普段と変わらない、平和なある日。
定期パトロールから帰還した、宇宙警備隊の平隊員メビウスは、隊長であるゾフィーに呼ばれた。
「ダイナが、中から生体反応が感じられる、宇宙船を持ち帰ってきたんだけどね」
メビウスが「お呼びになりましたか?」と執務室に顔を出すと、ゾフィーはそう切り出した。
けれど、宇宙翔る迷子のダイナが、ふらりと居なくなり、ひょっこり帰ってくるのは割といつものことで、
その際未知の物質や植物だけでなく、時には生物も持ち帰ることも珍しくない。
そんな訳で、自分が呼ばれた理由が解らず、メビウスは首を傾げた。
「船内に残されていた乗組員は1人だけで、救難信号を発した状態でコールドスリープに入って
いたんだけど、地球人ないしは、限りなく地球人に近い外見をしていてね。船から発せられて
いた救難信号は
『こちら、アランダス号。この信号を受け取った宇宙船ないし惑星の方、救助願います』
と繰り返さられていたそうなんだ」
「え。それって……」
その船の名には覚えがあり、それはメビウスにとって、最も苦く、しかし尊い記憶の中のものだった。
「おそらく、火星から地球に向かう途中で時空の歪みに飲み込まれた、あのアランダス号だろうと私は
考えている。だから、唯一直接面識のあるメビウス、君に確認を」
頼みたい。とゾフィーが言い終わる前に、メビウスは「解りました!」と言い置いて医務室に駆け込んだ。
そして、医務室でまだ眠っていた、少年っぽさの残る青年を確認すると
「……ヒロトさん、です。間違いありません!」
と断言し、証拠を示すかのように、自らの姿をその彼─バン ヒロト─をモデルにした、地球で過ごして
いた時の「ヒビノ ミライ」のものに変え、顔を並べてみせた。
「……。確かに、同じ顔ですね。では、間違いないでしょう」
本人の意識が戻り次第、再度確認はとることになっているものの、高確率で「この世界のバン ヒロト」
だろうと判断し、ニコリと笑ったのは、医務室の長─銀十字軍隊長─であるウルトラの母だった。
結果的に、覚醒直後は記憶が少し混乱していたものの、数日で総てハッキリと思い出したヒロトに、
事情を説明した後。ゾフィー→サコミズ経由で話を通し―「ヒロト本人である」ことを証明する為に、
ミライ姿のメビウスも付き添い―、地球の父親の元に帰し、ついでに元GUYSメンバーにも久々に
会いに行き、ヒロトのことを報告すると、彼らにも大いに喜ばれた。
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こんな未来を、信じたって良いと思うんだ。
2011.2.18
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