今回の入れ替えで自分の委員会に割り振られた生徒が、滝夜叉丸だと知った瞬間。図書委員の1年は組の
	摂津のきり丸は、大いに嫌そうな顔をして先輩たちにグチった。何しろきり丸の知る滝夜叉丸は、ウザい
	自慢しいで、「図書室では静かに」が原則とはいえ、作業中も何かにつけて彼の自慢話を聞かされるのは
	御免こうむりたいと思っていた。

	けれど、まず本人が来る前に5年ろ組の不破雷蔵からは
	「目上の相手には結構礼儀正しいし、隠してるみたいだけど勉強家で頑張ってるよ」
	委員長の6年ろ組の中在家長次にも
	「……アレで、面倒見がいいと、小平太から聞いた」
	などと聞かされ、半信半疑でいた。しかし確かに実際に一緒に仕事をしてみると、図書室内の配置を
	よく覚えているし、重い本や高い所の本は代りに戻してくれたり、暇を見つけては先輩達にお薦めの
	本を尋ねていたりと、実に「良い先輩」といった感じに思えた。
	しかも、そんな滝夜叉丸に1年ろ組の二ノ坪怪士丸が素直に礼を言ったり感心すると

	「眠っている子供よりは軽いから、気にするな」
	「優秀な先輩方に教えを請うことは、己を高めるのに有効だからな」

	などと、若干普段の彼らしさもにじみ出ているが、真っ当そうな答えが返ってきた。
	その中できり丸が気になったのは、

	「何で、本の束と寝てるガキを比べるんだ?」
	「…金吾や、四郎兵衛のことだろう」
	「あ」

	普段は、いけドンな体育委員長に振り回され、疲れ切った後輩をおぶったり抱きかかえて帰ってくる姿なども、
	長次はよく見かけるという。そしてその言葉を裏付けるように、入れ替え数日目に

	「中在家先輩は、うちの委員長と、同じ組のご友人でいらっしゃるのだよな。……いいよな、マトモで。
	 不破先輩もお優しくて、和むし」

	と、溜め息交じりに呟いているのが聞こえたという。



図書:平滝夜叉丸



学級委員長委員会に割り当てられた作兵衛は、普段の様子から「どうせ碌に仕事もないんだろう」と高を くくっていたが、指示された部屋に行くなり5年ろ組の鉢屋三郎に紙束を渡され、その部屋にいた1年生 達も、何やら紙束を手に作業をしていた。 「あの、鉢屋先輩。コレは?」 「郵便物の仕分けだ。本来は小松田さんの仕事なんだが、あの人がやるとめちゃくちゃになるので、私達に  任されている。で、庄左ヱ門がやっているのが、各組への配布物の仕分けで、彦四郎の分は集計だよな。  ちなみに私はこれから、今後の行事計画の確認をする予定だ。終わったら、今回のこの入れ替えに対する  感想用紙の作成を全員でやるぞ」 曰く、雑用と学園長のお使いが主な仕事で、そこに時折へっぽこ事務員小松田秀作の後始末や代わりも やらされたりするが、とりあえずその雑用仕事は意外と多いのだという。 「まぁ、富松先輩がいらっしゃる分、やらせようと若干仕事を溜め込んだのは事実なので、普段はこんなに  重なってはいないんですが」 「それと、学園長と鉢屋先輩が結託している印象も、間違いではありません」 作業中、こっそり1年生達がそんなことを教えてはくれたが、それでも作兵衛は若干学級委員長を見直した こともなくはないという。 学級委員長:富松作兵衛


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