息子又は甥っ子達が「サンタを捕まえるんだ!」と言い出した時。親の方の中在家4兄妹の
上2人は、「血は争えないな」と、サンタ捕獲計画の言いだしっぺ―左門と三之助―の親に
当たる弟妹―伊作と小平太―を見た。
というのも、実は遡ること25年前。当時保育園の年長組だった小平太が同じことを言い出したのに、
小3の伊作が賛同し、2人揃って
「留兄と仙ちゃんが手伝ってくれたら、絶対捕まえられるよね」
と、期待に満ちたキラキラした目で見つめてきたことがあったのだ。
そして、小5だった仙蔵と小6の留三郎は、実は既にサンタの正体を知っていたので、協力するのは
ちょっとな……。と思いはしたが、まだ本気でサンタを信じている可愛い弟妹にそのことを教える訳
にはいかないし、こんなに頼られたら悪い気はしないし、ウチのサンタなら大丈夫だよな。と2人で
相談して最終的な判断を下し、力を貸してやることにした。
☆
「良いか? 小平太も伊作も、私と留三郎でサンタを捕まえる仕掛けは作ってやるが、自分達で
起きて待ってないとダメだからな」
「えー。なんでだよ」
「俺らに作れるのは、サンタをビックリさせて足止めする位のものだし、朝お前らが起きるまで
ずっと捕まえてる訳にはいかないだろ」
「そっかぁ。そうだよね。うん。ぼく、がんばっておきてる!」
仙蔵と留三郎とで事前に釘を刺した所、伊作も小平太も元気一杯「起きて待つ」と宣言したが、
それが出来るなら、端から仕掛けなど無くてもサンタの正体を見極められるだろう。とは誰も
突っ込まなかったのは、まだ全員小学生以下だったからだよな。と、当時を振り返って兄姉は
思ったが、そもそもこの頃はまだ、サンタの正体は知っていたけど信じてもいたんだよな。
とも思い出した。
それは、弟妹のサンタ捕獲宣言の2年前の、日付が12/25に変わったばかりの夜中。子供部屋の
2段ベットの上段で寝ていた留三郎は、下段で寝ていた筈の仙蔵に叩き起こされた。しかも、
暗くて解り辛かったが、どうやら半泣きになっていたので、
「……なんだよ。1人でトイレ行くの怖いからついて来いってか?」
「違う! 私を伊作や小平太と一緒にするな」
「じゃあ何だよ。おれは眠い」
年子とはいえ1歳半違いで、生まれながらの長男な留三郎が、寝ぼけ眼ではあるがお兄ちゃん
スキルを発動させて訊ねると、仙蔵はその仮定はきっぱり否定したが、やっぱり半泣き状態で
「サンタなんか、いなかったんだ」
と答えた。
「は?」
「今さっき、何か音がして目が覚めたら、サンタがプレゼントを届けに来たところだったが、
そのサンタはよく見たら、洋一伯父さんだったんだ」
言われて見てみれば、枕元につるしてあった靴下には確かに寝る前には入っていなかった筈の
プレゼントが入っていたが、サンタが伯父さん?? と留三郎が首を傾げると、仙蔵は
「うそでも見間違いでも無い! あれは伯父さんだった」
と、より一層泣きそうな顔になったので、
「そうか。じゃあ、朝になったら、父さんと伯父さんに訊こうな」
と宥めて寝かしつけ、約束通り起きてからそのことを父長次に訊ねると、肯定の返事が返って来た。が、
「……お前達は、1人のサンタクロースが、一晩で世界中を回れると思うか?」
「おれは、出来ないと思う」
「そうだな」
「だったら、なんだというのだ」
「1人で、世界中の子供にプレゼントを配るのは、難しい。だから、サンタクロースには、助手が居る」
長次はそこで一旦言葉を区切ると、食ってかかるような仙蔵の頭をくしゃりと一度撫でてやってから、
「伯父さんは、そのサンタの助手をしているんだ」
と、種明かしをするように告げた。
「洋一伯父さんが、サンタのお手伝いさん?」
「ああ、そうだ。サンタクロースから、お前達へのプレゼントを預かって、渡しに来てくれたんだ」
半信半疑ではあるが、父さんがウソついたこと無いし。と納得しかけた留三郎に対し、仙蔵は「私は
信じない!」と頑なだったが、近所に住む新野洋一伯父本人の元にも確認に行くと、
「ええ、そうですよ。君達のお父さんの言う通り、私はサンタさんの代わりに、プレゼントを配って
いるんです。でも、このことは本当は誰にも内緒ですから、伊作ちゃんにも小平太くんにも、他の
お友達にも話してはダメですよ」
ニッコリ笑ってそう言われた所で、ようやく信じたようだった。
そのことに関して、後になってから
「何で、父さんの話は信じなかったのに、伯父さんの言うことはあっさり信じたんだ?」
と留三郎が訊ねると、仙蔵はバツの悪そうな顔で
「口裏を合わせた……という表現は当時は知らなかったが、打ち合わせたり相談していた様子は
無いのに、2人共同じことを言うのなら、そうなのだろう。と、あの時は思ったのだ」
今になって考えれば、近所とはいえ私達が移動している間に、電話で打ち合わせたのだろうと
解るがな。との答えが返ってきたが、世の保護者達がサンタの代理だというのは、ある意味
本当のことだし、子供の夢を壊さない返答としては正解だろう。と、仙蔵も留三郎もサンタに
プレゼントをもらうような年ではなくなった頃から思っているが、甥っ子達はそれで納得しない
というか、よく解らないだろうな、多分。
ということで、結局その後2度にわたるサンタ捕獲騒動にせざるを得なかったという。
2012年クリスマスアンケート 同数2位(5票)1つめ
「中在家兄妹(過去)」でしたが、伊作&小平太の出番が少なめというかほぼ皆無で、
過去どころか過去回想と言うにも微妙な感じに……
2012.12.24
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