食後。我夢はさっき言っていた通り、「何か進捗や変更あったら教えてね」と言い置いて仕事に戻り、残った2人と
俺らは、ひとまずもうしばらくゆっくりすることにしたが、ダイゴがふと思い出したように、ミライに声を掛けた。
「ああ、そうだ。ミライくん。連絡帳に書き忘れたから、今日のお迎えの時に言うつもりらしいけど、明日のツバサの
迎え、アキコさんに用が出来たからハヤタさんが行く。って、念のためミライくんからも銀河先生に伝えてもらえるかな」
「解りました! おばあちゃんじゃなくて、おじいちゃんがお迎えですね。父さんに伝えておきます」
ツバサってのは2歳前のダイゴの下の子─上のヒカリは、今年小学校に上がったばかりらしい─で、両親共働いている
ので保育園に預けられていて、迎えが祖父母なことは珍しくないことや、その保育園の園長が、ミライの親父なんだと
説明されたが、
「ん? 『銀河』先生? 何か、どっかで聞いたことあるような無いような……」
『私の持つデータによれば、ナイスの人間態の名が「夢星銀河」で、「未来」という息子が居ることは確かな筈だ』
何だそのこじつけ臭い設定。あー、いや、けど、アレが親父で息子がコイツってのは、何か解んねぇでもないか。
「ちなみに、夢星家は女系でお祖父さんもお父さんも婿養子らしいから、ハヤタさんと語お祖父さんが兄弟でも……って
考えもこの話の書き手にはあるみたいでね」
「てことは、銀河先生とレナが従兄妹になんのか?」
「銀河先生というか、奥さんのアキミさんとかな。でも、それをやるとキクお祖母さんとアキコさんや、マックスの
所ともリンクさせなきゃならないから。って悩んでるらしいよ」
ああそうかよ。多分そこまでは出てこねぇだろうから、割とどうでも良い悩みだな。
『ところで、先程から気になっていたのだが、ダイゴにとってハヤタは、舅に当たるのだよな。それなのに、何故
「ハヤタさん」なのだ?』
「ああ。特に深い意味は無いし、『お義父さん』なこともあるけど、強いて言うなら、慣れかな」
「あと、ハヤタさんとこは、何故かアキコさんも『ハヤタさん』呼びだもんな」
「君のところも、いつまで経っても『アスカ』のままだけどね」
そういやダイナの「アスカ」も苗字か。
そんな雑談をしている最中に、「宅配便です」という─何か聞いたことがなくもない─声が聞こえてきたので、
ふとそちらを見ると……
「レイ!?」
「はい。どちら様ですか?」
汗だっくだくで、何かやけに陽気そうで人懐こそうというかミライと同属性っぽく見えるが、間違いなくレイだった。
「いつもご苦労様、レイくん。お昼まだなら、食べてく?」
「そうですね。今日は何カレーですか?」
「その前に、汗拭けよレイ。また水溜まり出来かけてるぜ(笑)」
マスターやアスカと和気あいあいと─しかも敬語で─話しているレイは、すごい違和感があるけど、でも何かどっかで
見たことなくもない気がすんだよなぁ……。と、俺やグレン達が微妙な顔をしていると、
「あそこまでギャップがあるのは、多分彼だけだと思うよ」
とダイゴがポツリと呟いた。
「ちなみに、彼はこの辺り一帯で一番大きい『ZAP』っていう運送会社の配達員で、このお店の担当で常連客でも
あるらしいよ」
そう説明してから、ダイゴはふと思い付いたように、レイに声を掛けた。
「唐突だけど、君のところで、今アルバイトとか募集していないかな?」
「アルバイト、ですか? ボスか副長に訊いてみないとわからないですけど……」
いきなりの質問に、レイだけでなく俺らも意図が解らず首を傾げたが、
「車の運転は無理でも、助手席に同乗させてもらったり、キャリーなんかで配達して回っていたら、何か見つかるかも。
って思ってね」
と説明され、俺らがえらく納得したのはともかく、アスカまで
「あー、そっか。頭良いなダイゴ」
「……お前が馬鹿なだけだと思うけど」
とか言われてたのは、何だかな。
とまぁそんな感じで、レイんとこでバイト出来るかはとりあえず保留にして、ひとまずダイゴのとったホテルに
移動して、今後の簡単な打ち合わせをすることになった。
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