※中の子繋がりで、「ベリ銀のナオくんの成長後が海賊戦隊の船長だったら」というif話です 捏造・キャラ崩壊等激しいのでご注意ください マベちゃんがわりとろくでなしです
仲間達の追求に折れたというか、これ以上好き勝手な推測を繰り広げられるのは面倒だと思ったらしく、渋々 マーベラスが過去の話をしようとした瞬間。傍らの娘−リリィ−の腹が、可愛らしい音を立てて鳴った。 「……お腹空いたの?」 「そういえば、そろそろ食事時よねぇ」 「そうですわね。ハカセさん、鎧さん。急いでお食事の支度をして、それからゆっくりマーベラスさんのお話を  聞きましょう」 「そうだな。何か食べたいものはあるか?」 「リリィちゃんの好きなもの作るから、遠慮なく言ってくれていいっすよ」 「そだよー。ハカセと鎧なら、何でも作ってくれるよー」 肩透かしを食らったマーベラスを尻目に、他の5人+ナビィがリリィに声を掛けるとリリィは 「えっと、カレー! カレーが食べてみたいですの」 と即答した。 その答えを聞き、再度満場一致で (ホント、間違い無くマーベラスの娘だな。それにしても、このカレーへの憧れと執着はどこから来ているんだろう) と、納得しつつも首を傾げたが、後で聞いた所によれば、アナザースペースのM78星雲光の国の皆々様から、地球の カレーについて、思いっ切り刷り込まれた(正確には、メビウスを筆頭とする面々から刷り込まれたゼロやレイに 布教されたが、面倒なので詳細は省いたらしい)とのことだった。 そんな訳で、小さな可愛いゲストの希望で、船長の好物ぽくて、他の面々にも異論があるわけも無かったので、夕食は カレーとなったのだが、 「何だよコレ。カレーじゃねぇだろ」 「カレーですよマーベラスさん。ただ、初めて食べる上にまだ小さいリリィちゃん向けに、甘口で作っただけです」 「どうせマーベラスは何杯もお代わりするだろうから、いつもの辛口も作ってあるけどね」 リンゴとハチミツその他諸々を投入し、マイルドな口当たりに仕上がった甘口カレーは、普段は中辛〜大辛に当たる カレーしか食べたことのない、船長含む地球外出身者には若干戸惑われたが、 「わたくしは、この味も美味しいと思います」 「あたしもキライじゃないわね」 「俺も悪くないと思うぞ」 と割と好評で、ケチを付けたかと思われたマーベラスも 「俺だって、マズイとは言ってねぇよ!」 とのことで、普段のカレーの日と同じ勢いで食べられた結果。 「甘口は残ると思ったから、明日のお昼にカレーうどんにしようと思ってたのに……」 とのハカセの目論見も虚しく、甘口と辛口それぞれ大鍋一杯は、見事に食い尽くされてしまった。 (ちなみに、 「余ったらカレーうどんにする予定が、全然残んなかったですねぇ、ドンさん」 「何!? カレーうどん? 食いてぇ、作れ!」 の流れで、カレー作り直しで翌日の昼食はカレーうどんになった。) 食後。しばらく食休みをしてから、女子2人と風呂に入り、 「あたしの部屋よりは、アイムの部屋の方が良いかしらね」 「え。ルカ、また部屋散らかしてるの? もう。3日前に掃除したばっかりなのに」 「違うわよ! あたしの部屋より、アイムの部屋の方が物が少ないだけ!」 ということで、アイムの部屋で寝かしつけることにして、寝る前の読み聞かせは、 「絵本はもちろんありませんし、わたくしの持っている中に、読み聞かせてリリィさんが楽しめる本は、あまりないですわね」 「僕も、ほとんど専門書だしなぁ」 「……ケーキの本ならあるが?」 「眺めて楽しいだけで良いなら、あたしの宝石図鑑もアリなんじゃない?」 などと代替案を考えていると、ここぞとばかりに鎧が 「僭越ながら、この俺、猪狩鎧監修『スーパー戦隊大百科』が、最も相応しいかと!」 と手を挙げたが、「4歳の男の子ならともかく、リリィは女の子だよ。興味ないって」とか、「仮に興味を持ったと しても、寝かしつける為に読むのに、興奮させてどうするのよ」とか、「読んでいる最中か、読み終わったら寝て くださるのが理想ですから、向きませんわね」とか、「お前以外が読み聞かせてもつまらんだろうが、どこで読み 聞かせるつもりだ?」とか、マーベラス以外からは却下された。しかし、当のリリィが何やら目を輝かせて興味を 持ったので、 「鎧。スーパー戦隊大百科貸せ。コイツは一応字は読めるからな。適当に眺めさせて、俺んとこで寝かす。それで良いな?」 「あ、はい! 俺は全然構いません」 「あたし達だって、マーベラスとリリィがそれで良いなら、反対はしないわよ。ねぇアイム?」 「ええ。ただ、マーベラスさんのお部屋に、リリィさんを寝かしつけるスペースがあるのか、少し疑問です」 「そしたら、今からでも片付ける?」 