「今年は、近所の若手も呼んで、盛大にクリスマスパーティーをやらないか」

	との提案をしたのは、珍しくお祭り好きの下の子達―エースやタロウ―では無く、三兄のセブンでしたが、声を
	掛けた中で不参加を表明してきたのは「デートなのv」なユリアンと80、「……兄さんと2人が良いんで」な
	アストラ(とレオ)だけで、ガイア達から話を聞いたマックス達(珍しくネクサスまで)参加することになり、いつも
	ハブられている父も混ざりたがったので、母も加えた総勢23人という大所帯でパーティーをすることになりました。


	「……珍しくセブン兄さんが乗り気なのってさ、やっぱりゼロとレイの為かな」
	「じゃねぇの? アイツら2人共、家族とか大勢ですごすクリスマス始めてらしいし」

	発起人はセブンとはいえ、「慣れてるし、そういうの好きだろ」と準備や細かい企画を任されたのは、やはり
	エースとタロウで、休日に打ち合わせをしながらのタロウの呟きに、エースがそう返すと

	「え? でも、ゼロはともかく、レイはペンドラゴンの皆さんが居たよね?」
	「この時期、運送屋は忙しいんで、家族でクリスマスとかしたことないんだと」
	「あー、そっか。そういえば僕らも、年末年始やクリスマスって、イベントや要人の警備の多くって、クリスマス
	 すっぽかされたことあったよねぇ」

	家業によっては、世間的に休日だろうが関係なかったり、休日の方が忙しい。ということで納得しましたが、

	「でも、今思ったんだけど、逆に施設だと人数多いだろうから、ゼロは家族でのクリスマスは初めてだけど、
	 みんなでワイワイするのはいつものことっぽいから、兄さん達だけでの方が新鮮だったんじゃないかな」

	そんな疑問を、施設生活が長かったマンに恐る恐る訊いてみた所

	「ゼロの育った施設がどうだったのかは知らないけど、私や、セブンも一時期居た施設は、イベントをあまり
	 やらない所だったし、プレゼントも毎年お菓子の長靴1個程度だったから、この家での初めてクリスマスが、
	 すごく楽しくて嬉しかったんだ。だから、ゼロにも同じ気持ちを味わわせてあげたかったんじゃないかな。
	 あと、うちには、小さな頃からイベントの度に、張り切って楽しませてくれる弟達が居るしね」

	との答えが返ってきたので、2人はより一層張り切って計画を立てて準備をしました。
	その一方で、

	「折角お招きいただいたからには、こっちでも何か用意しないとね。……ってことで、僕このケーキがいいな」

	と、差し入れにかこつけて、広告を手にしたガイアがティガにクリスマスケーキの希望を告げると、速攻で却下
	されました。しかし

	「そのケーキが食べたいなら、自分で買って持って行って。僕に作れるのは、この中のやつだけ」
	「うーんと、じゃあ、やっぱりブッシュ・ド・ノエルが一番クリスマスっぽいかな。けど、他も捨てがたいし……」
	「俺は何でも良いけど、今年は何個作るんだ?」
	「総勢23人で、だけど他にもケーキを買ってくる方は居そうだし、甘いものを食べない人もいるだろうけど、君らは
	 2〜3人でワンホールいくよね? だとすると……」

	ガイアの挙げた種類がダメなだけで、作ることは決定しているように見える上に、

	「そのリスト、手製ですか? しかも、結構選択肢多いんですね」

	たまたま居合わせた21達が驚く程のケーキのレパートリーが、ティガにはあるようでした。

	「……『娘が欲しかった』と称する母親に、子供の頃から料理だけでなくお菓子作りまで仕込まれ、ここ数年は
	 今みたいに誕生日やクリスマスやバレンタインデーなんかに、ガイアやダイナにねだられたり、知り合いの子に
	 手伝いを頼まれるから、必然的にね」

	若干諦め気味な口調で、遠い目をして答えたティガにお菓子作りを手伝わせるのは、大学の友人のヤナセレナ嬢
	だったりします。

	そして、結局ティガは、ホールケーキ4種とブッシュ・ド・ノエルとシュトーレンの計6種を、材料を計ったり
	混ぜたりという単純作業や、味と関係の無い飾り付けなどを、他のメンツにも手伝わせて作って持って行った所、
	とても感心されましたが、あまり嬉しくはなさそうでした。




	そんなこんなで、クリスマス当日。
	1人1つ持ち寄ってのプレゼント交換は、「何か統一性があった方が面白いよね」ということで、エースとタロウに
	ガイアや21なども混じって相談した結果「本」で揃えることに決まり、それぞれに番号をつけてくじを引く。という
	形になりました。


							


	「……メビウス。お前なぁ」

	くじで1番を引いたエースに当たった本は、カレーとカレー味の料理だけのレシピ本で、てっきりカレー大好きな
	末弟チョイスと思いきや

	「あ、ゴメン。それ私。カレーなら、割とみんな好きかな。って思って」

	と手を挙げたのは、何とマンでした。そして、疑惑を掛けられたメビウスの本を引き当てたのもマンで、

	「……時刻表?」
	「はい! 誕生日の時にリュウさんに貰って、すごく沢山電車の事が乗っていて、便利だったんです!」

	曇りの無い笑顔で、元気いっぱいに答えられ、ちょっと反応に困り、

	「そうか。うん、じゃあ、電車を使って出張に行くことがあったら活用させてもらうかもしれないけど、コレは
	 月刊の雑誌だから……」

	一応ちゃんとお礼を言いつつも、苦笑いで言葉を濁しておきました。そんなメビウス本人が引き当てたのは、
	ダイナが用意した本で……

	「辞書と写真のコラボな本なんですね。面白いし、勉強になります。ありがとうございます!」
	「……ねぇ、新明解って、元々ちょっと変わった説明や単語が載ってる事で有名な辞典だよね?」
	「そうだよ。その上アノ本は、買った時に一緒にいたけど、選ばれている単語も添えてある写真もかなり変なの
	 ばかりだから、メビウスくんやレイくんが引いて、変な風に言葉を覚えたりさえしなければ、良いかと思って
	 止めなかったんだけどね。……『つるのひと声』選びかけた時には、本気でしばきそうになったから」

