木下さんちの末っ子孫次郎くんの通っている保育園には、12月になると立派なクリスマスツリーが飾られていて、
	そんなに派手じゃないけど、イルミネーションやお飾りもとっても綺麗です。
	しかも、その保育園の新野園長先生と、孫次郎くんやお兄ちゃん達のお友達は親戚で、毎年12/24の夜には
	みんなでパーティーをやっているんだという話を聞いて、とてもうらやましくなりました。
	なので、お父さんやお兄ちゃん達に話してみましたが、木下さんちは賃貸マンションなので、ちょっと難しい
	感じの反応が返って来ました。しかし、お友達やお兄ちゃん達などを色々巡って、

	「うちなら、大きいツリーもイルミネーションも飾れるが?」

	と、大川さんちの三郎お兄ちゃんが提案してくれたので、とりあえず今年は、いつもの木下兄弟+土井兄弟と、
	更に大川家の人達とでパーティをしよう。ということになりました。

	そしてお料理は、普段からご飯を作ってくれている土井さんちの兵助お兄ちゃんを中心に、土井さんちの下の
	2人―伊助くんと三郎次お兄ちゃん―や、孫兵お兄ちゃん、三治郎お兄ちゃん、彦四郎くんなどが手伝って
	作った以外にも、大川の平次お爺ちゃんがケータリングを注文してくれたり、高校生なお兄ちゃん達の学校の
	先生で、三郎お兄ちゃんのお母さんの雷蔵さんの友達らしい尾浜勘右衛門さんが「混ぜてもらうお土産に」と
	鳥の丸焼きを差し入れてくれ、ケーキは平次お爺ちゃんと尾浜先生と半助お兄ちゃんとが、それぞれ買って
	来てくれたので、みんながお腹いっぱい食べても余る程でした。(ちなみに、それらの余りを「明日のおかずに」
	とタッパーに詰めていた兵助お兄ちゃんや尾浜先生には、三郎お兄ちゃんから
	「普段の食生活が乏しいだろう独身の勘はともかく、お前は主婦か兵助」
	とのツッコミが入りましたが、兵助くんは限りなく主婦でみんなのお母さん代わりです・笑)
	


							


	「おおー。立派なツリーじゃん。大川のじっちゃんちに、こんな大きな木、あったっけ?」

	12/24の夕方過ぎ。大川家で飾り付けや料理作成中に顔を出した勘右衛門が、庭を見てみると、そこには孫次郎が
	望んだ通りの、大きくて立派なクリスマスツリーがありました。

	「あのね、ハチ兄ちゃんがもらってきてくれたの」
	「ハチ兄の、バイト先の人に頼んだんだって」

	勘右衛門に、嬉しそうにそう教えてくれたのは、木下家の下の方の弟達で、兵助や三郎の補足によると、大川家で
	パーティをすることが決まった際に、
	「ツリー手配出来るかも」
	と言い出し、その言葉通り数日後に、バイト先の運送屋の伝手を使って立派なモミの木を入手して来て、ついでに
	トラックで運んでもらうのも、職場のおじさんにお願いしたんだそうです。

	そのツリーや、その他の庭の木などに飾られた飾りは、毎年木下家や土井家の小さなツリーに飾っていたものや、
	大川家にあったものをひっぱりだしてきて、集めたものでしたが、


	「……このイルミネーションってさ、鉢屋が買ったアレだよね?」

	日も暮れて真っ暗な庭で、キラキラピカピカ光るイルミネーションを眺めながら、勘右衛門が婚家の方の
	パーティーを途中で少し抜けてきて顔を出した雷蔵にそう訊ねると、苦笑交じりだけど懐かしそうな答えが
	返って来ました。

	「うん。でも、全部ではないかな。三郎は、庭の木全部ライトアップさせてたから」
	「あー、そういやそうだった。にしても、鉢屋ってホント派手好きで無駄にロマンチストだったけど、あそこまで
	 思いっきりやったのは、何かきっかけとかあったの?」

	現在、曽祖父に当たる大川の家で暮らしている三郎の、亡き父の名前も「鉢屋三郎」といい、雷蔵と勘右衛門の
	同級生で享年15歳でしたが、今の三郎よりも上手うわてで策士で気障ったらしい男だったようです。

	「テレビでニューヨークかどこかのイルミネーションの映像を見ながら、『いいなぁ』って僕が呟いたらしいんだ。
	 そしたら、『来年は生を見せに連れて行ってやるから』とか言いながら、代わりにお祖父ちゃんちの庭を電飾で
	 いっぱいにしてくれたんだ」
	「うわぁ。アイツらしすぎるけど、雷蔵別に、本気で見てみたかった訳じゃないんだろ?」
	「そうだねぇ。精々街中とか、どこか近場のイルミネーションで充分だったかな(笑)」

