パニくる俺の目の前で、三波先生―というべきか藤内というべきか―と孫兵は、何か良い感じの空気
		醸してるし、左門と三之助は

		「そっか。藤内の彼氏は孫兵か」
		「今度遊びに行ってもいいか?」

		とか、さっさと納得した上馴染んでやがる。……何か? これが記憶を持ってる年月の差か? これ位切り
		替えが早くないと、やっていけないってことなのか??


								△


		「ああ、そうだお前ら。……校内及び、学校絡みの場所や状況で、『藤内』呼びをしたり、タメ口を
		 利いたりしたら、承知しないからね」

		ひとまず爬虫類館を出て、残りの場所―キリンやタヌキを避けたのは、前世の後輩が担当で居るから
		だったらしい―に向かう直前。ニッコリと、「三波先生」口調で俺達に釘を刺した藤内は、何となく
		作法委員オーラを漂わせていて、俺はともかく左門と三之助も、迂闊に気安い態度はとれなそうな
		感じがした。



		その後。俺らが卒業するまで藤内は、学校ではキッチリ「三波先生」としての態度を貫き、一、二度家に
		遊びに行った時には元友人として接してはくれたが、やっぱり何となく違和感があった。
		そして、あの脅しめいた注意があったからか、左門と三之助も、三波先生を「藤内」と呼ぶことはしなかったが、
		時々タメ口を利いて叱られているのは目にした。けどよく考えてみると、奴らは元々教師をちゃん付けや
		あだ名で呼んで叱られていたような……

		その辺りのことについて、何となく一番解ってくれそうな気がした金吾に相談に行ってみたことがある。
		けどその時金吾は、ハッキリと

		「若干極端に走ってはいるけど、正しいのは三波さん達の方だと、俺は思う」

		と言い切った。

		「俺も、姉さんが滝夜叉丸先輩なのは解ってて、かつて先輩のことを尊敬していたのは事実だけど、姉さんを
		 慕う気持ちは違う。それに、綾や時友先輩達も俺を『金吾』って呼ぶけど、かつての『皆本金吾』と
		 今の『平野金吾』は似て非なる者だって、キチンと解っている筈だ。……多分三之助達も、アレで
		 どこかでちゃんと線引きはしていると思う。だから、割り切れ」

		続けてそう言われはしたが、かなり難易度が高い気がするのは、俺の、生まれ変わっても変わらなかった
		性質の所為なんだろうか……





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