ある時、ダイナが友人から旅行の土産につまみっぽい名産品を、ガイアが教授の手伝いをしたお駄賃として
	お歳暮の銘酒を分けてもらったので、近い内に飲み会でもやろうかと思っている。という話を、公園でレイを
	遊ばせていたセブンに挨拶ついでにした所、他の兄弟にもその話が伝わり、主にエース辺りが興味を持った為、
	つまみと酒の追加は用意するので、彼らと兄弟とで警備隊の食堂で飲まないかという話になりました。


	そんな訳で、ついでにゾフィーに用があって警備隊を訪れていたヒカリも誘った飲み会が始まったばかりの頃に、
	メビウスが何となくゾフィー達の出会いについて訊いた所、ゾフィーの初恋はヒカリだったというになり、
	「だって、小さい頃のヒカリちゃんは、すっっごい美少女だったんだよ」
	と、ゾフィーが言い訳になっていない言い訳をしたものの誰も信用しなかったため、

	「タロウ! 父の所から、秘蔵アルバム全部持って来て。場所は解るよね?」
	「解りますけど、全部だと僕一人じゃ無理です」

	既に大半が結構いい年な為に構ってもらえず拗ねがちな父の部屋には、息子達の写真やビデオが大量に集められて
	おり、その中には引き取る前のアルバムなども含まれている上、厳選した秘蔵アルバム集もありますが、それだけ
	でも結構な冊数だったりします。

	「じゃあ、エースも」
	「えぇー。ゾフィー兄が自分で行けよ」
	「運ぶだけなら、ダイナ手伝えば? その間に、僕らもアルバム取りに行ってくるから」
	「おー、解ったー」
	「それじゃ、俺もゼロとレイのを持ってくるか」
	「何で持ってんだよ親父!?」
	「ん。施設から送ってもらっていたからだぞ」

	とまぁそんな訳で、何故かアルバムを肴に飲むことになった訳ですが

	「うーわー、ホントにヒカリさん美少女」
	「ねー。だから言っただろ? 昔はこんな、愛想ナシの三白眼じゃなかったんだよ」
	「お前も、ガキの頃は見てくれだけは賢そうだった……というか、年々ダメになっているよな」
	「……もしかして、この美少女ヒカリさんと一緒に写っているのが、小さい頃のゾフィー兄さん?」
	「確かにまぁ、一見賢そうには見えるな」

	そんな風に、ゾフィーの当初の目的は果たされ、ついでにゾフィー自身の幼少期が話題になりかけたものの

	「美少女っていうなら、ティガもかなり可愛かったですよ」
	「まぁ、今も美人だけどな」
	「……ガイアもダイナも黙って」

	などとすぐに話題は移って行き

	「あー、コレ、今のレイ位の時のタロウか。この頃は、私に一番懐いてたのになぁ」
	「何かエースさんの小さい頃の写真って、ダイナの小さい頃のと似てますね」
	「それってつまり、どっちも生傷の絶えないやんちゃ坊主だった。ってことだよね」
	「ジャック兄さんの写真は無いんですか?」
	「無いことはないと思うけど、引き取られた時にはもう中学生だったし、元々実の親があまり写真を撮らない人
	 だったようだからね」
	「アレ? セブン兄さんって、マン兄さんと一緒に、中学に上がる前位に引き取られたんですよね? だけど
	 このゾフィー兄さんと一緒の写真、もっと小さい頃のじゃ無いですか?」
	「ああ。セブンの親御さんは父の古い知り合いだったから、小さい頃に遊びに来たことがあるんだ」
	「……なぁ、親父や他の奴らはガキの頃の写真があるのに、何でマンのは無いんだ?」

	疑問や感想をぶつけ合いながらワイワイと写真を見ている中、ゾフィーなどにつまみをねだられて作っていた
	所為であまり輪に混じっていないマンの、幼少期の写真が無いことに気付いたのはゼロでした。

	「えーと。それは……」
	「ゼロ、それ一応禁句」

	単に気になったから訊いてみただけなのに、周り中に気まずそうな顔をされたゼロがキレそうになると、静かに

	「実の親のことは覚えていないような年から施設に居て、一応この家に引き取られる時に先生方が写真を探して
	 下さったけど、セブンと一緒に写っている数年分しか見つからなかったからだよ」

	と、微妙に重い説明をサラリと口にしたのはマン本人でした。

	「この家に来るまでのマンは、レイっぽかったもんなぁ」
	「は?」
	「確かに面会について行った時に見た感じでは、セブンに誘われない限り、他の子と遊んだりしないで、一人で
	 本読んだりしてたよねぇ」