	演出過多で、こと雷蔵が絡むと周りが今一つ見えなくなっていたかつての友に、勘右衛門が呆れたように笑うと、
	雷蔵も懐かしそうに笑いました。その笑い方が、鉢屋の方の三郎の生前に、彼のしょうもない行動に苦笑しつつも
	嬉しそうだった時と同じように思えた勘右衛門は、何だかちょっとだけホッとしました。

	「でもさ、鉢屋のことだから、更に『コレが愛の証だ』みたいなクサイ事言って、実は雷蔵も嬉しかったんだろ?
	 あと、どうせその後も毎年飾る気でいただろうから、ちょっと空いちゃったし直接は渡せなかったけど、息子
	 へのプレゼントじゃん。コレ」

	勘右衛門は、雷蔵が従兄で恋人だった三郎と過ごした最後のクリスマスには、既に妊娠していたことも、2人共
	それを解っていて隠していたことも知っています。なので、その頃の話題を振るのは、地雷の可能性もあるので、
	ちょっぴり慎重に内容を選ぶようにしていなくもないのですが、先程の表情から「言っちゃっても良いかな」と
	判断して茶化してみると、

	「……それ、もうちょっと早く言ってくれたら、三郎が小さい頃にも飾ったのに。三郎が小学校に上がる位まで、
	 勘ちゃんこの辺に居て、毎年三郎のサンタ役してくれてたんだから、その時に言ってよ」

	と、珍しくお母さんモードな文句を言われてしまいました。けれど、そういう反応が返って来たということは、
	悪くない発想で、良い想い出に分類されるんなら、まぁ良いかな。という風に捉え、「ごめんごめん」と笑う
	だけで済ませることが出来ました。



	その後。ちょっと顔を出しただけの雷蔵は、新野保育園の方に帰り、勘右衛門は他のメンツに混じってゲームや
	プレゼント交換をしたり、大人達や三郎などがクリスマス関連のお話やマメ知識やムダ知識を披露してみたりと、
	目一杯はしゃぎまくりました。そしてその結果。おねむになったり寝ちゃったおチビ達を連れ帰るのは、人手も
	足りないし面倒だから。と、大川家にお泊りになり、小学生以下が寝た後。

	「サンタ便の手伝いの臨時バイト行ってくる」

	と八左ヱ門がちょっと抜け、残った大人+中高生達―「クリスマスだし」という名目で、高校生共の飲酒も
	見逃されていた―で宴会をしている途中で、木下家の父鉄丸や半助が、プレゼントを取りに一旦家に帰って
	戻って来た時に、何やらサンタコスの奴が見えたので、クリスマスに乗じた泥棒かと思い取り押さえようと
	したら、バイトから帰ってきた八左ヱ門だった。などというちょっとしたハプニングもあったりと、楽しい
	時を過ごすことが出来ましたが、翌朝

	「サンタさん、おうちじゃなくてもきてくれたー」
	「コレじゃない。こんなおもちゃじゃなくて、本物のモデルガンが欲しかったのに……」
	「僕達は、ちゃんと頼んだ通りのものだったよ。ね?」
	「うん。でも僕は、『何かおもしろいもの』としかお願いしてないけどね」
	「サンタさんにお手紙書いたら、返事が来てたんです!」
	「兄さん達、コレ何語か読めますか?」

	等々、反応は様々ですが、概ね嬉しそうにプレゼントを開封するおチビ達に、「お酒くさい」とちょっと眉を
	しかめられ、数人は子供達の騒ぎ声が頭に響く程の二日酔いに見舞われてしまいました。
	しかしそんな中。宴会に参加しつつも飲まなかった孫兵や、1、2杯舐めた程度の兵助はともかく、かなりの
	量を飲んだ挙句さっさとつぶれて寝ていた勘右衛門も、けろりとした顔で朝食の準備やおチビ達の相手をして
	いたのが、二日酔いメンツには、ちょっと信じ難かったようでした。




2010年クリスマス企画第1弾 黒桐桐夜様リクエスト 「家族パロで、生物・火薬・学級の家族+雷蔵&勘ちゃんでワイワイしてる話」 +「カッコイイ鉢ハチコンビが見たいです」 とのことでしたが、何か妙に勘ちゃんメインぽくて、あんましおチビがワイワイしてるシーン無くてスイマセン。 あと、「鉢」をあえてホントに「鉢屋」な故人の方にしてみたんですがどうでしょう? 2010.12.4