SIDE S(3)
4年前から繰り返し見ている夢の、登場人物が増えた。
というか、前から周りに大勢の人が居たような気はするが、目が覚めると詳細も肝心の「運命の人」の
名前も顔も憶えていなかったので、いわゆるモブだと認識していた。けれど、最近ではどうも他の
モブよりは近しい関係らしい登場人物が、あと3人程居るような気がするんだ。
そう話したら、ハチ公は苦虫を噛み潰したような顔をしやがり、勘も何か遠い目で天を仰ぎ、ナルは
また泣きそうな顔をして、歩には「で? だから何」と返された。
そんなある日。ナルの買い物に付き合って、近所のショッピングモールをぶらついていると、小学校の
頃の後輩3人組に、久々に会った。
4年下のそいつらを、俺もナルもハチも歩も、何故か妙に可愛がっていて、
「あー、不破先輩、蜂屋先輩、お久しぶりです〜。先輩達もお買い物ですかぁ?」
と声を掛けられた時。ナルは
「そうだよ。新しい服を買いに来たんだけど、僕1人だと迷って決められそうにないから、三郎に
付き合ってもらってるんだ」
と、ニコニコ笑いながら答えていた。
「そっすか。俺らは、図書室便りと保健室便りの、画材の買い出しです」
「それで、新平も、ここに新しく出来たアイス屋さんに行きたい。っていうんで、一緒に来たんです」
通称「らんきりしん」とセット扱いされることの多いこの3人の、紅一点の桐生刹那(きりゅう せつな)は、
図書室の常連で図書委員だったナルとは元々顔見知りで、普段は割と落ち着いていて大人びた美少女だが、
何故か時々男子のような妙に雑な話し方をする。しかし、周囲の同級生達もナルやハチ達なんかも、
それを特に気にした様子はなく、むしろナルなど、つられるように一人称が「僕」になっていることすら
多々ある。
「そうなんだ。アイス屋さんかぁ、良いね。僕らも後で寄ろうか三郎」
「フレーバーも、トッピングも、いーっぱい種類があるんですよぉ、そのお店」
「とすると、なるみには向いていないから、気になった他の味を頼ませる要員として、ハチや勘も連れて
来た日の方が良いんじゃないか?」
楽しそうなナルと3人組に、からかうように提案すると、
「ああ、そっか。迷いグセ」
「でも、メニュー表をもらって、じっくり選べば良いんじゃないですか? それで、他にも気になった
味は次回来た時にするとか」
「僕もぉ、乱太郎達とかと分けっこして、全種類制覇する予定なんですー」
3人でダブルを頼めば、6種類食べられるもんねー。と笑う、食いしん坊の福富新平に、冷たいものの
食べ過ぎは良くないから、新平だけダブルで自分達2人はシングルか、せめてスモールサイズで。と
言い聞かせる猪名寺乱太郎は、流石は保健委員だな。それにしても、前々から思っていたが、何で
こいつらこんなになるみ達のこと良く知ってんだろうな。などと思いながら、
「乱太郎の言う通り、冷たいものの摂り過ぎは良くないぞ」
と言いつつ、新平のほっぺたをむにむに触って伸ばし始めたら、「やめてくらさい〜」とか抵抗する
新平自身よりも、傍で見ているナルの方が辛そうな顔をしているのが気になり、すぐにほっぺたを
伸ばすのをやめた。
けれどその後も、中々ナルの機嫌は直らず、らんきりしんと一緒にアイスを食べに行くどころか、
結局ほとんど服も見ないで帰ることになったが、その間もナルは、痛みをこらえるような顔をしたまま、
ろくに会話にも応じ無かった。
最近、ナルはこういう急変が多いが、理由は聞いても教えてくれない。ハチや勘に言わせると、全部
俺が悪いらしいが、俺は何もしていない筈だ。そう返したら
「それでも、悪いのはぜーんぶ蜂屋」
「お前の言動が引き金になってんだよ」
とまで言われたが、だから俺は何もしてないのに、何を反省しろっていうんだ!
えーと。3年半ぶりですか? に、思い立って続き書き始めたので、当初の筋は忘れました。
戻 一覧 次