水無月―梅雨	用具委員会


	 六月七日

	今日は用具委員会で雨漏りの修理をした。

	「それじゃあ、俺と作兵衛で雨漏りの修理をして来るから、一年は用具の片付けをしているように」
	「食満先輩、僕たちも修理のお手伝いしたいです!」
	「ダメだ! お前達は用具の片付けが…」
	「まぁ、手伝いくらいならこいつらにも出来るだろ」
	「やったー!」
	「でも食満先輩、用具の片付けはどうなるんですか!?」
	「皆でやれば何とかなるだろ。それじゃあ、作業開始!」
	「ハーイ!」

	その後、食満先輩は何だかんだと騒ぐ一年の面倒を必要以上に見て、結局、雨漏りの修理は明日全員ですることになった…。


	六月十七日

	梅雨の時期は用具が傷みやすくなるので、今日の委員会は用具の手入れが行われたのだが…。

	「食満先輩、お腹空きました」
	「もうちょっとで終わるから、頑張ろうなしんべヱ」
	「はぁ〜い…」
	「そうだ! コレが終わったら、食堂のおばちゃんにうどんを作ってもらって、みんなで食べような!」
	「うどん! はいっ、ボク頑張ります!」

	 その後のしんべヱの働きは目覚ましかった。
	 食欲恐るべし…。


	六月二十一日

	用具倉庫に向かって歩いていたら、突然、用具倉庫の方から悲鳴が聞こえてきた。

	「おい、何があったんだ!?」
	「あ、富松先輩!」
	「扉を開けたら平太が悲鳴を上げながら気絶しちゃったんですぅ…」
	「平太、どうした!?」
	「と、富松先輩…、な、中に…」

	 そのには、床だけでなく、壁、棚、はたまた天井まで、用具倉庫中を這い回っている大量のナメクジ達の姿があった。

	「あっ! ナメさんがイッパイ!」
	「この前、手入れしたばっかなのに、このままじゃ、用具がダメになっちまう! 急いでナメクジの駆除をするぞ!」
	「それはダメです! ナメさんを殺すなんて、可哀そうですよぉ」
	「…じゃあ、とりあえず、倉庫中のナメクジをかき集めて、処理はその後に考えるぞ!」
	「はーい!」
	「ナメさん、こんな可愛いのにぃ…」

	 今日は一日、喜三太のために、用具倉庫中を徘徊しているナメクジを集めて終わってしまった。


	六月二十二日

	結局、昨日はナメクジの回収で終わってしまい、その為、今日はナメクジが這い回った用具倉庫の掃除をした。

	「平太、全然仕事が進んでないぞ」
	「すみません。分かってはいるんですけど、一年ろ組の方針で汚いものには近づかないようにしているから…」
	「まぁ、好き好んでナメクジに触る変わり者なんてあんまりいないけどな…」
	「そうですよねぇ」

	 って、そんな変わり者と、なんで友達なのか本人に訊いてもいいか?


	六月二十八日

	 今日、長屋に戻ったら左門がいつも以上に騒いでいた。

	「作! ボクのまんじゅう知らないか!?」
	「お前のまんじゅうなんか俺が知ってるわけ無いだろ。どっかの棚にでも仕舞ったんじゃないか?」
	「そうか、わかった!」

	「……、作っ!」
	「何だよ」
	「二週間前に食堂のおばちゃんに貰ったまんじゅうがカビてる!」
	「この時期にそんなに放っとくんじゃねぇー!」

	 誰か俺と部屋を替わって下さい…。




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