※オリキャラ&捏造満載注意
「あの、えぇと、お騒がせしてすみません」
何の説明も無く招集された隊員達が、ゾフィーに状況説明を求めようとするより早く、
子供達を代表して頭を下げたのは、中学生位の黒髪の美少女だった。
「私は、ルクスと言います。……それで、ですね。信じてはいただけないかも知れませんが、
私達は、こことは別の世界のあなた方の、子供達に当たります」
問われるより早く答えた少女─ルクス─の証言は、にわかには信じがたいが、確かに子供達は
どの子も何か集められた隊員達と似ているし、腑に落ちたような顔をしているのが主に公式で
子持ちらしい面々─ナイスやジャック─だし、何よりゼロが2人居るし……。
ということで、ひとまずルクスの言が正しいと仮定して、話を進めることになった。
「あくまでも、仮説と言いますか、それしか考えられないだけで、正しいかどうかは定かではありませんが」
そう前置きしてルクスが説明した仮説に依ると、最年長らしき白衣の美少女が中心となって研究していた
「時空転移装置」の誤作動に巻き込まれ、平行世界であるこの世界の光の国に飛ばされたのではないか。
とのことだった。
「その辺りのことについては、主に私の責任ですから、確認及び解決策を立てる為に、科技局の機材と
人員を多少お借りしても?」
「うーん。私としては、それしか手がないと思うから許可しても良いけど、ヒカリちゃんや
ガイア達的にはアリかな?」
「別に俺は構わん」
「僕らも全然構わないけど、その前に名前と誰の子か訊いていい? あ、それとも、名前だけ聞いて
当てた方が 楽しいですかね。……ひとまず、ルクスはティガの娘でしょ? そっくりだもん」
「はい。正解です」
白衣の少女の申し出に、隊長としてゾフィーが、科技局の責任者としてヒカリが答えたのに
同意したガイアの付け加えた提案に、「あ、それ面白そう」とタロウ、エース、ダイナ
、マックス辺りが賛同した結果。とりあえず年齢順に名乗って行くことになった。
「……トラジャ、です」
まず苦虫を噛み潰したような顔で名乗ったのは、妙に威圧感のある15〜6歳の少年で、
名乗った瞬間に父親の察しのついた数人が、しょっぱい顔を見せた。
「若い頃というかガキの頃のお前そっくりな、態度の悪い息子だな、ゾフィー」
「え! ゾフィー兄さんて、昔こんなだったの!? 僕らが覚えてる感じでは、
もうちょっと人当たり良かったよね」
「だよなぁ。名前からすると間違い無くゾフィー兄んとこの子だろうけど、こんな
性格悪そうじゃなかったよな、若い頃のゾフィー兄は」
と、思いがけない方へ話が転びかけた。
「コイツはな、なまじっか見目も頭の作りも悪くなくて運動も出来た所為で、世の中舐めて
見下してた時期があるんだよ」
「へぇー、そうなんですか。でも、じゃあ何がきっかけで、改心したんですか?」
「……訓練校で、上には上が居るのを思い知ったんだよ」
「そういうことだ。要は、理系の教科は俺。実技はメロスの奴にこてんぱんに負けた上、他にも
専門馬鹿や体力馬鹿は多かったからな。総合1位は取れても各1位は取れなかったんだ」
「しかも、ヒカリさんは年下ですものねぇ。それは鼻っ柱折られますよね〜」
ヒカリの暴露に項垂れ、更にコスモスの他意がない─筈の─一言にトドメを刺されメソメソし出した
父親に侮蔑の目を向けるトラジャに、
「なぁ、ところで、どの辺が『間違い無く隊長の子』な名前なんだ?」
と訊ね、ゼノンにしこたまハリセンでどつかれたのは、空気などこれっぽっちも読めないマックスだった。
「いってぇよゼノさん。あと、そのハリセンどっから出したんすか?」
「今日は娘から借りました」
頭をさするマックスと、ハリセンを手にしたゼノンの脇でニコニコ笑っていたのは、爆走少年を
捕獲していた少女だった。
「あー、やっぱそこ親子だったんだ。でも、よく自分の娘だって分かったね」
「それはそうです。この世界にも、この子と同じくらいの娘が居ますから」
「だよねぇ。さっき廊下で会った時、ふつーに会話成立してたもんね。ちなみに私は
『プラティナ』だけど、こっちの私も同じ名前?」
「いえ。名前も、よく見れば年齢も少し違いますね。うちの子より貴女の方が、若干歳上だと思います」
サラリと答えたゼノンに、マックスを始めとする、主に若めのメンツが目を丸くした。
「え。ウソ。ゼノさんいつの間に結婚してたんだ!?」
「アナタが入隊するより前ですよ、マックス。こう見えても結構オジサンですから、私」
「まぁ、娘さんの歳からするとそうだろうね。……馴れ初めは??」
「見合いです。上司から勧められ、特に断る理由はありませんでしたから」
「母さんの方もそんな感じですけど、似た者同士で仲良いですよー」
興味津々なタロウやガイアも、半信半疑な他のメンツも、父娘のその説明で深く納得した。
「で、話戻すんすけど、『トラジャ』のどこが隊長っぽいんすか?」
「モカやキリマンジャロ程分かりやすくは無いけれど、コーヒー豆の種類なんだよ」
「その事実を知った時、完璧に父さんに失望しました」
脱線した話を、要らん所へ戻したマックスに、仕方なくマンが教えてやったのに対し、
トラジャが吐き捨てるように呟くと、白衣の少女が、ボソリと
「……元から敬意なんて持って無いくせに」
と呟いた。
「うるさい! 黙れアーヴ」
「その呼び方はやめろと言っているだろうが、豆! 私の名前は『アヴニール』だ!」
「お前こそ豆言うな! アーヴでミライのくせに」
「2人共、ケンカはやめなさい! 小さい子達が怯えるでしょう」
「いやぁ、ルクスのそのムチの方が怖いでしょ」
トラジャと白衣の少女―ことアヴニール(仏語で「未来」)―が口論を始めようとした瞬間。
ピシリと響いた音の主は、某元カノ様を彷彿とさせるムチ捌きのルクスだったが、そんな
年長組に怯えていたのは、小学生位の数人だけで、幼児達の方がむしろ平然としており、
一番小さな幼女に至っては、きゃっきゃと笑いながら手を叩いてご機嫌だった。
「うわぁ。流石メビウスの子。肝が据わってるというか、感覚ズレてるなぁ」
「クラインは、特にニール姉ちゃんに懐いてるもんなー」
「なー?」
抱っこされたままホッペをプニプニされるメビウスの娘クラインは、物心ついていない
幼児なことを差っ引いてもカワイイ!! と、伯父馬鹿も合いまった反応を見せるタロウに、
ちょっぴり悲しそうな顔をしていたのは……
「コウ、タロウさんのメビウスさん&クライン馬鹿はいつものことなんだから、
その度に泣きそうになんのやめたら?」
「でも、父上は僕の父上だもん!」
「……ソイツが、タロ坊の息子で、『コウ』っていうんだな」
「そうだよ、父ちゃん」
「そして君が、エースの娘なんだね」
「うん。ベガちゃんだよ、お父さん」
「ああ。確かに、よく見たらジャックの所の息子か」
甘えん坊でファザコン全開なお坊っちゃまと、一緒にいたお転婆そうな少女と目立たない少年が
四〜六男の子供達だということは、言われてみれば確かに。という感じに、どの子も父親と似ていた。
続く
数人端折ってもこの長さ……
2012.9.9
戻