	今の、それなりに人当たりの良いマンしか知らない面子からすると衝撃的な過去を明かしたのは、セブンと
	ゾフィーで、

	「その後、この馬鹿が買った恨みのとばっちりで売られたケンカを、ことごとく買っていた時期はお前と似て
	 いなくもないかもな、ゼロ」

	などと付け加えたのはヒカリでした。

	「ああ。マン兄が元ヤンて噂は、そこから来てたんだ」
	「というか、ゾフィー兄さんが買った恨みって何ですか」

	納得するように頷くエースと、怪訝そうな顔をしたタロウに、アラフォー共は

	「うん。まぁ、私にもちょっと粋がってヤンチャしてた時期があったんだけど、大半はヒカリちゃんも共犯でしょー」
	「知らん。少なくとも俺は名乗っていないし、顔も出していない」
	「そこがずるいんだよねぇ、ヒカリちゃん」

	そんな、しょうも無い言い合いを始めたので放っておくことにしましたが

	「でもさ、だったらセブン兄も、マン兄と一緒にケンカ売られたりしてなかったのか?」
	「……私は、売られたケンカは全て買って、買った以上は殆ど負けなかった所為でいつの間にか『番長』とか
	 言われていたけど、本当に性質が悪かったのは、表向き大人しそうにしていたセブンの方だから」

	その詳細については、あまり聞かない方がいいようなことをしていたようです。ということで、何か別の話題に
	移ろうとした矢先

	「そう言えば、ティガも高校の頃にちょっとグレてたよね」
	「別に、僕は進学校で要領良く優等生面して、たまにカツアゲしていた位だよ。……ガイアも、アノ頃爆弾作りに
	 凝っていなかったっけ?」

	サクッとそんな物騒なやり取りを、一見大人しそうな綺麗所2人が交わしていたので、そっちも聞かなかった
	ことにして、以降は当たり障りのない話ばかりをしていました。


	その後、途中で「もう遅いから帰って寝ろ」とゼロを帰そうとしたら、「メビウスは良いのかよ」と返され
	しばし押し問答になったり、当のメビウスはジュースやお茶しか飲んでいないけれど酒臭さに酔って眠って
	しまっていたり、片っ端から飲み比べを挑んで騒いだ挙句エースがつぶれたり、据わった目でヒカリに延々
	絡んだ挙句にタロウがつぶれたり、ゾフィーやセブンが弟達や息子の写真を見ながら「懐かしい」を連呼して
	「オッサンくさい」と言われまくったり、その2人の過去語りに付き合わされ、思い切り飲まされたヒカリや
	マンなども、お開きになる頃には寝るまではいかないものの、足取りがおぼつかない感じになっていました。
	そこで、酔いは回っているものの辛うじて意識のハッキリしていた残りのメンバーで、手分けして寮の部屋に
	連れて行ったり片付けをし、ガイアとアグルも多少酔いが回っているので自宅まで帰るのは流石に危ない気が
	したので、寮の空き部屋に泊まらせてもらうことにしたのですが、

	「……何してるの、ダイナ?」

	片付けを終えたガイアの目に入ったのは、「明日1限からだから」と言ってノンアルコールのものばかり飲んで
	いた筈が、間違ってお酒入りを渡されていた為につぶれたティガを背負おうとしている、ダイナの姿でした。

	「んー。俺そんな酔って無いから、帰ろうかと思って。……ほら、ちゃんとティガもいるし」
	「意識のないティガ連れてても、何の意味も無いでしょ。絶っ対迷子になった挙句に、どこかのゴミ捨て場とかで
	 目が覚めて怒られる羽目になるだけだろうから、大人しく君らも泊めてもらいな」

	迷子のダイナは、基本的にティガが居れば迷わないようですが、意識の無い酔っ払いでは何の効果もありません。
	それでも大真面目にそんなことを言い出すのは、酔っている証拠か天然か……。ていうか、間違えてお酒渡して
	たのって、ダイナだよね。などと思って止めたというガイアに、翌朝ティガは本気でお礼を言いながらダイナの
	頭を力の限り張り倒しましたとさ。




姉さん達と遊んだ時にしゃべった内容を、無理矢理全部盛り込んだ(筈)の飲み会話。 ちなみにレイちゃんは、母の所に預けてあるのではないかと。 2010.5.27 証拠写真