とある星人との戦闘中。時空を歪ます能力を持っていたソイツに飛ばされたのは、地球とよく似た星だった。

「あん? どこだぁここ」
「随分と、平和そうな世界ですね」
『光の国やエスメラルダ星や、アヌーとも雰囲気が違うな』
『……』

地球の市街地を実際に見たことがあるのは俺だけだが、

「おや……」
「はいストッープ!」

親父! と呼びながら駆け寄ろうとした俺を止めたのは、

「アスカ?」

前に共闘した時に会ったことのある、ダイナの人間態というか半身で、
「あー、ちょっーとめんどくさいとこに飛ばされたみたいだね。これは、私が語りかけるより、ダイナ任せた☆」
と、ノアにこの世界のアスカと意識をリンクさせられたダイナらしかった。
「『この世界』ってことは、ここも違う宇宙なのか?」
「面倒な所とは、どういった意味なのでしょうか?」
「てか、ダイナとアスカって別人なのか?」
「んー。簡単に言うと、『ウルトラマン』は架空のものだった地球。ようはまぁ、『パラレルワールド』ってやつだな」

詳しい経緯は『ウルトラ8兄弟』を見てくれ。ってことで省いて、とりあえずこの世界には、別の次元で
ウルトラマンだった記憶を持っている、親父達やダイナ達が居るらしい。

「けどな、この世界のセブンさんてかダンさんとこには子供居ないんで、お前が出てったらスゲェめんどくさい
ことになると思うんだ」

後から、記憶の無い親父達に「兄さん!」と尻尾振った犬のように突撃してったメビウスことミライを止めるのに
散々苦労したダイゴが話してくれた、俺が同じことをした場合に予想される展開は、

「まず、アンヌさんが『どういうことなの、ダン?』と眉をひそめて問い詰め始め、2時間もしない内に他の
 皆さんにも騒動が伝わり、アキコさん、アキさん、夕子さんだけでなく、下手したらレナや七海ちゃんや
 メグちゃんもアンヌさんの味方について、モロボシさんを取り囲んで尋問。って流れになるだろうね。そして、
 ハヤタさんは『心当たりが1つも無い。なんて訳はないだろうしねぇ』みたいなことを言いながら愉しそうに
 眺めていて、郷さんは『何にせよ自業自得でしょうね』と突き放し、北斗さんは『俺は兄さんより、夕子達の
 味方だ』とか言って逃げそう、かな」
「だなぁ。しかも、よりによってタイガだしな。今のゼロ」
「ああ、うん。こんなチャラいアラサー男が、『オヤジ〜』とか言って寄って来たら、より一層白い目で
 見られそうだよね、ダンさん」

うるせぇ我夢! と言い掛けたが、確かに自分でも、せめてランやいつだったかのシン(仮)辺りだったらまだしも、
タイガで親子の初対面はキツイと思った。
てか、他のナイン以外の3人も誰かモデルが居んのかよくわかんねぇ若い地球人姿になってっけど、何で俺は
タイガで、ナインは幼児ってか赤ん坊になってんだよ。

「おめぇは、一応今んところ一番最近だからじゃねぇの」
「そしてナインは、精神年齢で言えば、まだこの位だからでしょうね」
『私達の姿から推測するに、ゼロ以外は精神年齢に応じた外見になっているようだからな』

俺の疑問は、そんな感じで瞬殺された。



時を少し戻して。ダイナなアスカは、自分だけじゃ俺らを持て余すだろうとさっさと判断して、ティガこと
ダイゴと、ガイアこと我夢を呼び出した。んで、立ち話もなんだってんで、近所の喫茶店に入ったんだが……

「いらっしゃいませー」
「メ……じゃなかった、ミライ!?」
「? はい。そうですけど、お会いしたことありましたっけ?」
「あ。ホントだ。言われてみれば、アノ『ミライ』か」
「ゴメンね、ミライくん。この人達の知り合いにも、君とよく似た『ミライ』って人が居るから、間違えたみたいなんだ」
「てことで、気にしないで。大人7人とちびっこ1人なんだけど、席空いてるかな?」
「えっと……」

能天気そうな喫茶店の店員は、メビウスことヒビノ ミライと同じ顔をしていたというか、多分この世界のミライで、
てことはまさか他にも……。と思った矢先。


「私達がカウンター席に移るから、この席と隣のテーブル席を使えば良いわ」
「ありがとうございます! 矢的さん」
「え。『矢的』って……」
「僕らの中学の頃の担任の矢的先生と、その奥さんだけど? って、ああ」
「そっかぁ。80先生と姫様か」

テーブル席を譲ってくれた夫婦は、80先生とユリアンの人間態だった。


「知っているとは思うけど、俺はアスカ シン。ダイナだ。この世界では、いっぺん諦めた夢に返り咲いて、
『遅咲きのルーキー』とか呼ばれてた野球選手をしてる」
「僕はマドカ ダイゴ。ウルトラマンティガで、今は後進の育成をしている、元宇宙飛行士だ」
「ガイアこと、高山 我夢だよ。一応学者で、アグルな藤宮と共同研究してるんだ」

席に着いてから、改めて自己紹介され、こっちも一応名乗った後。俺らがこの世界に飛ばされた状況などを説明し、
元の世界に戻るには、その星人もしくは何か鍵になるものを探すか、向こうから襲ってくるのを待つしかないのか。
という結論に達し、そうなると問題になってくるのは、俺達の滞在場所だった。

「ダンさんの所はダメだし、うちもちょっと無理かなぁ。人数多いし、アッコに君らとの関係をうまく説明できる自信ない」
「同じく、俺んとこもダイゴのとこも、多分無理だよな」
「そうだね。でも、ちょっと待ってて」

そう言いながら、ダイゴは携帯を取り出した。


「……もしもし? マドカです。ツインを2部屋予約したいのですが……ええ、はい。大人2人と、幼児が1人。
 期間はまだ未定ですが、ひとまず1週間で。……ありがとうございます。それでは、1時間程しましたら、
 チェックインさせていただきますので。……ということで、駅前のホテル取れたよ。2人1部屋で、ナインは
 ジャンと一緒で良いよね」
「さっすが元観光課。手慣れてるね」

ダイゴは、宇宙飛行士になる前は、市役所の観光課に勤めていて、観光客の手助けや来賓の接待もしていたので、
未だにホテルに顔が利くらしい。 


そんなわけで、俺らの─ウルトラマンのいない─地球生活が始まった。



「8兄弟の世界に、他の人達も居たら素敵なのに」と思っただけの代物 某所で連載中の物をサイトにも持ってきただけですが、終着点は見失い中です


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