キング主催の、宇宙警備隊の精鋭による「銀河一武闘会」は、第一戦から見応えあるんだか勿体無いんだか……。
な対戦カードになっていた。
というのも、クジで1番を引き当てたのは、「平成初代」と呼ばれている、光の国以外の出身の4人で構成
された分隊を率いる分隊長のティガで、彼の対戦相手である2番を引いたのは、セブンを父に持ち、主人公
補正かかりまくりの最強の新人ゼロだったのだ。
試合のルールは、
・飛び道具・光線技アリ。ただしリングを破壊したり、観客席を巻き込まないこと
・ダウン及びリングアウト10カウントで敗北
・負けを宣言しても敗北
・空中浮遊は10カウントでリングアウト扱い
・1回戦のみ3分の時間制限アリ
・時間切れになったら実況・審判・解説・キング等で判定
となっており、その他反則等の判定は、一応審判及び実況が下すことになっていた。
そんな感じのルール説明が、キングのクソ長い開会宣言の後、実況のナイスから行われ、事前にネオスと21が
楽屋にインタビューに行った際の映像が流された後ようやく試合開始となったのだが、「意気込みをどうぞ!」
とのレポーター達が向けたマイクに向かい、
「ぜってぇ負けねえ!」
とポーズを決めて宣言するゼロと、
「あんな小僧に負ける程落ちぶれたつもりはないけど、面倒臭い」
と答えたティガの温度差が激しかった。
☆★☆
開始のゴングと同時に、「あー、多分、昨日の晩頑張って考えたんだろうなぁ」という、中二病全開な
決めゼリフを、ゼロが毎度のポーズで言い始めたが、ティガはお構いなしに飛び蹴りを決めた。
「ちょっ。待て! お前、形式美ってやつを考えろ。戦隊モノもライダーも、決めゼリフの間は攻撃しねぇのが
お約束だろうが!」
「戦隊モノじゃなくてウルトラマンで、変身直後に飛び蹴りで登場。は、僕の公式だ。それに、僕の時代の
ライダーは確か前口上なんか述べてない。……今の口上が、試合時間に含まれないというのならば、僕が
フライングしたことになるかもしれないけど」
これだから毎週3分の制限付きで戦って来ていない若造は。とでも言いたげなティガは、言葉を交わしつつも
抗議してくるゼロへの攻撃の手は緩めなかった。
「そこんとこどうなんだよ、審判!」
「え。そ、それは、どうなんでしょうかナイスさーん」
「レフェリーは君だから、君が判断するんだゼアスくん☆」
防戦しながらゼロは審判のゼアスに判断を求めたが、ゼアスはオロオロするだけで判断が付かなかったため、
一時中断して協議した結果。
「キングから、『おもしろいからアリぢゃ』との許可が降りましたので、口上から仕切り直しだそうです☆」
「そう。じゃあ、どうぞ」
「って出来るかぁ!」
親指をグッと立てて仕切り直しを要求したナイスと、ニコリともせずに腕を組んだまま促したティガに、
ゼロは何の羞恥プレイかと反論した。
「だったら、遠慮なく行かせてもらうよ」
言うなり繰り出されたティガの攻撃は、先程までとは早さも威力もケタ違いで、仕切り直しを見越して
手加減していたことが明白だった。
しかしゼロも防戦一方な訳ではなく、避けた勢いでスラッガー攻撃を繰り出したり、パンチやチョップを
防ぎながらキックで攻撃してみたりもした。が、スラッガーが白刃取りされた挙句投げ返され、キックは
逆に足払いされたりと、見てる側に
「え。こんなに力量差あったの!?」
と思われる程の苦戦っぷりだった。
結局、突進した勢いを利用されて担がれて場外に投げ飛ばされ、戻ろうにもティガホールド光波に邪魔され
10カウントが過ぎてしまい、呆気なくゼロの負けが決まった。
その結果について、解説のボーイは、
「多分ゼロさんは、今までティガさんのような器用で素早い敵とあまり戦ったことが無いんだと思います。
あと、頭脳派の人型の星人ともあまり戦っていないから、先の先の先辺りまで読んだ連続攻撃に慣れて
いないので、溜めの必要な技を使おうとして途中で攻撃を食らったり、間断なく攻撃されたり攻撃され
返すことについていけてなかったんじゃないでしょうか」
と分析し、確かに怪獣とかロボが多かったよなぁ。と、周り中に納得されたのだった。
更に、試合前に激励に来たレイに付いてきたケイトの連れていたハイパーゼットンに襲われかけた。
ただし、本怪獣的には
「あ〜、ゼロだぁ。遊んで〜」
と、とてとて近付いているつもりが、端から見ると攻撃を仕掛けに向かっているようにしか見えなかっただけで、
「出会い頭に一兆度の火球」はもはや挨拶代わりと化しているのだと説明してくれたのは、レイだった。
そんな訳で、試合前からピンチに陥りかけたゼロを救ったのは、意外にも彼を敵視しているケイト(幽体)と、
彼女の愛ゼットンだった。
しかし、怪獣語の解らないゼロには「ピロロロロロ」「ピロロ?」にしか聞こえないゼットンの会話にケイトが
付け加えた一言が、とても引っかかった。
「そうだ、ハイパーゼットン。『後で』だ」
「は? 後で!?」
「うん。『ゼロはこれから勝負だから、あとにしなさい』とゼットンは言っている」
レイの訳に、傍らのゴモラや応援に来てくれたピグモンも頷いているので、確かにそう言ったのだろうが、後で
だろうと何だろうと、遊び感覚で満身創痍になる気はねぇ! と、ゼロは反論したかった。けれど、可愛い可愛い
弟&珍獣の目線が「後で遊んであげるんだよね、もちろん」と言っているように感じた(多分気の所為)ゼロは、
格好つけて「仕方ねぇな」とそれを承諾した。
とはいえ、本当に勝負をする気はさらさら無かったので、どう言い訳をしたものか考えるのもおっくうな位、
身も心もズッタズタにボロ負けして控室に戻ると、仁王立ちのお姉様と、しっぽを振ってじゃれに来る犬の如く
はしゃいでいる─と解るのが、ある意味末期なことにゼロは気付いていない─ハイパーゼットンが待ち構えて
おり、見逃してくれそうな気配は、もちろんこれっぽっちも無かった。
オマケに、どうにか戦いを回避しようとしていると、
「ゼロ、約束は守るものだ」
とレイに真顔で言われてしまい、結局ハイパーゼットンが満足するまで遊び―という名の戦闘―に付きあわされ
更にぼろぼろになったので、仮に万一奇跡的にティガに勝っていた所で、次の試合までに快復出来なかったかも
しれなくも無いが、結果は完敗だったので、杞憂でしかなかった。
一回戦 第1試合
ティガvsゼロ 勝者ティガ
NEXT vsセブン
next
観客席や、試合前後のインタビューはその内補完します。
ということでとりあえず第1試合。
ティガさんはエース兄さん並に器用で、勢いだけの小僧に負けるような方ではござんせんので
2012.10.8
2012.10.13 試合前後ちょっぴり追加
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