師走―針供養	火薬委員会


	ある日、委員会に行くと煙硝蔵の前に大量の針が積まれていた…。

	これは、火薬委員会に対する嫌がらせか?
	確かに普段、何をしているのかわからない、そんなんでいいんかいとか言われているが、ちゃんと働いてるぞ!
	立花先輩の火器や田村のさちこ三世なんかは俺達がちゃんと仕事してるから使えるんだぞ!
	そう思うと、俺達って実はこんなに蔑ろにされる筋合いはないんじゃないか?
	ただなぁ、あまりにも地味過ぎて誰にも気付かれないんだよなぁ…。

	「久々知先輩」

	 俺が勝手に一人で落ち込んでいると、後ろから声を掛けられた。

	「あぁ、三郎次。これはどういう……、その箱いっぱいの針の山は何だ、伊助?」
	「これですか? これは、タカ丸さんが針供養しようって言い出して、学園中の針を集めて来たんです」
	「針供養!?」
	「あっ、兵助くん!」

	 一人状況が掴めず混乱していると、事の元凶がさらに針の山を抱えて現れた。

	「斉藤! コレはどういうことだ!?」
	「あぁ。それはねぇ、みんなで針供養しようと思ったんだぁ」
	「だから、何でそんなことになったのかを訊いてるんだ!?」
	「いやぁ、そろそろ針供養の時期だなって話になって、針供養と言ったら豆腐でしょ? 豆腐と言えば兵助くんだなって
	思って、じゃあ、火薬委員会のみんなで針供養して兵助くんに思う存分、針を豆腐に刺してもらおうと思って!」
	「……何で…」
	「?」
	「何でみんな、豆腐に刺したがるのさ!」
	「えっ?」

	 突然、壊れ出した先輩に困惑し出した後輩。

	「そんなに針をブスブス刺したら豆腐が可哀そうじゃないか!?」
	「はぁ!?」
	「俺は、お前達をこんな風に育てたつもりはない!」
	「俺も、久々知先輩に育てられた覚えはないんですけど…」
	「そんな非人道的なこと俺には出来ない…」
	「兵助くんどうしたの?」
	「わかった…。もし、お前達がそんなに豆腐に針を刺したいと言うなら俺に刺せ」
	「…意味解んない」
	「豆腐に刺すくらいな俺に刺せっ!!」

	「タカ丸さん、どうしますあの人?」
	「う〜ん、そうだなぁ」
	「さぁ! 気が済むまで俺に針を刺せばいいさっ!」
	「……じゃあ、遠慮なくっ☆」

	 その後、ハリネズミのようになった火薬委員長代理の姿が保健室で目撃されたとか。





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