「大丈夫だろ。最悪マーベラスは、そこのソファででも寝れば良いんだ」 ということで、意外とそれなりにお父さんしているマーベラスが、リリィを寝かしつけて共有スペースに戻ってくると、 「さてじゃあ、心置きなく話せ」 と仲間達に取り囲まれ、過去語りをさせられることになった。 ★ 「俺は、元々はアヌーっていう惑星の、開拓キャラバンの技術屋の息子で、親は早くに死んで、少し年の離れた兄貴と  ばあちゃんの3人暮らしだった」 そう話し始めたところで、 「……ごめん。話の腰を折るけど、技術屋の子ってことは、もしかしてマーベラス、本当はガレオンの修理とか武器を  直したりも出来るの!? 」 だとしたら、何であの時僕に修理を依頼しに来たの? と、ある意味自分の存在意義がかかっているので尋ねたハカセに、 「まぁ、ある程度は出来るし、壊れたレギオノイドなんかをバラしてジャンク屋に売ってたりもしたが、ガレオンみてぇに  デケェのはいじったことねぇし、俺がやろうとしたら、ジョーもルカもぜってぇ止めると思ったんだ」 「確かに、今の今までマーベラスにそんなことが出来るって知らなかったから、『俺が直す』とか言われたら、止めてたかも」 「そうだな。全力で止めていたな」 「わたくしでも、おそらく反対しましたね」 「俺もそう思うっす」 「うん。確かにそうだね。愚問だった、ゴメン」 自分に対する認識をキチンと把握したマーベラスの答えに、全員大いに納得したので、先を進めろ。と促すと、 ベリアル軍に襲われるまでと、ベリアル軍との戦いの話をし、その時にエメラナと出会ったことを明かした。 「そん時の仲間に、炎の海賊の用心棒をしていたグレンが居たし、炎の海賊のおっちゃんらも援軍として手ェ貸して  くれたんだ。そんで、全部終わった後に、おっちゃんらから色んな話を聞く機会があって、ほとんどがしょーもねぇ  与太話だったが、それを聞いてる内に、『海賊になりてぇ』って思って兄貴に話したら、猛反対されて、何度目かの  喧嘩の後に飛び出して密航した船で、ギャバンのおっさんと出会ったんだ」 幼いマーベラスことナオの心を惹きつけたアバンギャルド号の炎の海賊達のよもやま話の中に、「盗賊とお姫様」系の おとぎ話や、「俺の嫁も、元はスゲえ良い所のお嬢で、身分違いだって反対されたのを一緒に逃げて、船長らに拾われて、 今に至るってわけよ」なんて体験談があったが、エメラナのその手の空気の読めなさとフラグクラッシャーぶりは、 その当時で既によく解っていたので、ギャバンに助けられ一度はアヌーに帰ったが、それでも夢が捨てきれずに数年後に 再度出奔した時にすら、「夢を捨てられないから、俺は海賊になる」と宣言はしに行ったものの、想いを伝えることは しなかった。それなのに、結局今リリィが存在しているのは、 「アカレッドに拾われてしばらく経った頃に、新聞を読んでたバスコの野郎が、エスメラルダの王女が結婚した。  っつう記事を見つけた。って言ってきて……」 夕食の仕込みを終え手が空いたらしく、ソファに寝そべりながら新聞を読んでいたバスコが、 「ねぇねぇ、マベちゃん知ってたぁ?」 「何をだよ」 「エスメラルダのお姫様、結婚決まったんだって」 と話し掛けて来た時。どこまで何を知ってんだ、コイツ。と思いつつ、 「悪りぃ。ちょっと出掛ける!」 とだけ言い残し、掃除中に見つけこっそり整備してあった脱出艇で飛び出し、真偽の程を確かめにエスメラルダに 向かったのは、まだ青臭ぇガキだったからだ。とマーベラスは結論付けているが、ジャンボット達の目を盗んで 忍び込み、久方ぶりに顔を合わせたエメラナは、実に通常通りの天然ぷりだったという。 ★ 「エメラナ!」 「あら、お久し振りですね、ナオ。そんなに慌てて、どうかしましたか?」 海賊を目指して出奔し、アカレッドに拾われる前にエメラナに会いに行った際。「ナオ」と呼ばれ、「今はもうその 名前は使ってねぇよ」と返したが、 「では、キャプテンマーベラス」 「それはそれで、何か他人行儀で嫌だから、やっぱナオで良い」 「ふふ。分かりました。それでは改めて、お久しぶりですね、ナオ」 というやり取りを経て、結局ナオ呼びに落ち着いたので、呼び名に関しては別に構わなかったが、 「結婚、決まったって……」 「ええ。そうなんです」 「どこの、どんな奴なんだ」 20歳を過ぎても、どこか独特のおっとりとした空気をまとうエメラナは、血相を変えて押し掛けて来たマーベラスに 対しても、普段通りの調子でニコニコと笑っていた。 「昔から交流のある星の第3王子で、穏やかで優しい、とても素敵な方ですよ」 「……そうか。良かったな」 「そうですね。お姉様とは本当に、とてもお似合いで、羨ましい限りです」 「え。