ティガと隣人のガイア―と、ついでにダイナも―は、実は小学校から高校まで同じで、アグルだけ中学の学区が
違った。という、結構古い付き合いなので、お互いの昔の話や家庭事情などについてもそこそこ詳しく、写真も
残っていたりします。
そんな訳で、何故かアルバムをつまみに警備隊兄弟と飲むことになった時。ティガは自分のアルバムを持って来て
いなかったにも関わらず、ガイアが持参したアルバムに時々彼らも写っていました。
「あ。このお祭りの写真に一緒に写ってるの、ティガとダイナですよ」
「そうなんだ。5人いるけど、こっちの子はティガのお姉さんか何かかな?」
「……いえ。それが僕です」
ガイアが指し示した写真には、まだ小学生位で浴衣や甚平姿のガイア・アグル・ダイナと思しき子供達と一緒に、
浴衣姿のよく似た2人の子供が写っており、その片方の浴衣はどう見ても女の子向けの色柄をしていました。
「え? でも……」
「僕と弟のイーヴィルは一卵性双生児なんですが、母が『女の子も欲しかった』からと、時々女物をどちらかに
着せようとする癖がありまして、そういう時は大抵僕が着せられていたんです」
母親曰く、ティガの方が大人しいので、汚したり破ったりする可能性が低いから。ということだったようですが、
本人的には不本意でたまらなかったようです。
「あと、コレは学芸会でお姫様やった時のですね」
「ちょっと! 何でガイアがその写真持ってるの!? 学年違うのに」
劇の最中の写真なら、他学年の子でも見ている時に撮った可能性が考えられますが、それは学年別に改めて
撮られた集合写真でした。
「ウチの学校、学芸会の写真は全部まとめて張り出してたの忘れた?」
「だからって、何で買うの!?」
「何となく?」
そんなやり取りをしているティガとガイアの横で、
「何で、ティガさんがお姫様役だったんですか?」
と、無邪気にダイナに訪ねたのはメビウスでした。
「えっとな、確かお姫様役は何人かいたんだけど、クラスで一番可愛かったからって、周りにやらされてた」
「ちなみにその時の、ダイナの役は?」
「ティガと同じ場面に出てくる、従者D……だよな?」
「ハケる方向を間違えて、姫に襟首を掴まれ怒鳴られる。という、伝説の笑いを取った、な」
ティガと違いただの端役だったと答えるダイナに、補足という名のツッコミを入れたのはアグルでした。
「それからこっちは、中学で演劇部の助っ人にされた時の、ティガとダイナですね」
「ティガはまた女装だけど、コレは何の劇だったんだい?」
「美女と野獣です。ティガが美女で、ダイナが野獣」
「へぇ……」
「本来はガイアが主役だったのに、急にやめるとか言って僕を引っ張り出して、ダイナまで巻き込んだんです!」
微妙な顔をしたマン達に、ティガは慌てて弁解しましたが、ガイアは
「だってアグルに話したら、反対されたんだもん」
と、全く悪びれずに勝手な理屈を答えながら、次の写真を選んでいました。
「あ。あったあった。高校の学祭の、ミスコンの時の写真です。ちなみに、3年間不動の女王(笑)」
「僕らが卒業した次の年の優勝者は君でしょ、ガイア! その時の写真は!?」
尚、彼らの母校は共学で、ミスコン参加者も9割女子なのに、4年連続で男子が優勝した。ということで、未だに
伝説になっているそうです。
「あとは、コレは大学の近くで女性狙いのひったくりが多発してて囮を頼まれた時ので、こっちはストーカーに
狙われてた同じ講義取ってた子の身代わりやったんだっけ?」
「話題を逸らさないでよ。しかも大学違うのに、何でそんなこと知っていて、写真まで持ってるの!?」
「そういやそうだよな。俺も、この身代わり? の話は知らないし」
ガイアは、自分の女装写真は晒さずに、次々にティガの写真ばかりを見せ続け、その中には同居人のダイナすら
知らない理由のものも含まれていたようです。
「んー。この辺のは大体、21から買った」
「……ちょっと待って。21も、ウチの大学の生徒じゃないよね?」
ティガ達の近所に住んでいる謎の演劇青年21は、年はティガ達と同い年らしいものの、大学生では無い筈だと、
ティガがより一層怪訝そうな顔をすると、
「劇団仲間か何かが君の所の大学に居て、カツラとか大きいサイズのミュールとかの女装セットは、21の私物を
貸したんだってさ」
ケロリと答えたガイアに、ティガはもうツッコミをいれたり反論する気力を失い、その後は黙って他の面子の
写真を見たりしながら飲んでいましたとさ。
えーとー、コレも初恋談議と同じ飲み会の時の風景です。
それ以上はノーコメントでもいいですか?
2010.5.25
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