネーションなんだ。貰ってあげて」 「ああ、母の日の」 「そういうこと。『お母さんが居ない子は、お父さんとかおばあちゃんとか、お母さんの代わりの人に 作ろうね』って言ったら、孫次郎くんは迷わず兵助くんの名前を挙げたんだよ」 「別に構わないんですけど、伊作先生はそこに違和感は感じなかったんですか?」 「うん。まったく。だって、一昨年までは伊助くんが同じこと言ってたし」 「はぁ、そうですか」 「あ。そうだ。似顔絵もあるんだよ。ね? 孫次郎」 「うん! お家帰ったらあげるね」 「ああ。ありがとう、孫次郎」 兵助その2 「ハチ」 「何だ兵助?」 「孫次郎、伊助、三郎次、一平、虎若、三治郎…百歩譲って孫兵までもアリだとしよう。けどな、 お前から母の日のカーネーション貰ういわれは無い!」 「えー。何で孫兵はアリで、俺はナシなんだよ」 「同い年の奴から母親扱いされてたまるかっ」 「しかし、ほら、母の日には子供達と一緒に、夫が妻に何か贈ったりしますから」 「孫兵兄ちゃん! それ何か違う!」 「え? 違うの? 僕はそれであってると思う」 「三ちゃん……」 「あげないからね!」 仙蔵さんちの場合 「母さん」 「どうした藤内?」 「今日って、母の日ですよね?」 「そうだが、それがどうした」 「なのに、何で兵太夫達は、俺に気を使っているんでしょうかね」 「ああ。それは私が、『普段母親がすべき役割を果たしているのは藤内なのだから、そちらを労え』と 言ったからだ」 「……そうですか。ありがとうございます?」 (なんだろうな。この、何とも言えない、イマイチ嬉しいと思えない感じは) 戻 |