観客ほぼ全員が虚ろな半目になった理由は、リアルタイムで届いた応援映像と応援された側の対応が、
	あまりにも『リア充爆発しろ』なためだった。
	諸事情で来られなかった月の女王とウルトラ兄弟の五男の、人目を気にしないいちゃいちゃっぷりに、
	会場全体を代弁するようにAキラーが「時間だ!」と強制的に割り込んだ時は、一部から拍手があがっていた。
	応援席でお菓子を食べていた朱鷺色の少女は、

	「いい気味ー。っていうか〜」

	ポップコーンを頬張りながら、周りをぐるりと見渡して、

	「なんで、このロープの内側から出ちゃいけないんだ? 張り紙の『敵方ご一同様:えさを与えないでください』
	 って見えるのは気のせい?」
	「警備の都合上、まとめられたようでございますよ、ヤプール様」

	カップに恭しく紅茶を注ぎながら、青と黄色の鎧の、一角の青年が手をかざす。

	「あちらが、エンペラ星人配下の輩に、向こうがカイザーベリアル軍、そちらはジュダの、また向こうはザギの」
	「ヤプールが言うのはどうかと思うけど、よくこんな非道い奴らを会場に入れたな」
	「正規の手段でチケットを買ったもの、もしくはチケットを贈られたものはOKだとか」
	「まぁヤプールは楽しければいいがな。あ、わたあめ食べたい!」

	ワガママっぷりに苦笑する超獣は、がま口を取り出して売り子を呼び止めた。そんな異次元組に指さされた
	各自の悪役たちもまた、

	「カイザーベリアル陛下、焼きムルチとタッコング焼きを買ってまいりました。レギオノイドズ、はい冷オイル。
	 ロプスちょっと来なさい、りんご飴です」
	「俺の分は? さらっと飛ばしたけど、間に座ってる俺はなにもなし?」
	「アイアロン、あなたはいい大人なんだから自分で買ってくればいいでしょう、ささ、陛下どうぞ」

	遠足にでも来たようなほのぼのな軍勢と、

	「なあ、お前とそっくりな奴が向こうの席にいんだけど、双子? んでもあっちは人間か」
	「ノーコメント」
	「ノアに拒否られた……何故逃げるし…ちょっと触って押さえつけて脱がそうとしただけで……」
	「ザギさまー、それアウトですー」

	背を丸めて泣いている黒衣の男からカメラは瞬時にそれて放送事故を避けた。これで会場中継は一段落した、
	とメインカメラが対戦者のいる
	リングを映しだしたのだが、大写しになった映像は、ウルトラマンエースと何故か対峙するAキラーだった。
	ぎゃあぎゃあと先ほどの喧嘩がまだ続いていて、取っ組みあいを始めようとしている。控え室の兄たちが
	見かねて出て行こうとしたその時、仲裁を無視されていたゼノンが、手を挙げた。

	「…あ、はい。許可でましたので、二回戦勝者VS戦を始めます」
	「あれぇぇ!?」

	もちろん、許可を出したのはキングなのは言うまでもない。けれど、

	「レジャンドはいいのかよ! アイツの試合だろ!」

	ゼロや友人たちが叫ぶと、ゼノンは、自称最強最速の部下に向けるような生温い微笑みを浮かべた。

	「リドリアスやゴモラ、それにレイがお昼寝タイムなので一緒にレジャンドも寝てるんですよ、ええ、
	 スケジュールの進行具合など気にも止めず、すやすやと」

	カメラには、丸くなって眠る怪獣たちと精神年齢三歳児と猫耳っ子が映り、怪獣墓場の席から、「今のとこだけ
	ダビングしろ」と女性の声が聞こえたが気にせず、ゼロはさらに問うた。

	「んでも、レジャンドが起きるのを待てば」

	進行役の苦労って理解できます? と今度は冷たい視線が飛んできた。そうなったら食い下がる気も折られ、
	成り行きに任せるかと席に座り直す。

	「エースもAキラーも、ほんと、お祭り騒ぎが好きなんだから」

	控え室の長兄の台詞に兄弟たちが皆同意したように、派手な技の応酬で勝負が始まった。
	そもそもエースの技の豊富さは兄弟一で、そのエース&兄弟たちを倒すためプログラムされたAキラーは、
	使える技の数なら上をいくため、

	「メタリウム光線!」
	「なんの、スペシウム光線!!」

	あの戦士のあの技が、とある意味夢の対決のような展開に、観客席は盛り上がった。まあ使われてる本人達は
	ちょっと複雑で、

	「防がれるとショックだよなぁ、エースが強くなったからだって納得はできるけど」
	「ワイドショット駄目だったね。私の八つ裂き光輪もギロチンショットに跳ね返されたから、気持ちはわかるよ…」

	そんな控え室の会話をバックに、四男は、俺の勝ちだ! と連続メタリウム光線を撃ったが、Aキラーの構えに
	ぎょっと目を丸くした。

	「おまっ、なんでそれ」

	ゴルゴダ星で相対した瞬間がフラッシュバックする。にやっとAキラーは口の端で笑った。

	「お前が成長するのなら、お前を倒すために造られた俺も強くなるんだよ、バーカ」

	両手を十字に、放たれた光の名前はワイドゼロショット。セブンの息子のゼロの攻撃技。すれすれで避けるも
	掠った熱に腕が痛む。

	「いつどこで覚えたんだよこのヤロウ!」

	奇しくもエースとゼロがユニゾンで怒鳴る。それを鼻で笑って、機械人形はカメラ目線をとった。

	「無料のアプリとり放題に登録しているからな!!」
	「人の技をアプリ扱いすんなよ!!」
	「さらに、月々500円で超高速ダウンロードが可能!!」
	「なんのサイト?! どこの会社で俺らの技を売ってんの!?」

	こういうことをドヤ顔で言っちゃう辺りがエースと(頭の中身が)同レベルなのである。マックスとかダイナに
	ウケてるけど、ボーイ君は目を輝かせてないよ。ともかく、これ以上技を使われてたまるかと、エースは跳んだ。
	背後に回ってすかさず攻撃、ではなくまさかの膝カックン。不意打ち過ぎるこれには、正面から地に倒れてしまう。
	なにくそ、と上体を起こしたAキラーの腰に重みと、首にかかった誰かさんの両手の意味するものは、

	「いだだだ!! やめ、だっ、いでぇえ!!」

	キャラメルクラッチが綺麗に決められた。先程までの兄弟らの華々しい技の応酬を見た後だと、高低差が
	ひどい、と誰かがため息をついた。

	「エースてめぇ!! ぐっ!?」

	緑の瞳を白黒させた彼の声が裏返り、ゼノンが二人に近寄って、ワン・ツー・スリーと冷静にカウント。

	「勝者、エース」

	めきっ、ごとん。Aキラーの首が落ちた。

	「あぁもう」

	上がる悲鳴の中、ホラーチックに転がった自動人形の首を丁寧に拾い上げた次男は、一応安否を気遣いながら
	二人にお説教を始め、その並行で本来の対戦者のレジェンドを起こすよう指示した。

	「レジェンド、寝起きで戦える〜?」
	「……」

	心配気なコスモスの問に、猫耳っ子はふるふると首を振った。そうして、手招きで勝者のエースを呼ぶ。右手を
	出させて、最初はグー、じゃんけんポン。

	「し、勝者、エース…で、いいんですよね、ですよね?」

	さすがにゼノンも解説席やらキングやら大隊長に確認をとるほど呆気に取られたが、こうして試合は終了した。





姉さんパート2回戦 観客席派手っすねぇ。 そして、アプリ流してんのはまさか某カミサマですか?