	といった感じの、『うめ版』(新明解国語辞典×梅佳代 三省堂)という本でした。ホントに笑える本なので、
	気になった方はお近くの書店や図書館で探してみてください。

	「ふぅん。ちなみにティガはどんなの引いたの? 僕は……『書き込み式 般若心経』って誰だろコレ選んだ人」
	「少なくとも、僕じゃないしマックス達でもないと思うけど? 僕のは、応急手当の本だから、ネクサスかな」

	そんなガイアとティガが引き当てたのは、実はヒカリとネオスのチョイスで、ネオスが応急手当の本を買ったのは、
	「警備隊の皆さん以外にも、当たったらそれなりに使えるだろうし」
	との理由だったようです。そして、ネクサスが選んだ物は

	「私がコレを引き当ててもねぇ」

	というゼノンに当たった『100万回生きたねこ』で、ネクサスが引き当てたのもゼノンの本で

	「……コレ、何年か前に映画になっていたものの、原作ですよね」
	「んー。何引き当てたんだ。……何で、今更『神様のパズル』なんだよ」
	「久々に読み返したら、面白かったから?」

	そんな、びみょーな代物でした。
	

	「お。海の写真集だ。てことは、アグルっすか、コレ」
	「違うと思うよ。アグルが買ったのって、数独だった筈」
	「ああ。それは僕。レナの買い物に付き合わされた時に、彼女が見つけて、気に入って買ったのと同じやつなんだ」

	という、イルカの写真集がティガからマックスで、アグルの数独はネオスに。

	「わー。ゼロくん良いなー。この本、カレーパンの作り方も、メロンパンも作り方も載ってるね」

	エースからゼロに渡ったパンの本に目を輝かせたのはメビウスで、

	「……使えなくもないのが、逆にムカつくな」

	と呟いたヒカリの当てたコーヒーの本は、勿論ゾフィーから。

	「コレ、ヒカリちゃんとセブンとガイアの誰から?」

	なゾフィーに渡ったのは、セブンの買った大人の科学で、ガイアからの物は

	「息子が喜ぶかもしれないな」

	というジャックに当たった『ピタゴラ装置DVDブック』で、ジャックからは

	「とても実用的ですが、アリなんですか家計簿って」
	「書店に売っていたんだから、問題ないだろう? 本当は、タロウやエース辺りに当たって欲しかったんだけど、
	 君も妙な浪費が多そうだから、まぁ良いかな」

	ということで21に。

	「……タロウ。コレ、俺は別に構わないが、引き当てた人によっては、嫌な顔されてたと思うぞ」
	「えー。そうですか? これでも、色々考えたんですよ」

	と、セブンに呆れられたタロウチョイスは『評伝シャア・アズナブル』で、その他の候補だったらしい『マンガで
	わかる○○』シリーズや擬人化ものよりはマシとはいえ、やっぱりだいぶもらう人を選ぶ代物でした。


	「アグルはどんな本だったの。見せて?……絵本かぁ。てことは、レイちゃんかな」
	「ははとかいにいった」
	「最近の、お気に入りの本なんですよ。大事にしてあげて下さいね」

	まだ3歳のレイが1人で買い物に行くのは無理なので、セブンかマンが一緒に行って買ってあげても良かったの
	ですが、
	「わたし達は、プレゼント交換には参加しなくて構いませんから、一緒に買いに行きましょう」
	との申し出が母からあり、父も妻と一緒に孫を連れてお買い物に行けただけで充分幸せだったため、父母+レイの
	3人からということにして買って来たのは、『かいじゅうたちのいるところ』で、レイが引き当てた本も、もしも
	レイにはまだ読めなかったり使えなさそうなものだった場合は、母か父がもらい受けるか、読めるようになるまで
	預かって、別の絵本を買ってあげることにしていましたが、

	「読み聞かせは出来そうですし、ひらがなばかりですから、すぐに読めるようになるかもしれませんね」

	という相田みつをの詩集で、購入者はコスモスでした。


	「僕のは、こんな本だったけど〜、ジャスティスはどんなのだったぁ?」

	21からのだまし絵の本を、興味深げに眺めながら訊ねたコスモスに、ジャスティスが見せたのは、マックスの買った
	マラソンの本で、ジャスティス的には「使えなくもないか」程度でしたが、

	「えっと〜、じゃあ、今度この本に載ってること実践しながら、一緒に走りに行こうかぁ」

	とコスモスが笑ったので、内心こっそり贈り手に感謝したとかしないとか(笑)
	

	そして、残るは……

	「タロウ兄ちゃんのも、犬の写真集なんだ。そっちは、柴とか雑種? 俺は、子犬とか子猫の写真集だったんだ」

	という、タロウとダイナの手元に渡ったものでしたが、双方とも購入者は最後まで名乗り出ませんでした。



							


	プレゼント交換の後も、エース&タロウの企画したゲームで盛り上がったり、若手の余興がウケたり、料理や
	ケーキの話を母、マン、ティガ、ガイア、エース、ジャックなどがしていたりと、楽しい時間を過ごすことが
	出来ました。


夜の部へ続く


光の国の家族モノ版クリスマス話前半でした。 後半は、柳佳姉さんリクの恋人たちの風景+α予定です 2010.12.11