1学期も夏休みも終わって、新学期に入って早1か月。未だに僕達は、母さんと一緒に洋じいの家に居る。

	夏休み中は、父さんの所に残った3人がこっちに泊まりに来たり、みんなで遊びに出かけたりもしたし、僕ら
	だけ少し家に帰ったりもした。だけど、母さんは父さんの誕生日プレゼントを昼間にこっそり置きに行った
	以外は、前よりも意地を張って帰ろうとしなくなった気がするのは、多分僕の気の所為では無いと思う。

	しかも最近は、物凄くグチ―なのか惚気なのかよく解らないと、数兄は言っている―が増えた。原因は、
	もうじき僕の誕生日だからじゃないか。と教えてくれたのは、確か留おじさんだったと思う。


						×××


	「多分文次は、さっちゃんのお誕生日だけは覚えてるんじゃないかなぁ。だって、待望の娘だし、
	 家買って忙しくなったのは、さっちゃん生まれて以降だもん」

	そんな母さんのボヤキは、もう耳にタコができそうなくらい聞いた。さも兄の誕生日は、三之助兄や
	団達やこへおじさん―ついでに父さん自身のとも―と近いから、毎年一緒くたにされているので僕も
	ちゃんとは覚えてないけど、流石に初めての子の数兄の誕生日も覚えてるんじゃないかと思ったら、
	「それを忘れた辺りにもキレてるみたいだから」
	と数兄から耳打ちされた。ああ。それで、アノ誕生日プレゼントによる罰ゲームを父さんがちゃんと実行
	したらしい―三木おじさんから、隠し撮りの写メ付きで報告が来た―のに、何だか不満そうだったのか。


	「きっとさぁ、当日には何気ないふりして電話掛けてきたりするだろうし、おねだりすればある程度なら
	 何でも買ってくれると思うよ。……いいなぁ、さっちゃん」

	そんなこと言われても、正直ちょっとウザいんですけど、母さん。とか内心こっそり思っていたら、
	洋じいにポンと肩を叩かれて、

	「我慢してあげなさい。あの子(伊作)も、色々不安で寂しいんですよ」

	なんて諭された。……いや、別に、一応解ってますし、我慢もしますよ。でも何かおかしくないですか?
	とは言えなかったけど、アレは母さんなりの甘えなんだと、みんな解っているから生暖かく見守って放置
	しているんだろうな。母さんは、普段から結構好きに生きているようで、根っこの所で我慢しすぎる傾向が
	あるって、留おじさんや仙蔵さんも言ってたし。


	ああ。でも、僕の誕生日はまだしも、冬になって乱達の誕生日が近付いてもこのままで、母さんが乱達に
	グチり出したりしないと良いんだけどなぁ。





自分自身の誕生日が近いので、何となく久々に挙げてみました。 7人中たった1人の女の子な左近ちゃんを、お父さんはそれなりに可愛がっている(つもり)なのでは ないかと思いますが、娘はそんなことに気付いてはいないことでしょう。 ちなみに、下の双児(乱&伏)の誕生日の時点でもまだ家出中…… 2009.9.22


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