留三郎さんは、小学5年生と3人の保育園児の4人の息子達のお父さんで、下のおチビちゃんトリオは、
お父さんとお兄ちゃんの作兵衛くんのことが大好きです。
特に、3人の中では一番お兄ちゃんで頑張り屋さんの平太くん(5)の最近の口癖は、「ぼくもおてつらいします」
で、日々何かしらお父さん達の力になりたがっており、下の2人も一緒になってお手伝いをしたがります。
そんな訳で、年末に留三郎さんと作兵衛くんとで手分けして大掃除をする際にも、もちろん「ぼく(たち)もやる!」
と言い出しましたが、作兵衛くんは
(コイツらに手伝わせたら、片付ける前よりも散らかって汚くなるに違いないだろ)
と反対しました。しかし、留三郎さんは伊達に4人兄妹の長男(しかも弟妹がアレ)ではないので、おチビちゃん達の
自尊心を傷付けず、かつ邪魔にならないようにする術はよーく解っていて、にっこり笑って
「それじゃ、お前達は自分達の部屋のお片付けをしような」
と、たとえ片付かなかろうが問題はなく、他の場所の掃除の邪魔にもならない、子供部屋をおチビちゃん達の
担当として割り振り、他の場所は作兵衛くんと手分けして片付け始めました。
とはいえ、普段からマメに掃除を行なっているので、冷蔵庫の後ろや天井や棚の上や窓ガラスなどの普段は
掃除しない所の掃除や、換気扇や鍋を磨くなどのめんどくさい内容が中心でした。
というわけで、留三郎さんが換気扇の油汚れと格闘し、作兵衛くんが椅子に乗って天井のホコリを落としている
最中に、来客がありました。
手が洗剤としぶとい油汚れまみれの留三郎さんが手を洗っている間に、作兵衛くんが応対したその来客は……
「こんにちはぁ。コレ、父さんから、もらいもののおすそわけです」
「ああ、どうも」
ニコニコ笑いながら、有名洋菓子店の紙袋を差し出したのは、留三郎さんの亡くなった奥様の弟の秀作さんでした。
わざわざお裾分けを届けに来た義弟を、無下に追い返すわけにもいかないので、ひとまず部屋の中に通し、お茶の
一杯も飲んだら帰ってくれないかと留三郎さんも作兵衛くんも思いました。しかし、空気が読めず、やる気だけは
人一倍で、悪気はないけど使えない所か手間を増やすのが特徴な秀作さんは、案の定
「今日大掃除してるんですね。僕もお手伝いしますよ」
と、すばらしく有難迷惑な申し出をしてくれました。
これが、不運娘な伊作さんやクラッシャーの小平太さんなどの実の弟妹ならば、留三郎さんも遠慮なく断れますが、
秀作さんは義理の弟ですし、「馬鹿な子ほど可愛い」のは、身を持ってよーーーっく知っているので、とりあえず
比較的簡単で被害の出なそうな、窓と食器棚のガラス磨きを任せてみましたが、洗剤を出し過ぎて泡は垂れてるわ、
隅の方まで拭けてないわ、食器を落として割りそうになるわで、目を離せず自分の作業が全く進まなかったので、
「ご無沙汰しております、お義父さん。今日は結構なものを戴き、ありがとうございます。……えーと、それで
ですね、その、今うち大掃除なんですよ」
「……。解りました。お邪魔させてすみませんね」
ということで、義父の吉野作蔵さんに電話をし、適当な理由を作って呼び戻してもらいました。
そして、秀作さんのやりかけの場所も含め家中ピカピカになった頃に、途中でお昼寝をしていたおチビちゃん達が
起きて来たので、彼らの成果を見に行くと、思いの外ちゃんとお片付が出来ていたので目一杯褒めてやりましたが、
秀作さん似の下2人を、その持ち味を失わせずに、かつ空気の読める子に育てられるかが今後の課題なんだよな。
と、留三郎さんはほんの少し気が重くなったのでした。
年末企画 おりづる様リク
「ありがたくないお手伝い」との指定で、用具一家にはちょうど誰よりも使えない身内がいたので(笑)
(ちなみに秀作くんは32歳独身のプーorフリーターです)
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