姉貴!?」 「はい。ご結婚が決まったのはお姉様ですよ」 割と長い間引きずっていた初恋の終わりを確信し、未練を断ち切るように祝福の言葉を口にしたマーベラスの内心に、 エメラナはこれっぽっちも気付かず、続けられた言葉に目を丸くしたマーベラスが何に驚いたのかも、さっぱり検討が つかない様子でキョトンとしていた。 「そうか。姉貴の方か」 「ええ。ご結婚が決まったのはお姉様です。ところで、ナオは何故、そんなに慌てていらっしゃったんですか?」 「……エメラナが、結婚するのかと思ったんだ」 ここまで来たなら、言っちまえ。と腹を括ったマーベラスが、 「俺は、ガキの頃からエメラナのことが好きで、他の奴に盗られたくねぇから、エメラナが結婚するかもしれねぇ。  って聞いて焦ったんだ」 そう告げると、エメラナは軽く目を見開いてから、ニコリと笑って「ありがとうございます」と答えた。 「それは、どういう意味の礼だ? 俺のことなんか眼中にねぇけど、告られたんで礼は言っとく。ってだけか? それとも……」 「ナオは、私にとって弟のようなものですが、そんな風に想ってもらえていて、嬉しい。という意味の、『ありがとう』です」 とのエメラナの答えに、「ひとまず、望みは捨てなくても良い訳か」と解釈したマーベラスが、 「今はまだ無理だが、いつか攫いに来る。だから、待ってろ」 と、半ば虚勢で宣言すると、エメラナはニコリと微笑み「はい。待っていますね」と返して来た。 そんな訳で、遠くない未来の約束を取り付け、ガレオンに戻ったマーベラスが 「バスコ! お前騙しやがったな」 と文句を言うと、 「何が? 俺は『エスメラルダのお姫様』としか言ってないのに、勝手に第二王女の方だって勘違いしたのは、  マベちゃんでしょ」 という、やっぱりコイツどこまで何を知ってんだ。と言いたくなるような答えが返ってきたが、問い詰めて逆に 詮索されるのも面倒なので、触れないことにしておいた。 その後、バスコの裏切りがあり、アカレッドを喪い、ナビィと2人きりになった後。一度だけエメラナに会いに行ったが、 その時点ではまだ、連れ去る資格は無いと思い、「また来る」とだけ約束してエスメラルダを離れた。 そして、それから1年程経った頃、まだ1人でレンジャーキーを探しに立ち寄った星で、「エスメラルダの王女に子供が 生まれた」との噂を耳にしたが、どうせまた姉姫の方の話だろ。と思いつつ、念の為確かめに、久方ぶりにエスメラルダを 訪れ、何やら以前よりも厳しくなった警備の目を盗み忍び込むと、何故かエメラナが生後半年に満たない女の赤ん坊を 抱いていた。 ★ 「よぉ、エメラナ」 「お久しぶりです、ナオ」 最早エメラナ以外に呼ぶ者の居ない本名と、いつ来ても変わらぬエメラナの笑顔に、密かに癒されながら、マーベラスが 「その赤ん坊は、姉貴の子か?」 と単刀直入に本題を尋ねると、 「いえ。私の子ですよ」 との、予想外の答えが返って来た。 「え。ち、父親は?」 「もちろんナオですよ。本当は連絡をしたかったのですが、どちらにいらっしゃるのかわからなかったもので」 確かに、身に覚えはあるし、通りで警備が厳しくなっていた訳だ。と、納得してから、マーベラスはあることに気が付き、 血の気が引いた。 「……ジャンや、ナイトは、そのガキが俺の子だってことは」 「もちろん知っています。流石に、お父様お母様やジャン達に黙ったままでは、産むことが適いませんでしたから」 むしろ、他の皆には隠し通すためにも、身内の協力は必須だった。との説明は納得が出来るし、そこまでして自分の 娘―リリィ―を産んでくれたことは、心の底から嬉しかった。しかし、 「怒ってる、よな。ジャン」 「そうですね。グレンに、『お前の所為で』と詰め寄り、相変わらずの大ゲンカになっていました」 姫様第一で、幼い頃の素直なナオを可愛がってくれていたジャンボットは、ナオが海賊になったことすら赦しがたい らしく、かつては星賓扱いすらされていたのに、今では忍び込むようになったのも、ジャンと顔を合わせるとマズいから。 という理由もあり、手を出したどころか孕ませたとなったら、ぶち殺されても何ら文句が言えないのでは無いか。とすら 思ったマーベラスは、最低だと解りつつも、 「……そいつが、もう少しデカくなって、俺の方ももう少し名を上げたら、必ず迎えに来る。だから、あと少しだけ  待っててくれ」 との約束だけ残し、ジャンと顔を合わせないように、逃げるようにしてエスメラルダを後にしたのだという。 リリィを連れてきた初日の夜に聞けた話は、そこまでだった。

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