今日の夕飯も押し付けられたというか、有給を取っている四男―ジャックというらしい―の代わりに料理を
	教えるのも勝手に親父達が引き受けて来たので、その時に作ったやつを夕飯に回す。ということで、レイが
	昼寝をしている間に買い出しに行くことにした。……仕事をしている連中の邪魔をしないように、親父達に
	荷物持ちをされることにしたのが、今回の目的の1つらしい「親子の交流」に該当しそうなのが非常に嫌
	なんだが、話を聞いて志願してきた参加者が思いの外多かったとかで、俺―と、デレて若干協力的になった
	ゼロ―だけでは持てない量なんだから仕方ない。


	「で、何作ることにしたの尊?」
	「カレー。市販のルー使えば、失敗する方が難しいし、一気に大量に作れるから」

	何しろ、「味付けを間違えたと思ったら、カレー粉をぶち込んでおけ」は、料理下手向けの有名な裏技だしな。

	「ふーん。けど、多分カレールー売って無いと思うよ」
	「一から作るのは、大分骨が折れると思うが?」

	げ。ここが、文化や何かが色々と違う場所だってのを失念してた。しかも、こないだメビウスから「地球で初めて
	食べて感動した」ってな話を聞いた覚えもあるような。
	そうすると、献立を変えるかそれとも……

	「一旦向こう戻って、買って来る。もしくは、俺を一旦帰す。ってのはできるのか?」

	この際もう、方法なんかはどうでもいいが、無駄に頻繁に行き来してんだから、それ位この妖怪共には軽いだろ。

	「出来なくはないけど、そこまで細かく時間の調整はできないから、間に合わない可能性もあるよ?」
	「そうしたら別のモノを作るから、ひとまず頼んだ」

	委託しながら、しばらくの間は良い厄介払いにもなって一石二鳥だと思ったのに、予想外にさっさと帰って
	きやがった。けど、まぁ、間に合ってよかったと思うことにしよう。


						


	とまぁ、そんなこんなで材料は揃い、教わる側の人数が増えたからと、昨日も手伝ってくれたマンが講師側の
	助手をしてくれることになったが、自主的に申し出てくれた訳ではなく、ゾフィーとセブンにまで「やれ」と
	言われたらしい。……まぁ、参加者側にレイとゼロがいるもんな。

	「さて、と。始める前に、あそこのカメラ構えた連中追い出しますか」
	「そうだね。……邪魔だから、10秒以内に立ち去らないと、スペシウム光線撃ちますよ」

	面白がっている妖怪共+ゾフィーと、親馬鹿全開のセブンに向かってマンが冷やかな目を向けると、親父が抗議の
	声を挙げた。

	「えー。私とアマノちゃんは、お姫様に記録係頼まれたんだけど」

	姫さんてのは、
	「楽しそうだし、少し位は料理も出来ないと」
	とか言って参加してる、ユリアンとかいうやつのことだな。てことは、誰かに頑張っている自分の姿を見せたい。
	ってのも多少あるだろうが、腐女子だって聞いてるんで、ネタ集めの為だと解釈していいだろう。それはマンも
	解っているようだが、少し悩んで許可を出したのは、やっぱ姫さんだからか?

	「ただし、撮影役は……ダイナ。頼んでいいかな?」
	「俺? 別に良いけど」

	軽く参加者を見回してマンは、「折角なんで、地球の料理を作って食うのも面白そうな気がしたから」という
	理由で参加していた中の1人のダイナを指名した。まぁ、妥当な人選だな。何しろ、参加者には
	「21にねだられて……」
	とかいう理由のネオスとやら―ちなみに「21」てのが、「ウルトラの鉢屋」なやつだそうだ―や、
	「料理覚えたら、セブンとかの役に立つ?」
	のレイや、その付き添いを父親から頼まれただけだと言い訳しているゼロもいるわけだから、妖怪共だと姫さんが
	喜びそうなやり取りや絵面ばっか撮りそうだけど、単純馬鹿っぽいダイナだったら、健全な絵しか撮らないだろ。

	そう、思ったんだが、よく見ていたら姫さんは料理の手順のついでに、オイシイ光景を目にしてはメモってたし、
	他の連中の作業中の雑談には、何か惚気や恋愛相談っぽいものがちょいちょい混じっているように聞こえた気が
	する。更に試食を兼ねての大人数での夕飯の時は、若干居心地が悪い光景があちこちに見えた。ってな表現で、
	概ね察して欲しいが、あえて少し挙げるなら――

							
							

	「あまり上手く出来なかったんですけれど……」
	「そんなこと無いよ。初めての割によく出来ていて、美味しいよ」
	なんて、一般的なカップルのようなやり取りを恋人―土井半助と似た雰囲気の、教師もしている80とかいう奴―と
	交わしながらも、目聡くネタ集めをしていたユリアン。

	ひたすらカレーについて熱く語っているメビウスと、それにうんざりしながらも、料理中のことなんかを訊き
	出して、メビウスが切った野菜などを探しているヒカリ。

	普段からジャックに料理教わっていて、一見上手いのに味付けなどが壊滅的におかしいらしいガイアは、流石に
	カレーは成功したのにサラダが酷い味になっていたとかで、感心された次の瞬間に眉をひそめられてむくれて
	いたが、俺にはアレは痴話げんかにしか見えなかった。

	「お料理教室、混じりたかったです〜」
	とか言ってるコスモスは、多分渋面のジャスティスに反対されたか嫌そうな顔されて、参加は止めたんだろうな。

	ゼロとレイをべた褒めしながらお代りまでしているセブンと、デレ気味のゼロに、嬉しそうに頭を撫でられている
	レイは、ほほえましい親子の光景に見えなくも無かったが、ゼロ並を期待しているウチの親父はウザかった。

							


	その他にも、付き合ってんだか行きすぎた友情もしくは兄弟愛なんだか、はたまた素でズレてんだかしらないが、
	色々微妙なやり取りも見えたが、とりあえず放っておくことにした。
	ちなみに俺がこんなに全体的に見て知ってんのは、給食当番か食堂のおばちゃんポジションで配膳してたからだ。



続く


姉さんのネタの続きを受けての続きというか何というか…… とりあえず僕が予定してたネタはこんなもんです 続いちゃった(笑) 2010.5.4