今回の事の発端とも言える三木ヱ門は、色々な意味で複雑だった。
	まず、彼の出向先である火薬委員会は、常日頃とても世話になっていて、ここでの体験は間違いなく有意義な
	ものになるだろうと解ってはいるが、愛しの火器達と長時間離れていなければならないのは辛かった。そして、
	普段の仕事内容をよく知らないことと、一応タカ丸に訊いた際の
	「おれでも何とかなってるから、平気だよ〜」
	という言葉が逆に不安材料にもなっていた。
	けれど実際に体験して始めてみると、確かに6年生の委員長は居ないが委員長代理の5年い組の久々知兵助は
	真面目でマトモで説明も解りやすいし、1年は組の二郭伊助は実によく気の利く働き者だし、自分と同じく
	出向の2年い組の能勢久作も、大まかな作業内容は同じ組の池田三郎次からあらかじめ聞いてきている。という
	真面目な生徒であり、
	「タカ丸でも大丈夫」
	というのが、
	「周りがその失敗を補える、もしくは事前に注意出来るから」
	なのだと気が付いた。
	更に「何をしているのかわからない」と言われる影の薄さが、その真っ当かつ堅実な仕事ぶりから、妙な
	騒ぎを起こさない所為なのだろうと解釈して、感心すると同時に少し哀しくなった。

	おまけに作業や時間に余裕がある時には、顧問の土井半助先生が、火薬にまつわる様々な話を教えてくれ、
	その話は、流石アノ1年は組の担任をしているだけあって、説明は巧くて解りやすく、しかも興味を引く
	ような面白い要素まで入っていた。そのことで、まず土井先生を少し見直し、何かつけてはその土井先生を
	けなす会計委員会の顧問である安藤夏之丞先生の、嫌味と寒い駄洒落と、自分が担任をしている1年い組の
	自慢ばかりの話まで思い出して、より一層哀しくなってきたという。
	そして最終日。三木ヱ門は、半ば本気で
	「会計委員会に帰りたくないかもしれない」
	「来年は火薬委員会も悪くないかもかな」
	などと思ったとか……。

	尚、一応久作の方の感想も付け加えておくと、
	「きり丸の『伊助はオカンだ』って証言と、雷蔵先輩が『兵助の解説は解りやすいし、多分すごく和むよ、
	 あそこ』と言っていた理由が、とてもよく解った気がします」
	とのことらしい。


火薬:田村三木ヱ門・能勢久作


生物委員会の委員長代理をしている5年ろ組の竹谷八左ヱ門は、今回の委員会入れ替えで生物委員に 割り振られた生徒を知った時。 「2年生か」 と、ちょっとがっかりした。何しろ1年生ばかり4人もいて、普段も自分以外の上級生は3年い組の 伊賀崎孫兵しか居ないのだから、今回の企画で4年生ないしちょっとマトモな3年生が来ることを、 こっそり期待していたのだ。 とはいえ 「タカ丸さんとか、方向音痴の3年でないだけマシだろ。それに、うちの三郎次はよく出来た子だぞ」 などと兵助から言われたのには、納得出来なくもなかった。しかしその言い方に (親馬鹿かお前は) とこっそり思ったのも、また事実だったりする。 そして兵助の言葉通り、2年い組の池田三郎次は真面目なしっかり者で 「僕が来ている間は、虫を逃がさないように、久々知先輩にも言われていますから」 という言い草には若干ムカついたが、言葉通り7日間虫を逃がすことなく、きっちり1年生達の世話も 焼く姿も頼りになるものだったという。 生物:池田三郎次


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