滝夜叉丸の高校及びその下校中では幼児についての情報を得られなかったが、
帰宅して、情報収集を頼んであった若手に確認した所
・迷子の捜索願は出ていない
・小平太と付き合っていた女性は調べが付いたが、全員違った
との報告に混じって、一つだけ有力情報があった。
「薬屋の小僧が、確信は持てないが心当たりがある。とのことっス」
その情報を受け、幼児と小平太を連れて川西薬局に向かい、店番をしていた息子の左近に面通しをさせると
「多分ですけど、この間町外れのアパートに越してきた、時友さんの所の子だと思います」
幼児をよく見てから、左近はおずおずと意見を述べた。
「間違いは無いか?」
「絶対に。とは言い切れませんが、しょっちゅう不自然な痣や怪我を作ってうちに来ていた奥さんの
連れていた子に似ています」
答えてから、自分が昼間学校に行っている間に店番をしている母親にも確認を取ると、肯定の返事が返って来た。
「名前はわかるか?」
「確か”しろ”とか呼ばれてました」
丸一日近く黙ったままなので、名前も何も本人からは訊き出せなかったが、試しに滝夜叉丸がその名で
小平太に抱かれていた幼児を呼んでみると、微かな返事らしきものが返って来た。
「しろ? しろちゃん?」
「あい」
「このお兄ちゃんのことは知ってるか?」
ついでに、左近を指して確認をしてみると、幼児は一瞬考えるような仕草をしてから頷いた。
「…あたりのようだな。助かった。ついでに、そのアパートの場所も、わかるなら教えて欲しい」
礼代わりにいくつか日用品(洗剤とか生ゴミネット)を買いながら訊ねると、左近は
「流石に部屋番号は知りませんが」
とアパート名だけを口にした。
薬局をあとにして、教えられたアパートに向かう前に、滝夜叉丸が町役場と警察にも得た情報を伝えたのは、
「嫌な予感がした」
としか言いようがないが、結果的にその選択は正しかった。
(注意! この先暗くて重めですほのぼのの空気を壊したくない方は飛ばしてください ※読まなくてもつながりはします)
以下反転↓
何度チャイムを鳴らしドアをたたいても反応が無かったため、管理人に頼んで合鍵で開けてもらい部屋の
中に入ったのは、小平太と念の為呼んだ警察の潮江文次郎で、滝夜叉丸は幼児を抱いて外で待機していた。
室内で二人が見たものは、二つの変死体。
窓などがキッチリ閉められていたことから、ガスによる心中の可能性を考えた文次郎がすぐさま窓を開け放ち
ガスの元栓を確認すると、案の定ソレは故意に外され開いていた。
その後の調べでわかったことは、夫の家庭内暴力に耐えかねた妻が無理心中を図り、その際に幼い息子
四郎兵衛を巻き込むのだけは思いとどまり外に出した。
との、妻の遺書とも言えないメモ書きが見つかった程度だった。
身元は判明したが親を亡くし親戚にも引き取りをためらわれた幼児―四郎兵衛―は、協議の末、七松組で
養育されることになった。
そうして、今に到っている。
基本ほのぼの路線の中で、実は結構暗い設定になっているのが、滝としろちゃんなのです。(滝の事情もその内書きます)
でも、滝は過去を振り切っていますし、しろちゃんは覚えていません。
ということで、今後にはあまり引きずっていません。
こういう話になってしまう辺りに、叶の「嫌なリアリティ」の習性が出ております。
気分を害された方が居たら、本当に申し訳ございません
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