体育祭で、障害物借り物パン食い競争―発案者はどうも三郎らしい―で1位を獲ったり、選抜リレーの
アンカーで3人抜いて2位になったり、応援団をやったりと活躍したら、彼女が出来た。
といっても、
「カッコ良かったから、付き合ってあげてもいいよ」
ってな言い方は気になるし、染めた茶髪や最近の流行りのメイクは正直好きじゃなかった―俺の
好みは、黒髪が綺麗で、色白でアイメイク無しで目がでかくてまつげも長い和風美人だ―けども、
折角の機会を逃すのはもったいないんで付き合い始めただけなんだが。
付き合い始めてからは、彼女が弁当を作ってくれることになったんで、兵助に「俺の分は要らない」
って伝えたんだが、彼女の作る弁当は、弁当箱が小さいし見た目は綺麗だが腹に溜まんないような
おかずばかりだった。しかも、卵焼きが甘い。俺は卵焼きはしょっぱくて、ついでにじゃことか
ネギや何か具が入ってる方が好きなんだけどな。
それでも初めの内は、一応文句は言わずに、足りない分はこっそり購買でパンを買っていた。
そしたら、それがバレて文句を言われたんで、
「あれじゃ俺には足りないし、もっと肉系のがっつりしたおかずが欲しい」
と伝えたら、量も肉系のおかずも増えたが、今度は味付けが濃過ぎるし、より一層卵焼きは甘く
なった気がした。というか、よく見ると日に日に冷凍や出来合いの総菜の割合が高くなっていて、
卵焼きは寿司のネタっぽい厚焼き卵なことに気付いた。
確かその頃から、バイト前用の弁当を兵助が持たせてくれるようになったんだった気がする。
そのおかげで購買のパン代という無駄な出費は無くなったし、量も足りるようになったんで、彼女の
弁当への不満も減った。
出費と言えば、付き合っているんだから当然と言えば当然かもしれないが、休みの日にデートや、
学校帰りに遊びに行かないかと誘われることも結構あったが、休日はもちろん、平日も半分位は
バイトがある。
しかも遊ぶ為じゃなく家の為に稼いでいるから、金のかかるような所へ遊びに行く余裕なんか、
殆どない。そう再三言っても解ってくれず、挙句の果てには
「あたしのこと、大事じゃないの!?」
とまで言い出した。……一応大事な彼女だけど、それとこれとは別問題じゃないのか?
兵助んとこの半助兄ちゃんは、生活費のために働きづめで、休みの日は1日中寝てたりするけど、
弟達のことをすごく大事にしてるし、慕われてるぞ。
あとは、今考えると一番大きい転機は、付き合いだして2ヶ月目位に、彼女が俺んちに遊びに
来た時かもしれない。
その日俺は、昼間はバイトがあったんで、いつも通り家事と弟達を兵助に任せて出掛けていた。
それを知らずに訪ねて来た彼女は、勝手に家に上がって、兵助と顔を合わせるなり
「何で居るのよ!」
と食って掛ったらしい。けれども兵助は特に気分を害した様子もなく、
「同じマンションで、うちの弟とハチの弟が友達だから、たまに下の子達の面倒を看ているんだ」
みたいに、彼女の気に障らないよう本当のことを伏せて答えた。と、孫兵や三治郎辺りから聞いた。
けど、よく考えてみると姦し娘共が散々騒いでたんで、ウチの弟達の子守りと弁当作りを兵助が
やってることは、彼女の耳にも入ってたんじゃないかと、後から気が付いた。
とかまぁ、そんなこんなで、
「もう、土井くんと比べられんのは嫌!」
てな理由で一方的に振られたのは、クリスマスの2週間ほど前のことだった。
去年から書こうと思いながら、時期を逃していたものをようやく
ハチの好みの女の子像は、無意識ですよ(笑)
2009.10.09
戻