義理のだけど親子になってから、改めて観察した滝は、前世と根っこは同じな感じがするけど、何となく
	落ち着て性格が丸くなっているような気がして、それが前世の記憶がないということかと思って少し寂しく
	なったけど、金吾が言うには、単に大人になっただけで、十代の頃は殆どアノ滝夜叉丸だったらしい。
	でも僕は、そのほとんど「平滝夜叉丸」だった滝のことは知らないし、もうそこまで自己中で自慢しいな滝を
	見ることは、多分出来ない。そう思ったら、滝達と同じ世代に生まれたかったと、歯痒く感じた。

	だけどタカ丸さんと再会して、同じ高校に通うことが決まり
	「また、二歳違いだけど同級生ですね」
	とメールを送った瞬間に、気がついた。僕は、タカ丸さんの為にこの年に生まれたんだ。

	タカ丸さんは、僕の二歳上で、だけど同級生で、僕らに逢うまで、僕らの世界に何の関わりも無かった。
	それからご実家が髪結い―今世では美容院だけど―なことも、性格も見た目も、殆ど変わっていない。
	前世でも、きっかけは一年は組で、その後もあの子達と親しかったし、特に伊助は同じ火薬委員でもあった。
	だけど、タカ丸さんが編入してきたのは僕達の学年で、クラスは違ったけど、何だかんだ言っても本当に優秀
	だった滝をタカ丸さんが頼って来ることもあったし、僕らは周りから浮いていたけど、だからこそ他の連中と
	違ってタカ丸さんを見下したりはしなかったから、一緒に行動することは多かった。
	だから、タカ丸さんは一年生ではなくて、僕達の仲間で友達。それが、金吾や伊助とばかり、親しくしている
	ように見えたことにイラついた原因なんだ。
	そう気がついて、一応タカ丸さん本人にも
	「もっと僕の方を見て下さい」
	と言ってみたら、「告白みたいだねぇ」と苦笑された。

	「別に、それでも良いですよ。僕はタカ丸さんの事も好きですし、今は男女なので、その方が一緒にいて自然に
	 見えますし」

	そう返したら、一旦は振られた。曰く

	「俺は、昔っから綾ちゃんの事、そういう意味でじゃないかもしれないけど気になってたから、そんな風に
	 言われても嬉しくない」

	だそうだ。……大方、前世では髪が気になってただけだと思うけど、そんな風に言われてしまったら、それ
	以上は何も言えない。
	だけど、いつか「綾部喜八郎」じゃなくて「平野綾」として、この人を好きになれたらいいだろうな。少しだけ、
	そんな思いがよぎった。




	貴方が、ずっと前世の記憶が本物である確証をくれる誰かを探していたように、僕もきっと貴方を探していた
	んです。貴方と再び出会ったことで、僕はようやく前世と関係の無い、自分の人生を歩む気になれました。

	だから、もう少しだけ待っていてくださいね。




2010.9.20



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